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『黒い海 強制徴用者の涙』(影書房、ムン・ヨンスク著、キム・セヒョン絵、北村幸子訳、解説:井上洋子、布施祐仁、四六判、264㌻、2200円+税)が出版された。
長生炭鉱の数少ない生存者の一人、金景鳳氏(2017年に逝去)の証言を基に、韓国人作家のムン・ヨンスクさんが2010年に発表した物語を翻訳した。
物語は、戦時中、朝鮮から山口県の海底にある長生炭鉱に連れてこられた15歳の少年カンジェ。危険な採掘場では、朝鮮人ばかりが奴隷のように働かされていた。カンジェは親友のチョンソクと逃亡をはかるが、失敗。チョンソクは行方知れずになる。その後、炭鉱は水没事故を起こし、180余名の労働者が海底で生き埋めになる。たまたま事故の時に坑内にいなかったカンジェは、その日のうちに二度目の逃亡をはかり、今度は成功する。
カンジェは逃亡後、ある製鉄所で働くことになるが、ここでも朝鮮人への差別と虐待は変わらなかった…。
絶望・拷問・恐怖・空腹を生き延びたカンジェの姿を通して、日本の植民地支配の実態を訴える。作者はあとがきで「わたしはこの物語を通して、数万の徴用者たちの魂をなぐさめ、さらに一歩進んで戦争の惨状を告発したかった。多くの魂を、少しでもなぐさめてあげたかった」としている。
本書は漢字にルビを振り、場面ごとにわかりやすい絵を入れて、小学生でも読めるように工夫されている。長生炭鉱問題を理解するのに最適の一冊。
9月8日には都内で「黒い海 強制徴用者の涙」出版記念会が開かれた。井上洋子・長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会代表理事は、「2007年2月3日の宇部での水没事故犠牲者追悼式に金景鳳さんらを迎えた。金さんは炭鉱の天井が低いので寝た姿勢のまま炭を掘り出した。(暴力と空腹の辛さに)3人で逃亡したが2人は殴り殺されたことなどを証言してくれた。長生炭鉱は強制連行・強制労働の象徴だ。遺骨収容と遺族への返還は、日本の加害の歴史と向き合う道程でもある」と語った。
訳者の北村幸子さんは、「小学校教諭、韓国で日本語学校の教師を経て翻訳を始めた。黒い海の原書を読んで、長生炭鉱のことを初めて知った。24年から翻訳に取り組み始めたが、長生炭鉱の坑口を探して遺骨収容に乗り出したことを知り、翻訳を急がなければと思った。植民地支配を行った日本の人々に、この事実を知ってほしい」と述べた。
フリージャーナリストの布施祐仁さんは「金景鳳さんらの他にも韓国人被爆者など、戦時中の強制動員で多くの韓国人が被害にあった。この問題は決して過去の話ではない。韓国の人々に謝罪と賠償を行うよう、日本社会を変えていかなくてはならない」と強調した。