去る3月15日、日本政府は「永住者」の在留資格を有する外国人について、税金や社会保険料を滞納した場合や、1年以下の懲役・禁固刑を受けた場合等に、在留資格の取り消しを可能とする入管法改定案を閣議決定しました。
「永住者」の資格取得は、「10年以上日本に在留し、就労期間が5年以上」「懲役刑などを受けていない」「納税などの公的義務を履行」等、他の先進諸国と比較しても非常に厳しい条件が課されています。このような高いハードルをクリアし許可を受けた「永住者」は、昨年6月末時点約88万人、在留外国人の約27.3%に上っています。
今回の入管法改定案は、政府が今国会で成立を目指す「育成就労制度」の導入や「特定技能制度」の職種拡大に伴い、「永住者」が増加することを予測し、永住資格許可の適正化を求めたものであるとされています。
しかしながら、一方で「永住者」資格の取消法案が成立するならば、数万名もの永住資格を持ち、長年にわたり日本に居住する在日韓国人の生活および権利が著しく侵害されるものであると言わざるを得ません。
「永住者」は、日本国内で居住していても加齢・病気・事故・社会状況の変化など、長年日本で生活していくうちに許可時の条件が満たされなくなることは起こり得ます。税金等の少額未納が発生した場合や過失犯も含めた軽微な犯罪の場合に在留資格を取消されることがあり得るという立場に置くこと自体、「永住者」に対する深刻なる差別であると言えます。
特に、税金や社会保険料の滞納は、日本人同様に、督促、差押え、行政罰、刑罰で充分対処できることです。
本団の構成員である韓国籍を持つ在日韓国人は、長年日本に居住しながら地域に根差して生活する「永住者」や、日本で生まれ日本語しかわからない2世、3世の「永住者」も多くおります。日本市民と共に生活をしながら、地域社会の発展に貢献しています。
今回の入管法改定案による在留資格取消制度の導入は、日本政府が目指す「共生社会の実現」に逆行するばかりか、歴史的な背景により日本に居住するに至った在日韓国人の「永住者」や、また、生活上の様々な事情により、余儀なく日本に居住するに至った在日外国人の「永住者」、さらにはその子孫までも対象とし、納税不履行や軽微な刑事罰等によって簡単に永住資格が取り消されることは、深刻かつ憂慮すべき問題であります。ましてや国または公共団体の職員が入管へ通報できる制度まで創設するというのは余りにも過度な取り締まりと言えます。
また同法案に関しては、その立法事実の有無等が慎重に検討されるべきものであるにもかかわらず、有識者会議でも全く検討されないままにこの点が唐突に提案されており、拙速に具体化すべきものではありません。
以上の趣旨から本団は、この度の日本政府の入管法改定案は「永住者」の生活、人権を脅かす重大事案と認識し、是正を強く求めます。
2024年 4月 30日
在日本大韓民国民団中央本部
団 長 金 利 中