掲載日 : [21-05-26] 照会数 : 8466
ネットヘイトに賠償命令…発信者に異例130万円 東京高裁
東京高裁(白井幸夫裁判長、相沢哲裁判長代読)は12日、ブログ上で神奈川県に住む在日韓国人4世の大学生、中根寧生さんに差別的な書き込みを行った男性(68、大分市)に対し、計130万円の損害賠償を命じた。
中根さんは2018年1月、川崎市であった平和イベントに出席し、在日韓国人に対する偏見をなくそうと訴えた。地元紙がその様子を記事にしてインターネットで配信したところ、男性が「悪性外来寄生生物種」「バカ丸だし」「チョーセン・ヒトモドキ」などと書き込んだ。
中根さんは当時、中学3年生で、恐怖を感じた。家族と相談し19年3月、名誉棄損と侮辱、差別に基づく人権侵害の損害賠償として300万円を求める民事訴訟を提起。横浜地裁川崎支部は20年5月、慰謝料と弁護士費用などを合わせた91万円の支払いを命じる判決を下したが、中根さん側は名誉棄損の認定がなかったことを不服として控訴した。
高裁は一審判決を支持、「中根さんの名誉感情だけでなく、個人の尊厳や人格権を侵害し、人間としての地位を否定する悪質な投稿であった」ことを認めた。さらに、中根さんが「当時中学3年という多感な時期にあり、精神的苦痛は多大で、成長に悪影響を及ぼしかねなかった」として賠償額を増額した。
ただし、名誉棄損の成立については引き続き否定した。
原告代理人は「1回の書き込みで100万円の慰謝料を請求されたというケースは聞いたことがない。人種差別そのものが違法と認めた極めて画期的な判決であり、ヘイトスピーチへの大変な抑止効果がある」と評価した。