掲載日 : [2021-10-13] 照会数 : 4415
関係改善のカギは若者に…韓日共同世論調査から
日本の非営利組織「言論NPO」(工藤泰志代表)と韓国の民間シンクタンク、東アジア研究院(孫烈院長)が9月29日、「第9回日韓共同世論調査 日韓世論比較結果」を公表した。それぞれ18歳以上の自国民各1000人を対象にした。期間は8月から9月にかけて。同調査は2013年から毎年実施し、経年変化を比較分析して発表している。
◆相手国への印象、若干改善の方向
韓国人の日本への印象は若干改善の傾向が見られる。「良くない」は依然として6割を超えたものの、前年より8・4ポインの減少。逆に「良い」が昨年の12・3%から20・5%へと8・2ポイント増加した。
一方、韓国に「良くない」印象を抱いている日本人は48・8%と昨年と同様、半数近い。両国の国民感情は昨年よりやや落ち着いたものの、依然冷え込んでいる状況からは抜け出していない。
この調査結果に小倉紀蔵さん(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)は「韓国での徴用工判決や日本政府による輸出制限による過剰な興奮が収まってきた」とみている。
◆相手国への理解、双方ともに問題
韓日間の1人あたりの国民所得と防衛費などの差は縮小している。韓国側はすでに日本と対等な関係、ないしはそのような方向に進んでいると考えている人が9割近い。
一方、日本側で「対等」と認めたのは1割に過ぎない。小倉さんは「多くの人が韓国を小さな劣った国だと思い込んでいる。そこが日本側の認識として問題」と指摘している。西野純也さん(慶大法学部教授)も「韓国の経済成長は急速に進んでいる。にもかかわらず、60代以上の世代で軍事政権、遅れた国といった古い韓国像からの脱皮ができていない」と語った。
相手国に対する基礎的理解に欠けるのは韓国人も同様のようだ。日本の「社会・政治体制」に対する認識は「軍国主義」が依然として半数を超え、設問のなかでもっとも多い。日本の輸出規制のためか「覇権主義」「大国主義」とする認識も昨年より増えている。磯崎典世さん(学習院大学法学部教授)は「韓国側に過去のイメージがそのまま残っている。(日本の)新政権は誤解を解くメッセージを発信していくべきだ」と話している。
◆相手国の文化でつながり深める
政府間対立とは別に両国民は相手国への生活や文化への関心、観光、食文化を通じてつながり始めている。特にポップカルチャーの影響が大きいようだ。
韓国に「良い」印象を持つ日本人の64・6%が「日韓の政府関係が悪化しても相手国のポップカルチャーを楽しんでいる」と回答。特に20代未満では約80%が良い印象の理由として韓国のポップカルチャーを挙げている。韓国人でも20代未満や20代で日本のポップカルチャーを「楽しんでいる」(「とても」と「ある程度」の合計)人はそれぞれ50%、40・6%。
小倉さんは京都大学での体験から「日本の若い人の3分の1は日本のアイドルとソリが合わない。英語ばかりか韓国語も中国語も学ぶ国際派を自認するなど、価値観は非常に強烈。そこにカギがある。東アジアからクリエイティブな潮流が出てきた」と話している。西野さんは「ポップでもドラマでも韓国だからいいと思っているわけではない。KでもJでもなく、文化の新しい潮流を楽しんでいる。そういう傾向がこれからも続いていく」と見ている。
(2021.10.13 民団新聞)