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訪ねてみたい韓国の駅<19>中央線 原州
学園祭のような雰囲気の原州迷路芸術市場。行き止まりや分岐が多く、まるで迷路を歩いているよう

過去と現在が共存する駅

 ソウル市東の玄関、清凉里駅から中央線「ITXセマウル号」で約1時間。江原道の玄関口、原州駅に到着する。原州は、古くから韓紙の町として知られる。郊外には韓国最大の製紙会社、ハンソル製紙が運営する総合リゾート、オークバレーリゾートがあり、安藤忠雄がデザインした美術館もある。

 2015年には、韓国観光公社の本社もソウルから移転。2018年平昌オリンピックのアクセス交通であるKTXソウル・江陵高速鉄道はここ原州市を経由して高速専用線に入るほか、嶺東高速道路と広州原州高速道路のジャンクションにもなっている。

 文化と交通の要衝地。そんなイメージがある原州だが、駅は意外なほどレトロなムードに包まれている。コンクリート製の駅舎は、1980年竣工。ソウルから1時間圏内の主要駅は多くがガラス張りの近未来的な駅舎に生まれ変わったが、ここでは70年代の風景が現役だ。清凉里と、栄州・安東・慶州方面を結ぶ列車が、1日約20往復発着している。

 「でも、来年か再来年、この駅は閉鎖されてしまう予定なんですよ」

 駅の観光案内所で、女性係員が寂しそうに言った。高速鉄道はひとつ手前の万鍾(マンジョン)駅で分岐し、原州駅は経由しないのである。在来線も近い将来、市の南を経由する新線に切り替わる予定で、今の原州駅はいずれ廃止される運命だ。市街地も、現在の市街の東側に「江陵革新都市開発地区」が建設中。韓国観光公社があるのもこちらで、現在の原州駅周辺は「旧市街」となりつつある。

 原州駅から東へ1キロほど歩いたところに、原州中央市場がある。1950年代に始まった在来市場で、生鮮食料品を中心に、生活雑貨、衣料などあらゆる生活用品が揃う。隣接して市民伝統市場や自由市場があり、江原道有数の商業エリアを形成している。しかし、1970年代に竣工した中央市場建屋は老朽化が進み、火災事故による改築などを繰り返した結果、通路が複雑に入り組み、極めてわかりにくい構造になってしまった。

 その「わかりにくさ」と「古さ」を逆手にとって、2013年頃にオープンしたのが市場2階の「迷路芸術市場」だ。あらゆる人に開かれた文化芸術空間で、若者を中心としたアーティストが集まり、手作り雑貨や体験工房、カフェ、居酒屋など約50軒の店舗が営業している。「迷路市場」の名の通り、通路は入り組み、行き止まりも多い。壁や床には手描きのアートが並び、高校の文化祭のような雰囲気を楽しめる。日本語が通じる店は少ないが、若い人たちがやっているだけあって、片言の日本語や英語でコミュニケーションはなんとかなる。

 自分の名前を刻んだ革製のブレスレットを作られる手工芸体験の店もあり、韓国の伝統工芸とはまた違った文化を体験できる。

 迷いに迷って、やっと見つけた階段を降りると、そこは韓牛を食べさせる食堂だった。江原道は韓牛の産地でもあり、市場には20軒近い焼肉店がある。ハングルが読めないと食堂であることすらわかりにくいが、香ばしい臭いに誘われて中に入ると、安くて極上の肉が待っていた。

 原州の町と駅には、過去と現在が共存している。原州駅が健在のうちに、一度は訪れてみたい。

栗原景(フォトライター)
(2017.12.08 民団新聞)
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