掲載日 : [2020-08-08] 照会数 : 11257
「ゴミはゴミ箱に!朝鮮人は朝鮮半島に」ヘイト発言に賠償命令
名古屋地裁 「民族性おとしめた」
【愛知】ブログのコメント欄に侮辱的な文言を書き込んだ男性に対し、韓国にルーツのある愛知県内の鄭友宏さん(48、民団瀬戸支部支団長)が143万円の損害賠償を求めて訴えていた裁判で、名古屋地方裁判所は6日、書き込んだ文言の一部が原告に対し人格権を違法に侵害していると認め、6万円の損害賠償支払いを命じた。
訴状などによれば原告が昨年6月、「愛国倶楽部」なる団体のブログのコメント欄に対話の機会を設けるべく書き込みをしたところ、男性が原告に向けて「ゴミはゴミ箱に! 朝鮮人は朝鮮半島に」などと書き込んだ。
この男性はかって「在日特権を許さない市民の会」(在特会)に所属し、韓国・朝鮮人など民族的マイノリティーに対してのヘイトスピーチを繰り返してきた。一方、鄭さんはヘイトスピーチに対する抗議活動を行ってきたことから、被告の男性とは面識がある。
鄭さんは「ブログのコメント欄でのやり取りであることを考慮したとしても、『朝鮮人』であることに対して極めて侮辱的な表現を用いたものであり、ヘイトスピーチ解消法の趣旨及び人種差別撤廃条約の趣旨からしておよそ許容される範囲を逸脱した。投稿を特定個人たる原告に向けて表明することは韓国・朝鮮に民族的ルーツを持つ原告の人格権を違法に侵害したものであるといえる」と主張していた。
村松教隆裁判官も「原告の民族性をことさらにおとしめ、差別する趣旨を含み、侮辱的表現を重ねて攻撃したものといえる」と原告側の主張の一部を認めた。
鄭さんは「ヘイトスピーチに苦しみながらも訴えることをためらってきた人たちが勇気をもってくれたならば、提訴した意味がある。もはや、私個人の問題ではない。ヘイト書き込み行為をする人たちには個人の尊厳を傷つければ法に問われることを知ってほしい」と語った。
愛知県でヘイトに対する賠償命令が出されたのはこれが初めて。愛知県韓国人人権擁護委員会の李豊宏委員長は「この判決は今後のヘイト言動を抑制する意味で非常に大きい。昨今ヘイト以外にもネットの書き込みでいじめや自殺者が出ている社会情勢を鑑み、今後、日本社会において我々在日同胞を含めた全ての方の尊厳が守られることを期待する」と述べた。
「抑止効果に意義」 仲岡しゅん弁護士
仲岡しゅん弁護士は「ブログ上のコメントであっても、裁判所が違法と判断し賠償責任を認めたことにはヘイト発言への抑止的効果があり、意義がある。また、裁判所は、被告による当該コメントが民族性を貶めること・差別的であることをきちんと認めた点でも評価したい」と語った。
他方、今後の課題としては、慰謝料の基準が日本では非常に低いため、泣き寝入りしている人は少なくないとみられ、今後もヘイトスピーチに対する何らかの対策や被害者への支援が求められるという。最後に、たとえ数個のコメントでも見逃すことなく、民族差別に対して徹底した対抗措置を取った原告の心意気を讃えた。
(2020.08.13 民団新聞)