掲載日 : [22-12-09] 照会数 : 4916
川崎市反ヘイト条例の運用改善求める 市民ネットワーク会見
[ 「ヘイトスピーチを許さない」かわさき市民ネットワークの記者会見(8日、川崎市教育文化会館) ]
【神奈川】「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」制定から12月で満3周年。違反者に日本で初めての行政刑罰を科したことで「殺せ!」「死ね!」といったあからさまな路上のヘイトスピーチは姿を消した。いまや差別をなくす条例制定に取り組む全国の人たちのモデルとさえなっている。
一方、課題も見えてきた。市が条例運用に慎重なため、ネット差別で心の傷を負った被害者の救済が迅速に進んでいないことだ。これは市からの諮問と「審査会」の公表がセットになった17条がネックとなっているとしており、運用の改善を求めている。
「ヘイトスピーチを許さない」かわさき市民ネットワークは8日、川崎市教育文化会館で会見。17条の実効性ある運用へ向け、ネットモニタリング制度を活用した削除要請の推進と、人種差別撤廃問題の専門家による条例担当者をはじめとする職員への研修の実施を市に求めるコメントを発表した。
今後、全会派の議員と個別に面談し、施策のさらなる充実を呼びかけていく。また、「いま一度、川崎市の背中を押してもらう」ため、請願・陳情も考えているという。
師岡康子弁護士は「公的機関による削除要請は確かに効果がある。ヘイト被害撲滅へ条例で大きく前進したといえる。今後とも市民の応援、バックアップが必要」と呼びかけている。
「国に帰れ」は重大な人権侵害 ネットヘイト裁判で意見書提出
【神奈川】ネット上で4年以上、執ようなヘイト攻撃を受けてきた在日3世の崔江以子さん(川崎市ふれあい館職員)を原告とする損害賠償訴訟の第4回口頭弁論が8日、横浜地裁川崎支部で開かれた。
原告側はこの日、「出ていけ」「国へ帰れ」といった言葉でどのような被害を被ったのかを当事者50人へのアンケート調査と直接の聞き取りで検証した「朝鮮史」を専門とする歴史学者、板垣竜太さん(同志社大学文学部教員)の意見書を提出した。
報告集会で崔さんと同様の被害を受けた経験のあるライターの李信恵さん(東大阪市)は「在日には刺さる言葉」「すごく辛い」と心情を明かした。
作家の朴慶南さんも「言われた直後は崩れ落ちるほどの打撃を受けた。心の傷は目に見えないが、なんにもできないほど。裁判で私たちは使ってはいけない言葉なんだと認めさせたい」と述べた。
原告代理人の神原元弁護士は「『祖国へ帰れ』は殺すといった『害悪告知型』や人を虫に例えるような『侮辱型』とも違う『排除類型』というべきもので、これこそがヘイトスピーチの本質だ」と強調した。
崔さん側はブログとツイッターで書き込みを続けてきた当時のアカウント名「ハゲタカ鷲津政彦」なる人物を発信者情報開示手続きによって特定し、損害賠償350万円を求めて2021年11月18日、横浜地裁川崎支部に提訴した。
被告側は「差別の意図はなかった」としている。次回の口頭弁論は2023年2月9日に開かれる。