掲載日 : [22-10-26] 照会数 : 4189
尹大統領が施政演説「経済・安保の困難克服へ協力を」
[ 国会本会議場で演説する尹大統領(大統領室HPより) ]
尹錫悦大統領が25日、国会で2023年度(1~12月)予算案に関する施政方針演説を行った。尹大統領は「経済と安全保障の厳しい状況を克服していく上で与野党の別はない」とし、「国会の協力が切実」と訴えた。
尹大統領が国会で施政方針演説をするのは、5月の新型コロナウイルス対策の補正予算編成時に次いで2回目で、本予算に関する施政方針演説はこれが初めて。
この日の演説では経済と安保の厳しさを強調した。世界経済は物価高や利上げ、ドル高により不確実性が高まり、国内では弱者層の苦難が増していると言及。世界的に産業と資源が武器として使われるようになり、供給網がブロック化する流れにあるとしながら「価値を共有する国々との協力が何より重要になった」との認識を示した。
安保に関しては、北韓がこのところ過去に例のない頻度で弾道ミサイルを発射するなど威嚇的な挑発を続けているとし、国連安全保障理事会決議に違反すると指摘した。また「北は核の先制使用を表明しただけでなく、7回目核実験の準備もすでに終えたとみられている」と懸念を示した。
尹大統領は「韓米の連合防衛体制と韓米日の安保協力を基に対北抑止力を強化していく」と表明。一方で「北が非核化の決断を下し、対話の場に出てくるなら、就任演説と光復節演説で表明した通り『大胆な構想』に基づく政治・経済的支援を惜しまない」と述べた。
23年度予算案については、世界の複合的な危機と国民生活の課題に政府がどう対応するかを盛り込んだものと説明した。「政治的な目的が先立つこれまでの放漫な財政運用で財政収支の赤字が急速に拡大した」と言及しながら「経済成長と弱者福祉の持続可能な好循環に向け、国家財政が健全に支えることが大変重要だ」と強調した。来年度の歳出は2010年以降初めて前年比で縮小編成したとし、「健全財政への転換点になる」と期待を示した。
尹大統領は「財政の健全化を推進しながらも庶民と社会的弱者をさらに手厚く支援する『弱者福祉』を追求している」とし、基礎的な生活を営むための給付金の引き上げや社会保険の拡大、学齢期の子どもを持つ世帯への支援強化などを挙げた。
経済成長の基盤構築政策としては、半導体産業に関し「半導体メモリーの優位維持とシステムLSI(大規模集積回路)の競争力確保に向け、専門人材の養成と研究開発、インフラ構築に1兆ウォン(約1040億円)以上を集中投資する」と表明した。
原子力産業に関しては「崩れた生態系(エコシステム)の復元が急がれる」とし、原発輸出を積極的に支援し、小型モジュール炉(SMR)や原発解体技術など次世代技術の研究開発にも力を入れると述べた。このほか、▼量子コンピューター、宇宙工学、人工知能(AI)、先端バイオ分野の投資支援▼民間投資主導型の起業支援▼小規模事業者の債務調整と再起支援▼首都圏広域急行鉄道(GTX)路線の適期完工▼未来の交通手段の早期商用化――などの政策を取り上げた。
尹大統領は予算案を「わが韓国が進むべき方向性を示す地図で、国政運営の設計図」と表現し、「経済の不確実性が続く中、国会で期限内に予算を確定し、困難な国民生活に突破口を開いて未来の成長を下支えしていくことを期待する」と、国会に協力を呼び掛けた。