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| 「愛しきトラヂ」の一場面 | | 映画への思いを語る全智愛さん | 自分の生き方をさぐって 3世・全智愛さんの映画大学卒業制作
日本映画大学(川崎市)を3月に卒業する在日3世の全智愛さん(23)が4年間の集大成として制作したドキュメンタリー映画「愛しきトラヂ」は、川崎市川崎区の同胞高齢者クラブ「トラヂの会」に集うハルモニと、日系ペルー人女性の姿を追った作品。世代も環境も異なる人たちとの触れ合いのなかで、自らの生き方を見つめる。13・14の2日間、イオンシネマ新百合ヶ丘(同麻生区)で、同大学の「第2回卒業制作上映会」が行われる。
毎週火曜日に開かれる「トラヂの会」は現在、約50人の高齢者たちが参加している。国籍は韓国・朝鮮、日本、ペルー、ブラジルなど。韓国民謡やカラオケなどを楽しんでいる。
全さんが「トラヂの会」に関わったのは、ボランティアとして参加した2014年から。
ハルモニたちとの会話を通じて、自分たちの世代が抱えている悩みと似ている部分があるのではないかと感じ取材を始めた。
最初に話を聞いたのは、幼少の頃来日したハルモニだ。自分の思いを伝えると「お前と一緒にしないでくれ」と一蹴された。生きていくだけで必死だったハルモニの歴史的背景も何も知らないまま、ただ知りたいという気持ちだけが先走っていたからだ。
「『お前に何が分かる』と言われたときにすごく反省した。私と同じ悩みとかを抱えていると思い込んでいた。いちからやり直そうと思って勉強した」
その後、ハルモニは「あんたは歴史を知っているから、ここまで話してあげよう」と全さんを少しずつ認めていった。「ハルモニと仲良くなって、歴史を学ぶことは大事だと感じたし、自分のなかで一番の成長だった」
今回、焦点を当てたのは20代のときに亡くなった父親に代わり、喫茶店で働き家族を養い、未婚のまま子ども2人を育てあげたイ・ヨンジャさん(85)。イさんは来日後、日本人男性と結婚した。
もう一人は74歳のとき来日した日系ペルー人3世の大城正子さん(85)。会うたびに「私は日本人なの? ペルー人なの?」と問いながらも、「日本人として生きる」と語る大城さんに「私は在日だが韓国人と言い切れるのか自分自身に問われている気がした」。
全さんはずっと日本の学校に通ってきた。大学2年まで通名を名乗る。名前も含めて、どうやって生きていけばいいか悩んできた。映像には韓国の祖母に会いに行った全さんが「私は韓国人ですか、日本人ですか」と問う場面がある。
「私の複雑な気持ちというのを、同じ思いを抱えている人たちと共有したかった」
全さんはイさん夫婦、大城さんと出会ったことで、これまで知らなかった夫婦や家族の形を知った。どちらも大きな愛に包まれていたと話す。
すでに就職の決まったドキュメンタリー制作会社で仕事も始めている。14年から民団の学生会や青年会で在日同胞とのつながりを深めてきた。将来の夢は、マイノリティの外国人や自身と似た境遇に置かれた人たちの悩みや問題を探りながら映像を撮る作家になることだ。その夢に向かって一歩踏み出した。
「日本映画大学 第2回卒業制作上映会」の詳細はホームページ(http://www.eiga.ac.jp/sotsusei/jimi02/)。
(2016.2.10 民団新聞) |
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