掲載日 : [20-07-06] 照会数 : 13027
ヘイト文書配布の「フジ住宅」に賠償命令 大阪地裁堺支部
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[ [ オンライン集会で報告する村田浩治弁護団長(中) ]
当事者の内心の利益尊重
「在日は死ねよ」…東証1部上場企業、民族侮辱に賠償命令
【大阪】ヘイトスピーチないしこれに類する資料を就業時間中に社内で大量配布したり、特定の教科書採択運動に社員を動員していた東証一部上場の不動産大手「フジ住宅」(大阪府岸和田市)と同社の今井光郎会長(74)に対し大阪地方裁判所堺支部第一民事部(中垣内健治裁判長)は2日、連帯して110万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。同社に2002年からパート社員として勤務する在日3世の50代女性が、「精神的苦痛を受けた」として2015年8月31日、3300万円の損害賠償を求めて訴えていた。
訴状などによれば会社側は遅くとも2013年以降、「悪事を批判されるとすぐに『差別ニダ!』と大騒ぎする在日朝鮮族」といった記事や、「在日は死ねよ」といったネット上の書き込みなどを大量に印刷して従業員に配布。偏見や差別意識を植え付けたり、助長してきた。
原告側は「人種差別・民族差別的な言動にさらされない権利」を掲げ、同社が職場環境に配慮する義務を怠った違法性があると主張していた。
これに対して中垣内裁判長は、「文書は女性を念頭において書かれたものではない」としながらも、「原告のように韓国の国籍や民族的出自を有する者にとっては著しい侮辱と感じ、その名誉感情を害する」と指摘。「内心の静穏な感情に対する介入として、社会的に許容できる限界を超える」ため違法とした。
また、全従業員に対し、地方自治体における中学校の教科書採択にあたって戦争賛美の育鵬社の教科書が採択されるようアンケート提出などの運動に従事するよう動員したことも「業務と関連しない政治活動であり、原告の政治的な思想・信条の自由を侵害する差別的取り扱いを伴うもの」と違法性を認めた。
さらに、提訴直後の15年9月、「温情をあだで返すバカ者」などと原告を非難する内容の従業員の感想文を原告を含む全従業員に配布したことには、「原告が裁判を受ける権利を抑圧した」と断罪した。
弁護団を代表して村田浩治弁護団長は判決後のオンライン報告集会で、「原告の訴えを真摯に認めた。特に内心の利益を最大限尊重したことは評価できる。ほぼ完全勝訴といっていい」と語った。原告のA子さん自身も「私の気持ちに寄り添ってくれはったんだな」と感想を述べた。
フジ住宅側は「企業における社員教育の裁量や経営者の言論の自由の観点から、到底承服しがたい判決だ」として控訴を表明した。また、原告側も「フジ住宅側の文書配布行為が原告個人に向けられた差別的言動とは認めなかったことは人種差別撤廃条約及びヘイトスピーチ解消法の趣旨に照らして不当」などとして控訴する方針だ。
(2020.07.08 民団新聞)