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現在、厚生労働省社会保障審議会では、次期財政再計算に向けた年金制度(05年度年金改革)全般にわたって議論が展開されています。しかし、内容は少子高齢化が進む中での年金の負担と給付に主眼が置かれ、無年金への救済対策は見えていません。
定住外国人に対しても
今回の審議会は、財政状態が悪化の一途をたどっている年金制度を抜本的に立て直すことにあります。社会保険庁は先日、昨年度の国民年金の納付率が過去最低になったとの調査結果を審議会に提出しました。そして、今年度に引き続き来年度の給付金額も減額されるようです。物価の動きにあわせて給付額を増減する物価スライド制としていますが、いずれにしても公的年金制度が財源難にあるのは間違いありません。従って私たちが要望している無年金定住外国人に対する救済措置に対しては、財政難を理由に難色を示すことは容易に予測できます。
しかしその一方で、今年1月から施行された「北朝鮮拉致被害者等支援法」では拉致されていた期間の国民年金保険料は国が負担しています。また脱北日本人妻に対しても北朝鮮滞在期間の保険料の一部免除を含んだ支援法を検討していると伝えられています。これらは、いずれもこれまでに日本人に対する特例措置、即ち59年の年金創設時の老齢者、あるいは返還当時の沖縄住民や、中国からの帰国者との相関性を考慮したものと思われます。
日本の公的年金制度は「国民皆年金」を精神にした制度です。その精神にもとづくからこそ無年金者を出さないために前述のような特例措置がとられたと思います。昨年、坂口厚労相が発表した無年金障害者に対する救済も、その一環だと思います。
歴史的な背景を考慮し
国民年金制度は82年の国籍条項撤廃によって、加入要件が「国籍」から「居住」へと改正されました。従って、定住外国人に対しても無年金防止の措置が施されるべきと考えます。なぜなら、定住外国人の無年金状態は日本の排他的な外国人政策によってもたらされたからです。定住外国人は納税の義務を果たしながら国民年金に入りたくても年金制度の枠組みから制度的に排除されてきたからです。特に在日1世は渡日を余儀なくされ、最も辛苦を背負って生きてきたのです。
現在、各自治体が独自の福祉手当として支給している「高齢者・障害者給付金」は、地域住民である定住外国人が健康で文化的な生活が営めるよう自治体が自主的に配慮した自主的な措置です。
従って、日本政府は論議している年金改革に無年金定住外国人に対する救済措置を必ず盛り込むべきであり、特に1世に対してはその歴史的な背景をかんがみ、日本国民と同じ老後を保障すべきではないでしょうか。
(2003.7.30 民団新聞)
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