掲載日 : [2019-12-30] 照会数 : 29946
在日3世の精神科医、安克昌さんモデルにNHKがTVドラマ化
[ 『心の傷を癒すということ』新増補版の表紙 ]
「心の傷を癒すということ」阪神・淡路大震災から25年
阪神・淡路大震災で心に傷を負った被災者の声に耳を傾け、日本におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)研究の先駆者となった在日韓国人3世の精神科医、安克昌(あん・かつまさ)さんをモデルとしたオリジナルヒューマンドラマ「心の傷を癒すということ」(出演・柄本佑)が18日からNHK「土曜ドラマ」で全国放送される。今年が阪神・淡路震災から25年になることからNHK大阪放送局が制作した。
タイトルは安さんの著書で、「サントリー学芸賞」を受賞した『心の傷を癒すということ 神戸…365日』(96年、作品社)からとった。昨年12月には同出版社から新増補改訂版が出版されたばかり。
フィクションながら「通名」を使うことに対する後ろめたさや自己嫌悪、「在日1世」である父親との葛藤、社会で自立していくことに対する不安感といった「在日韓国人としての出自」はドラマの中でしっかりと描かれている。
これはこのドラマを演出したNHKディレクターの安達もじりさんが、安さんの家族をはじめとする関係者から話を聞いて作成した入念な「取材メモ」があったからこそだった。脚本家の桑原亮子さんはこの資料と安さんの著書をもとに精神科医としての姿勢と生き方、そして家族との日々を物語として描いた。
安克昌さんは1960年大阪市生まれ。弟の成洋さんによれば「幼少期から本の虫」だった。高校生のときから金鶴泳をはじめとする在日文学に耽溺していった。医学部に入学。恩師から多大な影響を受け、精神科医をめざす。神戸大学附属病院精神科勤務を経て、神戸市立西市民病院精神・神経科医長を務める。
95年1月17日、阪神・淡路大震災に遭遇した。自ら被災しながら病院での臨床にとどまらず「心のケア」が必要と思われるさまざまな種類の「現場」にひたすら足を運んだ。「現場」では目の前にある課題に向きあい、悪戦苦闘し続けた。
成洋さんは「阪神・淡路大震災との遭遇こそが精神科医としての兄のターニングポイントとなったのでは」と語った。心的外傷の治療のパイオニアとして活躍していたが、震災から5年後の2000年12月、39歳の若さで亡くなった。
放送は18日から2月8日まで全4回のシリーズ。総合夜9時から9時49分。
(2019.12.30 民団新聞)