
昨年、関東大震災時の朝鮮人虐殺をテーマにした『祈りの大地』を上演して話題を呼んだ劇団民藝が、戦後の激動期を舞台にした『グレイクリスマス』(作=斎藤 憐、演出=丹野郁弓)を東京・日本橋の三越劇場で27日まで上演中。
物語は敗戦の年のクリスマス。進駐軍の将校クラブに母屋を接収され、離れに追いやられた五條伯爵家。天皇は人間になり、華族制度は廃止。路頭に迷って自殺を図る生活力のない当主の五條(千葉茂則)、戦犯裁判にかけられる弟(天津民生)、ヒロポン中毒の息子(横山陽介)らの中で女たちはたくましく、後妻の華子(中地美佐子)と弟の妻・慶子(吉田陽子)は、将校クラブのホステスを引きうけた。不穏な動きを見せる(在日である)闇屋の権堂(岡本健一・客演)や、日系二世の軍人ジョージ・イトウ(塩田泰久)が出入りする離れでは、にぎやかな宴が始まっている。
ジョージの説くデモクラシーの理想に胸をときめかし、愛をふくらませてゆく華子。娘・雅子(神保有輝美)は、なぜか権堂に魅かれてゆく。やがて米国の占領政策がかわり、韓国動乱がはじまる。特需景気で旧勢力が息をふきかえし、五條の弟は政界に復帰、息子は警察予備隊に。そして翌年、米軍の一員として韓半島で戦死したジョージから、思い出のオルゴールが華子のもとに届くのだった……。
戦後民主主義、女性の人権などとともに同作では民族差別の問題が色濃く描かれる。日本が植民地時代に朝鮮人に行った迫害と同じことを、今度は米軍が日本人に対して行うのではないかと不安に思う五条家の一員の姿は典型的だ。
そして、民族的迫害を受け屈折して育った闇屋の権藤の、世間に対して常に反抗的でタフな生きざま、祖国での戦争勃発に苦悶する姿などは、同作品の出演者の中でも特に強い印象を残す。戦後、多くの在日同胞が抱えたであろう苦悩が、権藤の姿に表現されているようだ。
問い合わせは☎044・987・7711(劇団民藝)。