掲載日 : [20-03-28] 照会数 : 15586
新型コロナ、在日同胞に打撃深刻…韓食・焼肉、悲痛な声
[ 閑散とした大阪の御幸通り商店街 ]
新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の影響や打撃が民団社会や在日同胞社会に続いている。焼き肉店、韓食店などの外食業は宴会のキャンセルが相次ぐ上、来客数が激減し、売り上げが3割から7割も減少している。一方でマスクの品不足が続く中、民団大阪や埼玉では「団員の健康と生活を守ろう」と、多方面に声をかけては、マスクの手配に奔走、団員への配布に乗り出した。また、民団中央本部では3・1節と3月中開催予定の地方委員会・大会・総会や一般行事を延期するよう指示していたが、23日に3機関と常任委員の緊急会議を開き、感染防止策などの条件付きで4月中に開催するよう示達した。支部の大会・総会に関しても地方委員会・大会・総会が終了後の4~5月中開催としている。
◆都内焼き肉店
東京青商の会長を歴任し、都内で6店舗、焼き肉店経営のサンエイフーズ韓永紀代表(49)によると、2月までは平常だったが、3月に入ってからは3割以上売り上げが落ちているという。
3月は卒業シーズンや入学シーズンでもあり、1年の中でも12月に次いで宴会予約が殺到していたが、すべてキャンセルとなった。
ただ、店舗はいずれも住宅街にあるため、家族での来客は維持している。店員にはアルコール消毒とマスク着用を徹底させている。ただし来客も減少しているため、閉店時間を切り上げているという。
25日に小池東京都知事が緊急会見で外出自粛を要請したことで、韓氏は「外食業への影響も必至ですね」と不安そうだ。
◆新大久保
新大久保コリアンタウンでサムギョッサル専門店3店舗を営む団員によると、今の卒業・入学シーズンは12月に匹敵する繁忙期だが、街の客足が減ったことで売り上げも3~4割程度減っている。もちろん宴会予約もキャンセルが相次いでいるという。
韓国料理店の妻家房を経営する呉永錫氏(民団東京本部議長)によると新大久保の韓食店は売り上げベースでおおむね3~4割減で、一部では5割減に落ち込んでいると言う。
また、自身が営む妻家房スカイツリー店は観光客が立ち寄らないため、7割以上減少し、死活問題だ。呉氏は「涙が出るよ」と洩らしていた。
休校が続くことで、新大久保は最近、中・高生の姿が目立っている。ただ、なけなしの小遣いをもってセットメニューかあるいは単品を2人でシェアする姿が目立つという。1~3万円を落としていった「韓流ファンのおばさん」たちの姿が消えたことで、売り上げは大幅に減少している。
◆鶴橋商店街
キムチと韓国食材販売店を営む50代の女性(匿名希望)は「韓国から、食材としてなつめや韓国かぼちゃ、えごまなどを仕入れているが、コロナウイルスの影響で仕入れが止まっている。在庫も今月いっぱいもつかどうか心配。キムチは白菜や唐辛子など、日本産の代用で持ちこたえている。ただ、客足は半分。いつ終息するのか先が見えない状態で、私たちは客が来るのを待っているだけ」とため息をついていた。
各地域からいつも鶴橋の韓国食材を買い付けにくるお客が、よく駐車するパーキング(約70台)がJR鶴橋駅近くにあり平日でも6割以上は停まっているのが、今は15台ほどになっていた。
「国際マーケット」と呼ばれる鶴橋駅前の鶴橋商店街で韓服の仕立てと販売のほか、韓国雑貨を販売している新興商会の安伊三男さん(72)は「コロナウイルスの影響で、商店街は閑散している。売り上げも平日は9割、土、日でも7割ほど減少している。韓国から仕入れていた雑貨類は在庫分だけを店先に陳列し、仕入れは止めている」ともらす。
また、「先代が創業して約70年になるが、こんなことは初めて。過去、インフルエンザの大流行や阪神・淡路大震災の時でも、こんなことはなかった。今はただ息を潜めながら我慢するだけ」と話していた。
◆御幸通り商店街
人、人、人で歩けないほど賑わっていた通称、「猪飼野コリアタウン」「桃谷コリアタウン」と呼ばれている「御幸通り商店街」も人通りはまばらだ。土、日は多少、人通りがあるが、平日は閑散としている。
また、つねに満車状態だったコリアタウン入口の駐車場も空きが目立ち、通常時、道路わきで数珠つなぎで待機していた車の姿が消えた。
かき入れ時「じっと我慢」
◆タクシー業界
首都圏ではタクシー業を営む同胞も多い。東京都内でタクシー会社を経営する団員によると、売り上げが4割ほど減少している。3月と4月は年度末、年度初めもあり、官庁街やオフィス街の人たちが多く利用する時期だ。しかし、在宅勤務拡大の影響もあり、サラリーマンが街に出ていない。
タクシー業界全体の売り上げが落ち込んでおり、減少状態は半年程度は続くと見込んでおり、「じっと我慢ですね」と語っていた。
◆日本語学校 新入生が足止め
アジア人留学生の日本語専門学校である東栄国際学園埼玉日本語学校(田虓玔理事長)では卒業式を繰り上げ、3月3日に各クラス単位で簡略に実施した。
4月から始まる新年度は在校生と新入生で学生170人を確保したが、入国制限の影響もあり、例年より減少している。
学校としては4月からは秋(10月)の新入生募集に向けて動くところだが、まったく見通しがたっていないという。
同学園は30年間、韓国から日本語を学びに来る学生を専門としてきたが、東日本大震災で学生が激減したことを教訓に、韓国以外にネパール、ベトナム、中国など受け入れ先を7カ国に広げてきた。しかし、入国制限のため多くの新入生が足止めされた。
田理事長は「中国人学生が多く占めている学校は休校せざるを得ない状態だ。当学園は備蓄してきた資金があるのでなんとか維持していけるが2年が限度でその先が」と不安を洩らす。
現在、教員と学生には毎日、体温測定を徹底し感染防止に努めている。本来、授業は4時限制だが、1時限目は時差通学のため休講にしている。 ただし、講師には4時限分の支給を維持している。学生が戻ってきたときに講師は備えておきたいからだ。また、子どもを抱える講師は出勤しなくとも全額給与を支給している。役員の給与と賞与はカットする。
(2020.03.27 民団新聞)