掲載日 : [2019-05-10] 照会数 : 7206
よみがえる強制動員の記憶…旧柳本飛行場跡地に市民が説明板再設置
[ 説明板の設置を喜ぶ市民(4月13日の除幕式) ]
天理市 姉妹都市の瑞山市でも計画
【奈良】アジア太平洋戦争末期、韓半島から天理市に強制動員され、建設された旧日本海軍の飛行場跡地に、韓日の市民が植民地支配の歴史を直視する韓国語と日本語併記の説明板を設置した。天理市内の市立公園には市と教育委員会が1995年8月15日、「強制連行」と日本軍「慰安婦」の歴史を後世に伝える説明板を設けていたが、「汚辱の歴史」「歴史的に確認できない」といった歴史修正主義とおぼしき抗議を受けて2014年4月18日、「説明板は市の公式見解ではない」として撤去していた。
新たな説明板は「大和海軍航空隊大和基地(通称・柳本飛行場)について」とし、これまで歴史的に確定していることだけを具体的に記すにとどめた。市が撤去した旧説明板に比べると簡略で、抑制的な印象すら与える。
金哲九さん、金海永さん、張廣先さん3人の名前を入れたのは、柳本飛行場近くの寺に残る過去帳で海軍施設部を居住地していたことを確認できたこと。過去帳だけでなく、韓国の遺家族から得た証言とも符号したからだった。新たな情報の掘り起こしにも期待をかけている。
ただし、被害女性の歴史については、強制動員された韓国人からの証言、女性を救出した在日同胞のインタビュー記録、地元民の話があるが、被害女性が不明のため、慎重を期して「証言では」とした。同様の説明板は天理市の姉妹都市、忠清南道瑞山市の市民団体が6月末か7月に市内のキリスト教会の敷地内で除幕する。
飛行場建設は旧海軍大和海軍航空隊の基地として大阪海軍施設部が工事に入り、日本の敗戦直前に1500㍍の滑走路などを完成させた。飛行場の正式名は大和海軍航空隊大和基地だが、一般には所在地の地名から柳本飛行場と呼ばれている。
建設工事には学徒動員や地元からの勤労奉仕のほか、労働力不足を補うため韓半島から男性を動員した。また、女性も動員し、海軍管理区域内に設けられた「慰安所」に閉じ込めていたことが証言で明らかになっている。
(2019.05.10 民団新聞)