掲載日 : [20-09-25] 照会数 : 14365
NHK広島の人種差別的投稿に人権救済申し立て
[ 人権擁護部の若槻靖夫第二課長に申立書を手渡す民団広島本部の李英俊団長 ]
[ 人権擁護部担当者と意見交換する申立人 ]
NHK広島放送局が運用しているツィッタープロジェクト「1945ひろしまタイムライン」に人種差別的投稿があったとして民団中央本部人権擁護委員会(李根茁委員長)は9月23日、広島法務局に人権救済を申し立てた。申し立ては民団広島本部(李英俊団長)と在日韓国人法曹フォーラム(李宇海会長)との連名。該当ツィートの削除と今後の再発防止をNHKに要請・指導するよう求めた。
同プロジェクトは「もし75年前にSNS(会員制交流サイト)があったら」という設定。1945年前後に広島で書かれた3人の市民の日記に向き合い、現代の人たちが「何を感じたのか」を伝えるのが目的としている。1945年の日付と合わせ、今年3月から更新が続いている。原爆投下前後での広島での出来事や人々の感情を臨場感をもって感じられると話題になった。
問題となったツィートは当時中学1年だった「シュン」(日記を書いた当時中学1年生だった新井俊一郎氏を模している)がつぶやいている。
6月16日付では「朝鮮人」「朝鮮人のやつら」といった侮蔑的な言葉が続く。日本が敗戦を迎えると、戦勝国となった朝鮮人の不当性だけを際立たせ、当時の背景事情についての注釈も加えていない。
「あまりのやるせなさに、涙がとまらない。負けた復員兵は同じ日本人を突き飛ばし、戦勝国民の一団は乗客を窓から放り投げた 誰も抵抗できない。悔しい……!」(8月20日付)
人権擁護委員会の薜幸夫副委員長は「その当時、なぜ朝鮮半島出身者が日本で生活するようになったのかという時代的背景を知らない場合が多い。時代背景を知らないまま今回のツィートでの『朝鮮人』に対する言葉の内容だけを見ると、ヘイトスピーチにつながりかねない」と危惧を表明した。
民団広島本部の李団長も「時代背景を知らずにインターネットだけを見る人たちは、本質を理解しにくいだろう。今後同じことが繰り返されるのを防いでほしい。削除して終わるのではなく、同じ過ちを繰り返さないようにしてほしい」と申し入れた。
申立書は各投稿を「人種差別撤廃条約の人種差別に該当する」「ヘイトスピーチ解消法1条1項の『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』にも該当する」と指摘。さらに「目的が善意だった、差別するつもりはなかった、という言い訳はNHKという日本社会に対する大きな影響力を有する報道機関がした企画である以上、通ることはない」としている。
NHK広島放送局の広報担当者は再発防止に努めるとして次のようにコメントした。「視聴者の皆様に差別を助長していると受け止められるのは公共放送、公共メディアとしてあってはならないこと。再発防止を徹底していきたい。削除はいまのところ予定はない」