掲載日 : [20-09-16] 照会数 : 11875
養護施設児童を招待 焼肉店経営 韓永紀さん…今年で3回目
[ 黒毛和牛に目を細める子どもたちと世話役の韓永紀さん(右端) ]
「報恩感謝」挫折乗り超え都内6店舗
都区内で焼肉店を複数経営する在日3世の韓永紀さん(49、株式会社サンエイフーズ代表取締役)が今年も夏休みを利用して都内の児童養護施設から子どもたちと職員40人余りを招待し、自慢の黒毛和牛をふるまった。
過去に事業をしくじり、周囲の支援で立ち直った苦い体験があるだけに、地域への「報恩感謝」の思いでボランティアを続けている。
子どもたちは口の中でほどなく溶けていく濃密な霜降り肉にびっくり。「こんな高価な焼肉、初めて食べた」といった感嘆の声が聞かれた。食事会で世話にあたった韓さんは、笑顔を見せる子どもたちの姿を見て自らの心の中が満たされていくのを感じたという。
韓さんが社会奉仕に目覚めたのは東京韓国青年商工会で会長を務めていた時。「世の中にはさまざまなボランティアがあると思うが、焼肉店を経営している私に何かできることはないだろうか」と考えていた。そんなときに児童養護施設で暮らす子どもたちのことに思いが至った。
5年前、東京・葛飾区の児童養護施設を訪ねた。韓さんは虐待、育児放棄、ネグレクトといった恵まれない家庭環境で育った子どもたちの存在を園長から知らされ、恵まれた家庭環境で育ててくれた両親に感謝するしかなかった。韓さんは子どもたちを食事会に招待したいと申し入れ、その場で承諾を受けた。
食事会は韓さんの思いに賛同した業者やスタッフに恵まれ、今年で3回目を迎えることができた。
韓さんの実家は焼肉店。両親は土・日の休みもなく働きづめで、さびしい思いをしてきただけに家業を継ぐ考えはなかった。税理士を目指して勉強していたところ、父親と叔父の勧めで当時まだ目新しかった宅配寿司を始めた。思いがけない成功で大金を手にしたが、放漫経営で破綻。
韓さんは心機一転、05年に兄弟3人で株式会社サンエイフーズサービスを設立。経営の傾いていた両親の家業を継ぎ、建て直しに成功した。その時、大きな力になったのは群馬県で人気焼肉店を経営する同胞経営者のもとで修業した経験だった。
修行時代に学んだタレのレシピに韓家秘伝の味をミックスした極上の味が経営の原動力となっている。韓さんは「一生懸命やれば誰かが見ていてくれる」と感謝の言葉を口にした。
現在、7店舗目を準備中。当面の目標は10店舗で、いずれは上場も視野に入れている。