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大韓民国の第18代大統領選挙（12月19日投開票）まで残り1カ月。12月5日から10日までが投票期間の在外選挙権者22万3557人（在外国民選挙人登録・国外不在者申告済み）にとっては、あと2週間を切った。3万7126人の在日選挙権者たちは、歴史的な1票にいかなる期待を込めるのか。各候補者は在外票の動向に熱い視線を注ぎ始めている。 ■□
在日の登録・申告者、永住者比率ダントツ Ａ 世界で223万余人とされる在外国民選挙の推定有権者のうち、登録・申告を済ませたのは22万3千余人だった。全体の1割ということになる。第19代国会議員選挙（4月）が12万3千余人だったので、ほぼ倍増した。在日の3万7126人も、総選挙時の1万8628人の2倍に限りなく近い。 Ｂ 終盤に入ってから、直系家族による代理申請、巡回領事制度や電子メールによる受け付けが可能になったことも後押しした。しかし、何よりも、国会議員選挙よりは一人の最高指導者を選ぶ大統領選挙への関心の高さがあった。それを素直に反映した数字だと思う。 Ｃ 総選挙時の2倍と言っても、当初の予想を下回ったのは否定できないのでは？ 4月総選挙の結果は得票率で与野党が拮抗した。大統領選挙も接戦は必至と言われてきただけに、時を追って関心が上向き、3倍増も可能との見方もあった。 Ｄ 登録・申告は7月22日から10月20日までだったのに、代理申請や巡回領事などが可能になったのが10月4日からだった。制度上の隘路については、総選挙の手続き時から再三指摘されていたことだ。関心はあるが手続きが面倒だと二の足を踏んでいた同胞も多い。早くから便宜向上を図っていたら、そんな同胞の尻をもっと叩けたのではないか。 Ａ 登録・申告数が多かったのは米国、日本、中国の順だった。在米は5万1454人で、総選挙時の2万2969人から2倍を上回る伸びを見せた。それでも、推定有権者86万6千余人の5・9％止まりだ。在日のそれは46万2千余人だから、3万7千余人は8％強に相当する。まずまずの健闘と言えるのではないか。 評価に値する民団の頑張り Ｂ 中国の登録・申告者は3万5630人。推定有権者が29万5千余人なので、比率は最も高い12・1％だった。ただ、在中の場合、在外選挙人は269人ときわめて少ない。圧倒的多数が一時滞在者だ。 Ｃ 全世界の22万3千余人のうち、一時滞在者による国外不在者申告が17万6千余人、永住権者による在外選挙人登録が4万3千余人。在日だけが逆で、不在者申告が1万6986人だったのに対し、選挙人登録が2万140人だった。代を継いで永住しながらも、韓国籍を保持している在日同胞社会の特異な現象と言える。 Ｄ 永住が代を重ねているからこそ、本国の政治にうとい。関心が強くても、国民の義務を果たしていないのに1票を投じるのは気が引ける、と語る在日も少なくなかった。しかも、在日永住権者の場合、旅券所持者の比率が他地域に比べて少ない。19歳以上で旅券を所持しているのは推定21万人ほどだ。在日の登録・申告者数はその17・6％に相当するわけで、かなり頑張ったと評価していいはずだ。 ■□
次の課題は投票率
接戦様相で重み増す…各陣営も在外に熱い視線 Ａ 登録・申告の結果について民団中央本部は、成功であったとするには足りないが、失敗だったとするには及ばない、としている。だが、最低の目標値には達したという安堵感はあるだろう。組織を挙げて取り組んできた成果と言っていい。で、次の課題は投票率だ。これをどう引き上げていくのか、対策に腐心している。 Ｂ 4月の国会議員選挙で投票した在外有権者は5万6456人、投票率は45・7％だった。国内の54・3％よりも低い。日本地域は9793人で、投票率は平均を上回ったと言っても52・6％止まりだった。大統領選挙となれば、世界各地で投票率が上がるのは間違いない。在日としては最低でも70％以上に持っていきたいところだろう。 Ｃ 4月の総選挙の場合、在外選挙の1票当たりに費やされた経費は13万9200ウォンで、国内の1票5900ウォンの23倍強だった。莫大な費用がかかっているのに、大統領選挙でも参与率が低いとなればやはり、肩身が狭くなる。 Ｄ それは大切な感性というか、観点だと思う。さっき、「国民の義務云々」の話をしたが、国内居住でも納税や兵役の義務を果たしたくとも果たせない国民は少なくない。在外国民選挙制度は、義務を果たせないからと言って国民でないことにはならない、国民の基本的で必須の権利を奪っていいことにはならない、という憲法裁判所の判断に基づいている。納税していないのになおかつ、国内をはるかに上回る血税を投入してでも1票を行使してほしい、そういう精神は重く受けとめるべきだ。 Ｂ 韓国では最近、在外国民を通じて韓国の経済的、文化的「領土」が広がり、韓国と居住国との善隣友好の土壌も耕されている、だから、在外国民の参政権を最大限に保障することは国家の道理だ、とする考えが広がっている。国民としての義務の果たし方は多様なはず。私たちの国政への1票は、在外国民として母国と居住国に貢献する、そういう自覚を強めていくものだとも思う。 70％水準なら15・6万票に Ａ 法的意義などにおいても経費においても、文字通り貴重な1票ということだ。であればせめて、投票率を引き上げることに全力を注ぎたい。22万3千余人の在外有権者の投票率が70％になると仮定すれば、15万6千余票になる。勝敗を決すると言えなくもないわけで、政治的にも貴重な1票になる。 Ｂ 07年の第17代大統領選挙こそ、李明博候補が鄭東泳候補に531万票の大差をつけたが、盧武鉉候補と李会昌候補が争った第16代は57万票差、金大中候補と李会昌候補が戦った第15代はわずか39万票の差だった。15万票ともなればかなりインパクトがある。 Ｃ 確かに。現在のところ、有力候補はセヌリ党の朴槿恵、民主統合党の文在寅、無所属の安哲秀の鼎立状態だ。これまでの世論調査では、3者対決では朴候補が40％代前半、文・安候補はともに20％代半ばの支持率で推移してきた。だが、文・安両候補が一本化して2者対決になれば、30万票前後の激しい接戦になるとの予想が多い。 Ｄ 有力3候補が在外国民票に熱い視線を送っているのも当然だ。朴候補と文候補は海外同胞組織とのつながりや人脈があるうえに、重鎮クラスを配置した特別チームを稼働させている。安候補はこの点で劣勢とはいえ、オンラインを使って在外投票を督励するキャンペーンを展開し、在外国民と画像やソーシャルネットワーク（ＳＮＳ）で対話するなど工夫を凝らしている。 微妙に動いた4月の在外票 Ｃ 4月総選での在外有権者の投票結果は、比例代表選挙ではセヌリ党が2万2646票、民主統合党の1万9757票を2800余票上回った。だが、統合進歩党8132票、進歩新党1302票を合わせると野党圏が6500余票多かった。在外選挙制度はセヌリ党に有利と言われてきたが、逆の結果が出た。 Ｄ 在外選挙人（永住権者）と国外不在者（一時滞在者）の投票結果は仕分けされていない。だが、在外選挙権者には永住権者より留学生や駐在員など若い層の一時滞在者が圧倒的に多く、それが野党圏優位に働いたと分析されている。 在外選挙人が投票できず、国外不在者だけが投票できた地域区の場合、セヌリ党が1万4996票、民主統合党2万2159票、統合進歩党2343票など野党圏が2万4502票だったことでもそれは明らかだろう。 ■□
一騎打ちか、三つ巴か
現象より本質見よう…不透明な野党圏の一本化 Ａ 3者対決になるのか、文・安両候補の一本化によって一騎打ちになるのか。いまだに不透明さが残っていて、有権者や世論の関心が各候補者の政策そのものよりも、一本化の動向に引き付けられている。現象にとらわれず本質を見つめる必要がある。 Ｂ 政策の違いで分かりやすいのは対北韓政策だ。朴候補は、対話・支援を拒まないが見返りを求める「相互主義」。文候補は、盧武鉉政府の太陽・包容政策よりも大胆な融和政策を提唱する。安候補はその中間で、太陽・包容政策の要素を取り入れながらも、本質的には「相互主義」と言えそうだ。 Ｄ 延坪島砲撃のような事態が再発した場合、朴候補は「あらゆる手段を動員して懲らしめる」、文候補は「挑発できないよう十分な戦力を確保する」、安候補は「比例性原則（相手の攻撃に応じた反撃）で対応する」というものだった。 Ｃ 単純に括らせてもらえば、柔軟な保守姿勢の朴候補、革新（進歩）路線が明白な文候補、中道的な安候補という色分けになる。2者対決に持って行くにはまず、革新と中道とで政策のすり合わせをしなければならない。例えば、北韓の人権問題で安候補は改善を促す立場だが、文候補はあいまいなままだ。これらの調整はそう簡単ではないはずだが。 Ａ 文・安両候補の一致点は「政権交代」だけと言っていい。それでも、政策については当面の妥協はあり得るだろう。だが、一本化方式に絡んで「政党基盤論」と「無所属論」が戦わされているように、政策以前の戦略次元で混迷している。 Ｄ 文陣営が「民主党のもとで単一化してのみ勝利でき、その後の国政運営が可能」と主張すれば、安陣営は「既成政党への不信は強い。無所属大統領こそ、国会尊重の姿勢を打ち出すことで、与野党を説得しリードするうえで有利」と反論し、民主党の刷新を要求してきた。 Ｂ 文陣営は民主党の組織力を生かせる、希望者による投票方式を主張し、安陣営は協議を先延ばしにして世論調査方式に持ち込みたい考えだった。だが、いわゆる進歩派には一本化への要求が根強く、民主党はかなり追い込まれていた。ここにきて、民主党は安候補の要求に応えるかのように、李海 代表ら首脳部が辞任し、文候補が党代表権限代行になった。その文候補が一本化方式は安候補に任せる旨を表明し始めている。 情報不足補う在日の見識を Ｃ 追い込まれていたのは安陣営も同じだ。受け取ったボールをどう返すのか、悩ましいのではないか。 安候補の強みを生かす最高のシナリオは、既成政党に対する不信感が強い無党派層をバックに、セヌリ党・民主党という2大政党の国会を二頭立て馬車に見たててその御者になることだった。しかしこの構想は、民主党候補との一本化協議を受け容れた段階で色あせ始めた。 Ｂ 安候補の支持層は流動性の高い無党派層だが、民主党候補との一本化には批判的な立場をとる潜在的な保守層も少なくないとされる。事実、安候補は「自分はどこまでも、保守勢力を抱えていく」と語ってきた。 Ｃ 文候補で一本化された場合、安候補支持票の一部は朴候補に流れるか、棄権する可能性が高い。安候補でまとまったとしても、民主党との関係が濃ければ同じことになるだろう。 Ｄ もし、民主党の党員になることがあるとすれば、安候補のそれこそアイデンティティーに関わる。保守的なメディアでもこの間、安哲秀現象は大統領選挙後の政治運営でも無視できないとして、初志を貫くためにも安候補は新党を結成すべきだと促してきたのは興味深い。 Ａ 朴候補は「国民の生活と関係のない候補一本化イベントは、国民の知る権利と選択権を侵害する誤った政治」だとコメントした。私たちは不本意ながら、一本化問題がどう落着するのか、それが選挙戦にどう影響するのか、鋭意注視しなければならない。 投票日が早い在外選挙権者は、立候補登録締め切り（26日）後に本格化する立候補者同士の政策論争に接する機会は限られる。情報不足を補う高い問題意識が求められるところだ。 ■□
まとめとして…政策広報に最善尽くす 各候補は近く海外同胞向けの公約を発表する予定です。しかし、同じ在外国民でも地域によって、あるいは永住者と中・長期滞在者とによって期待も要求も異なります。したがって、公約は総花的なものにならざるを得ず、在日選挙権者の意思決定を左右する内容にはなりにくいでしょう。しかも、在日選挙権者の、なかでも選挙人2万140人の大方の関心事は、韓日関係や対北韓政策を含む外交・安保分野に向いています。 本紙には、各候補の政策を在日選挙権者に分かりやすく紹介する責務があります。この座談会でも言及されているように、一騎打ちか三つ巴かで公約の内容や政策論争の様相も違ってくるでしょう。加えて、在日選挙権者には在外投票が始まる12月5日の直前までには情報をお届けしなければなりません。日程には極めて厳しいものがあります。ですが本紙は、万全の体制で、今月26日に確定する立候補者のうち有力候補とその政策を12月1日付で紹介する予定です。 （2012.11.21 民団新聞）
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