
在日2世の作家・深沢潮のデビュー作で、在日同士の縁談を取り仕切る2世の「お見合いおばさん」と、それを取り巻く人々を描く。同胞同士の結婚を願う親たち、本名と通名、国籍、アイデンティティーに悩む子どもたち、在日と結婚した日本人女性の姿などを通して、在日社会を浮き彫りにする。登場人物がみなリアルで、いとおしさを感じる。
在日4・5世が登場する時代、ここに描かれたような在日社会は姿を消していくのだろうか。
著者は昨年夏、出自をめぐる差別的コラムが「週刊新潮」に掲載されたため同社に抗議、出版契約を解消した。作家の柚木麻子さんは深沢潮さんに連帯し、代表作「BUTTER」の版権を新潮社から河出書房新社へ移行した。柚木さんは本書の解説で「この物語が、鋭いのに温かな余韻を残すのは、同胞に注がれる、著者の惜しみない愛と理解の力でもあるのかもしれない」と述べている。(角川文庫、深沢潮著、文庫判、384㌻、税込1122円)