掲載日 : [2021-02-10] 照会数 : 4795
JDもーちぃの新大久保ナビ②大切な地元には 韓国食材が豊富
[ 食品売り場にはズラリ並ぶ韓国料理の調味料 ]
「新大久保って家あるんだね」「人住んでるんだね(笑)」新大久保を歩いてるとこんな会話が聞こえてくることがある。そう、新大久保には生活がある。辺りを見渡せば、韓国料理や韓国コスメのお店が乱立しており、幅広い層の男女が歩いているが、よく見ると、そのショップの上には住居があったり、路地に入れば一軒家もマンションもある。
「新大久保在住」と言うと驚く人が多いが、案外住む場所はあるのだ。そして、そんな新大久保で育つ子どもたちもいる。実際、私は新大久保に小学2年生から住んでいて、新大久保エリアにある小学校にも通っていた。(後に転校する)新大久保に住んでいる子どもたちが通っている公立小学校は大きく「戸山小学校」と「大久保小学校」の2つに分けられる。私が通っていたことのある戸山小学校は公務員官舎の近くにあることもあって日本人の小学生が多く、クラスに数人、外国籍の子どもがいた。
対して大久保小学校は、インターナショナルな環境で、私が小学生の時はクラスの半数以上が外国籍の子どもたちで、保護者向けに配られるプリントも数カ国語の言語で用意されていた。公立の学校にも関わらず、日本語の授業や文化を学ぶ時間もあった。大久保小学校の卒業アルバムを見た時、読めない漢字の名前やカタカナの名前がずらっと並んでいたのが印象的だったのを今でも覚えている。
常に人でにぎわう大久保通りも、ハローワークや、ピカピカと光を放つドン・キホーテが並び歌舞伎町にもほど近い職安通りも、彼らにとっては通学路だ。ごった返す観光客の間を、ランドセルを背負った小さな体で縫うように下校する姿を見るとそのコントラストに思わず笑ってしまいそうになる。
「新大久保に住んでる人って毎日韓国料理食べるの?」そんな質問をされることも多々ある。半分冗談で聞いているんだろうが、それに近い現状がこの街にはあると思う。
新大久保エリアには、一般的に言われる「スーパー」がないに等しい。業務用スーパーや、小型店舗はあるものの、カートを引いて食品を購入する環境は韓国食品を主に取り扱うスーパーしかないのだ。かといって困るのはお刺身や珍しいものを買うときくらいで、大体の野菜や調味料は揃う。そして、日本のスーパーには常時置かれることのない「えごまの葉」や「ホバク(韓国かぼちゃ)」、「アミの塩辛」などを購入することもできる。
これらは韓国料理にはもちろん、炒め物や鍋など日本人の家庭に並ぶ料理にも使えるので、私は小さいころからそれらを食べて育った。コチュジャンや、エクジョ(魚醤)がある環境で育った私が食べていた料理は果たして韓国料理だったのか、日本料理だったのかは分からないが、母の料理の腕前のおかげもあってか好き嫌いなくなんでもおいしく食べられる大人に育った。
新大久保の暮らしは特殊に見られがちだがここにはキチンと生活があって、住む人々や家族にとっては大切な地域であり地元なのである。
「地元・新大久保」の姿はここ数年の間で変化を見せており、ゴミのポイ捨てや、道の混雑など、地元民の目線からは無視できない問題も多く残されている。観光地として、地元としての新大久保に自分はどう働きかけることができるのか、考えさせられる日々だ。
(2021.02.10 民団新聞)