宇都宮大と鹿沼南高でプロジェクト
【栃木】朝鮮お種人参が栃木県立鹿沼南高等学校と国立宇都宮大学で順調に育っている。鹿沼南高等学校で9日、開かれた「下野朝鮮お種人参栽培方法保存協議会」(陳賢徳会長)の第7回全体会議でわかった。
同協議会は後継者不足などで栽培が衰退し、種がなくなりつつあるお種人参の栽培技術を保存、継承しようと、不動産開発賃貸業フェドラ(宇都宮市)を営む陳さんが呼びかけて発足した。
これは鹿沼南高校と宇都宮大大学農学部による高大連携事業。高校生は卒業後も大学推薦入試によって継続的な研究・技術継承が可能だ。
鹿沼南高校は「おたね人参復活プロジェクト」として高校生が授業の中で栽培・研究に取り組んでいる。種は江戸時代から鹿沼市板荷で代々お種人参を栽培している渡辺正さんから提供を受けた。さらにインターネットで信州産も購入し2020年12月から21年3月にかけて試験栽培を開始した。
栽培にあたっては渡辺さん直伝の伝統的な栽培方法に加え、高校の専門科目であるインキュベーター内での培養も採り入れている。渡辺さんの種は160粒のうちから苗として42本残った。苗は昨年12月2日に学校畑に定植された。
一方、宇都宮大学農学部では大学職員が21年3月、渡辺さんの種160粒のなかから80粒を選別し、プランターにまいた。最終的に24本の苗が残り、12月24日に定植した。
鹿沼南高校と宇都宮大学農学部からそれぞれ報告を受けた渡辺さんは、「私より立派。安心して栽培をお願いしたい気持ち」と及第点を与えていた。
朝鮮お種人参は江戸時代、対馬の宋氏から幕府に献上された種60粒を直轄地だった鹿沼地区にまいて栽培したのが始まりとされる。種は発芽率が極めて悪く、3粒だけが栽培に成功し、栽培農家は一気に広がった。しかし、県内では現在、高齢の渡辺さんだけ。危機感を抱いた陳さんは5、6年前からお種人参の栽培方法保存協議会の発足に向けて奔走してきた。
陳さんは栽培技術の継承とともに、全国に散らばる関連資料の収集・保存にも取り組んでいる。来年3月にはこれまでの研究成果を「キックオフシンポジウム」として発表することにしている。
(2022.06.22 民団新聞)