掲載日 : [21-03-31] 照会数 : 9932
ヘイト被害7割が体験…朝鮮奨学会が同胞奨学生意識調査結果
[ 朝鮮奨学会がまとめた意識調査報告書の表紙 ]
「ヘイトスピーチ対策法」成立以降も民族的出自に基づく嫌がらせは依然として続いている。公益財団法人朝鮮奨学会(東京・新宿区)が高校・高専生620人、大学・大学院生877人の奨学生を対象とした「意識調査」の結果、明らかになった。アンケート回答者によれば、「ネット上での嫌な体験」をした、「ヘイトデモ・街宣の見聞き」があったという答えが7割以上にのぼった。
調査はインターネットを活用し2019年12月から20年2月にかけて実施。有効回収数は1030(有効回収率69・4%)と強い強制力を持たない民間による自主的調査としては高い数値を記録した。
嫌がらせ体験の種類と有無を見ると、回答者のおよそ3割が「主に対面状況における性別や言葉によるヘイトスピーチ」に直面し、同じく4割が「公的機関や住宅利用における差別的処遇」を受けていた。ネット上で嫌な体験をしたり路上でヘイトデモや街宣を見聞きしたという人はいずれも7割以上にのぼった。
「名前×言葉による嫌がらせ体験」の項目を見ると、「まったく通名」は7・3%で、「使い分けている」(15%)、「まったく民族名」(17・9%)に比べて割合は少ない。逆に言えば、「まったく通名」でない限り割合がほぼ変わらないこともわかった。
場所はアルバイト先や不動産(マンションやアパート)を借りたり、買う際に体験している。これは「お店・交通機関・役所など」「ネット上」でも同じ傾向が見られた。こうした差別的処遇は民族としての自己の否定にも大きな影響を与えている。
一方、差別デモ・街宣の見聞きは、通名でも民族名でも関係なさそうだが、現実には後者のほうが「路上などで直接見た」と答えた人の割合が際立って高い。これはネット上でも同じ。特に「ネット」「デモ街宣」には多くが「不安や恐怖」を感じている。「サイトの利用を控えた」と答えた人が3割もいた。
今回の調査に明戸隆浩さん(法政大学特任研究員)とともに参加した立教大学社会学部の曺慶鎬助教は「対策法成立以降のヘイトスピーチの被害の推移をまとめた統計は見当たらないだけに有用。今後も定期的な調査が望ましい」としている。