掲載日 : [2019-01-30] 照会数 : 7300
ハンセン病の語り部、金相権さん…宮崎駿監督が悼む
[ プロミンをイメージした絵画と宮崎駿監督 ]
国立ハンセン病資料館(成田稔館長、東京都東村山市)は27日、同館にアニメーション映画監督の宮崎駿さんを招き、同館運営委員・語り部を務めてきた故金相権(佐川修)さんをしのんだ。宮崎監督は金さんが設立に尽力した同資料館の前身である「高松宮ハンセン病資料館」当時から金さんと親交を深めていた。
金さんは国立療養所多磨全生園で入所者自治会の役員を務めるなどハンセン病患者・回復者運動の中心を担っていた。宮崎さんは金さんと出会ったことで作品「もののけ姫」(97年)にハンセン病患者を登場させた。
宮崎監督は「佐川さんが大好き。大切な人でした」と語った。園内の老朽化した木造建築物を残してほしいと多額の寄付もした。帰宅途中、深夜12時過ぎに園内の納骨堂に立ち寄り、手を合わせた思い出も明かした。
講演に先立って中学生を相手に語り部を務める生前の金さんを映像でたどった。金さんは療養所の歴史と生活を振り返りながら「病人ではなく、囚人として収容された」と淡々と語った。特に米国でプロミンという特効薬が開発されて不治の病ではなくなったのにもかかわらず人権無視の「らい予防法」が続いたことに怒りをにじませながら、国の政策が偏見と差別を増産したと批判した。
金さんは全羅南道出身。14歳で発病し、群馬県の栗生楽泉園に入所。身延深敬園(山梨県)を経て多磨全生園に転園してきた。資料館を「啓発の基地」として重視し、「ハンセン病を隠すな」「ハンセン病に無知であってはならない」と訴えながら昨年1月24日に死去した。
今回の催しは資料館の開館25周年記念。抽選で110人を招待したところ、2倍を超す応募があった。抽選にもれた参加者は別室のモニターで見守った。
(2019.01.30 民団新聞)