掲載日 : [21-07-13] 照会数 : 9801
東京五輪柔道の在日3世2選手の活躍に期待…安昌林と金知秀、26日に出陣
[ 安昌林(左)と金知秀(写真:IJF=国際柔道連盟) ]
23日に開幕する東京五輪。29種目、354人で臨む韓国選手団に在日3世選手が2人いる。柔道男子73キロ級の安昌林(27)と女子57キロ級の金知秀(20)だ。安昌林はリオ五輪に続く2大会連続出場。金知秀は在日女子柔道選手の韓国五輪代表が初となる。2選手とも、生まれ育った日本での大舞台でメダルをめざす。
◆在日選手初の金メダル期待
世界ランキング4位の安昌林は3年前の世界選手権で、前年の覇者でもある日本の橋本壮市を一本勝ちで破り、世界王者となった。
背負い投げを得意とする安昌林の最大のライバルは同級で五輪2連覇を狙う日本代表の大野将平だ。
安昌林は東京都生まれで京都市育ちの在日3世で、神奈川・桐蔭学園高から筑波大に進学。
筑波大学2年になった2013年、階級を73キロ級に上げて学生体重別で優勝。日本柔道界から日本国籍取得を勧められるが、「韓国人だから太極マークを付けたい。国際大会で日本の選手に勝つのが目標」と断り、柔道の強豪として知られる韓国の龍仁大学校に編入した。
転学1カ月後には韓国柔道代表選抜戦で3位に入り、念願だった太極マークを付けた。それからの活躍はめざましく、一躍韓国で73キロ級の第一人者として浮上した。メダル獲得が期待された2016年のリオ五輪は3回戦で敗退した。
生まれ育った地での五輪出場に安昌林は「東京五輪は特別な思いがある。韓国代表であり、在日代表という気持ちが強いので、自分が勝つことで日本や韓国の人が在日の立場を分かるようになればうれしい」と話した。
在日同胞としてのメダル獲得は過去、金義泰が銅(64年東京)、呉勝立が銀(72年ミュンヘン)を獲得しているが金メダルはない。安昌林は韓国代表入りして以来、各種国際大会で王者に輝くなど経験を積んできた。在日同胞初の「快挙」も夢ではない。
◆太極マーク選択は当然の決断
兵庫県姫路市出身の金知秀は2016年8月、高校1年ながら日本のインターハイで優勝したあと、その年10月、在日大韓体育会の勧めで韓国国体に出場し、国内の強豪を次々と撃破し圧倒的な強さで優勝。その後、大韓柔道会から韓国ジュニア代表に選ばれた後、韓国代表となった。
安昌林同様、日本への帰化の話も勧められたが「父も母も韓国人で、日本で生まれ育ったが、ずっと『キム・ジス』という韓国名を使ってきた韓国人なので、国を代表して五輪に出場するなら、太極マークをつけたい」と「当然の決断」を選んだ。
在日同胞初の韓国柔道女子代表となった金知秀は「コロナ禍で疲れた国民のためにも、オリンピックで良い成績を出したい。そうすることで韓国と日本で私のために頑張ってくれた方々に恩返ししたい」という思いが強い。
兵庫・夙川学院高(現夙川高)では女子52キロ級で日本代表の阿部詩と同級生。いまや日本の代表的なスポーツスターになった高校の友達、阿部詩とは今年5月にロシアで会い、「2人ともオリンピックで頑張ろう」と励まし合った。
安昌林、金知秀の試合はいずれも7月26日だ。両選手はまた、今回から採用された男女混合団体戦(7月31日)にも出場する予定だ。柔道の聖地、日本武道館でメダル獲得を期待したい。