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<本紙記者座談会>戦略的利益の追求へシフト急げ…ほぐそう韓日関係
靖国神社に集団で参拝する超党派の議員たち(4月23日)

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弱まった抑制・修復機能
人脈や老練さに欠く

 A 韓日関係がこじれにこじれている。日本側がその発端と見る李明博前大統領の独島上陸から、この10日でまる1年が過ぎても、修復への確たる動きは見えない。

 金大中拉致事件(73年)、文世光事件(74年)と続いた70年代前半も、韓日関係は険悪だった。だがこれは、マスコミが国民感情を煽り合った側面が強い。政府間は比較的冷静かつ抑制的で、政治家による修復機能が働いていた。

 今回は70年代に比べて、マスコミのトーンもさほどではなく、市民レベルの反日、嫌韓の動きもまだ限定的だ。だが、政府間、政治家の間の不信や苛立ちが解消できていない。70年代ほど騒々しくはないが、深刻度は相当なものではないか。

 B 草川昭三公明党副代表の政界勇退に際してインタビューした。議員歴35年で、韓国や在日同胞と深く関わり、日韓議員連盟の中心メンバーだっただけに、草川さんが嘆いたのもそこだった。

 かつては、政府要人や大物議員にツーカーの間柄がけっこうあった。それが、日本の政界再編や韓国のあまりに早い世代交代があり、韓日ともに特異な政権が登場したこともあって、人脈が途絶えてしまった、と。

 C 人脈の問題だけでなくなったように思う。いい関係が築けないことも含めて、誰が「敵」で誰が「友」なのかの戦略的な観点を優先し、多角的な視野で考える老練な政治家がいなくなったのではないか。言い方を変えれば、老練さがそれぞれの国内で通用しにくくなったということでもある。

 A 韓日両国は経済的に密接不可分の関係にあるだけでなく、米国と同盟関係にありながら、中国を最大の貿易相手国にしている共通点がある。双方の政治家は口を開けば、価値観を共有できるアジアで数少ない国同士であり、東北アジアを核とする東アジアの平和と発展の両輪だと言ってきた。

刺激繰り返し火種に油注ぐ

 それにもかかわらず、双方の政治家やメディアが独島領有や歴史認識というすぐ燃え出す火種にとらわれ、国内向けの言動をしては相手国を刺激し合うことを繰り返してきた。共通利益の追求より、火種に油を注ぐほうが重要なはずがないのに。残念、では済まない。

 B 李大統領の独島上陸には伏線があった。慰安婦問題で韓国の憲法裁判所が政府に、「従軍慰安婦だった女性の補償問題に努力していない」のは違憲としたのが11年8月。この年の12月、京都での韓日首脳会談で李大統領は慰安婦問題を提起し、野田首相が「知恵を絞りたい」と応じた。

 だが、何らかのアクションがあったわけではない。独島上陸は、慰安婦問題に明確な態度を示さない日本に対する怒りだったと説明されている。

 C 独島問題で日本側の攻勢が強まっていたこともあっただろう。それでも、大統領自ら日本への怒りを表現するものだろうか。それも最も刺激する形で。李大統領は、盧武鉉大統領時代にギクシャクした韓日関係を修復しておきながら、自ら台無しにしたかっこうだ。

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韓国司法判断の波紋
国際法軽視は自傷行為…謀略勢力にスキ与えるな

 A 昨年12月に安倍晋三政権が誕生し、今年2月に朴槿恵政府が出帆した。関係修復への手探りが始まり、いい兆候が出始めた矢先の4月下旬、麻生太郎副総理ら4閣僚を含む168人の議員団が靖国神社に参拝した。しかも、これ見よがしに。韓中からの批判に対して安倍首相は「どんな脅しにも屈しない」と見栄を切ったばかりか、「侵略の定義は定まっていない」と発言した。今度は日本側が台無しにした。

あげつらってどうなるのか

 B 韓日関係について米国では最近、「ムービング・ザ・ゴールポスツ」と揶揄していることを日本の報道で知った。サッカーに例えたもので、お互いにゴールをずらしてはシュートをよけるので、ゲームが動かないという意味らしい。

 A 恥ずかしいね。どちらが先に因縁をつけたとか、どっちがより質の悪いことを言ったとか、もうやめにすべきだ。そんなことをあげつらって相手をやり込めたつもりになっても、一時的に溜飲を下げるだけで事態の悪化を招くに過ぎない。刺激的な発言を引き出しては特筆大書する双方のメディアの責任も大きい。先ほど「戦略的な観点」への言及があったが、韓日両国には今こそこれが求められる。

 B そうありたいと思っても、日本より韓国のほうが動きにくくなっているのではないか。慰安婦問題に対する憲法裁の違憲判決に続いて、大法院が12年5月、元徴用工の個人請求権は消滅していないとの判断を示している。これは、韓日基本条約とともに結ばれた請求権協定を否定するものだ。

 盧武鉉政府が請求権協定の見直しに手をつけ、慰安婦、原爆被害者、サハリン残留韓国人を協定の例外と規定した。そうした流れがこの数年で、司法判断という形で表れた。

 C 盧武鉉政府は確か、元徴用工については請求権協定に含まれているので、日本側に追加補償を求めるのは困難との見解だった。大法院はそれを超える結論を出したことになる。いずれにせよ、盧武鉉時代にまかれた種が難物に育って、朴槿恵政府の手足を縛る状況になったのは間違いない。

 B 朴大統領としては司法判断を足蹴にはできない。加えて、交渉が14年も続いたマラソン会談を妥結させ、韓日協定を結んだのが父である朴正熙元大統領だったことも影響してくる。「屈辱外交」だったとのイメージが今も残っており、これまでも政治的な謀略の対象にされてきた経緯がある。

 A だが、請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」したと協定には明記されている。韓国政府も「請求権保有者への補償義務は韓国政府が負う」との立場だ。大法院はこうした主張を、植民地支配を合法化するものであり、韓国憲法の核心にも真っ向から反すると否定した。

 C だが、韓日協定は国際公法上の正当な手続きによって、植民地支配を清算する基本法として成立してから半世紀になろうとしている。国際公法は守らねばならない。このまま成り行きにまかせるわけにはいかないはずだ。

 B 現代世界の平和はいろいろあっても、国際公法によって守られている。自らを守るためにもこれを順守しなければならない。慰安婦や個人請求権の問題でも、その前提に立つのが道理だ。この問題で見直されるべき点については、追加的、あるいは補正的な課題として位置づけられるべきだろう。そうすることで、解決の方途を見つけるほかない。

韓国揺さぶり平壌が触手も

 C それこそが朴槿恵政府のスタンスになるべきだと思う。韓国国民は慰安婦や請求権問題で、民族的な感情を先立たせてはならないし、ましてや、民族的な憎悪に変換させてはならない。それは決して、傷ついた人々の心の痛みを和らげることにならない。

 A そうだ。これらの問題はあくまで、普遍的な人権にかかわるものであって、政治的な謀略の材料にするべきではない。ところが現実には、日本や米国でも「韓国」を偽装した、平壌政権に付き従う従北勢力の介入がある。これを許さないためにも冷静かつ毅然とした姿勢が求められている。

 B つい最近明らかになったことだが、平壌政権は慰安婦問題について、韓国側の市民団体に「日本の反民族的、反人倫的行為を暴露・断罪する多様な連帯活動を展開する」ためとして、討論会の開催を提案してきた。これは何らかの形で実現する見通しらしい。

 C 狙いははっきりしている。韓国の国論をかく乱、分裂させ、韓日対立を煽り、朴槿恵政府を窮地に追い込むことだ。

 A それにしても痛感するのは、加害者側の記憶や意識は風化しやすいが、傷ついたまま癒されない過去事は生き続け、現在を左右するほどに力を持っていること、その力が真心から出るものか謀略によるものか、さだかには判断しにくいことだ。

 B 平壌政権の韓国に対する影響力や、韓国内の従北勢力の力量は、一時期に比べて小さくなったと言われる。だが、韓国は親米派に衣替えした旧親日派がつくった反民族的、反統一的な国家であるのに対し、北韓は抗日解放勢力がつくった民族自主の統一推進国家だという、歪んだ歴史観がかなり浸透している。

 韓国の産業化を率い、民主化をリードした伝統的な保守勢力を揺さぶる力を失っていない。韓日間で歴史認識の摩擦が強まれば強まるほど、平壌政権を勢いづかせる構造はまだ残っている。

 C 日本にも手厳しく注文しなければならない。従軍慰安婦に対する強制性と軍の関与を認めた河野談話(93年)や、植民地支配と侵略によってアジア諸国に多大な損害と苦痛を与えたことを謝罪した村山談話(95年)については、まずまずの評価が定着してきた。

理解できない談話見直し論

 それを事実に反するとか、不適切だとか言い、高位当局者や有力政治家、有力紙までが見直し論を平然と唱えている。韓国を怒らせ、嘆かせていることに痛痒を覚えないはずはないのに。

 B その点で興味深かったのが読売新聞の「『慰安婦』像設置」と題した社説(8月1日付)だ。慰安婦問題がこじれているのは、韓国などが河野談話を論拠にしているからで、見直しが欠かせないといった主旨だった。

 その一方では、「戦時中に多数の女性の名誉と尊厳を傷つける行為があったことは確かだ。現在の人権感覚で慰安婦が裁かれれば、日本は政治的に勝ち目はなかろう」ともあった。逃げ道を用意しながらも、問題性そのものは否定していない。

 C 日本でよく聞くのは、慰安婦を強制的に集めたことを裏付ける文書はない、という言いぐさだ。だが、文書の不在が事実の不在を意味するわけではない。問題性を否定しなかった社説のその部分をもっと敷衍すれば、日本側も本末転倒に陥ることなく、全体像に対する韓日の認識差を埋められるはずだ。

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歴史の教訓はどこへ
まず韓半島の平和…日中の力量を引き込み

 A いずれにせよ、敗戦・解放から68年、国交正常化から50年になろうとしているにもかかわらず、植民地時代に派生し今なお治癒されない諸懸案が、韓日関係を将来にわたって損なっていいわけがない。東北アジア共同体の形成を軸にした東アジア全体の平和と発展を追求するという、戦略課題への配慮から再構築されてしかるべきだと思う。

 B 北韓リスクを収束させる条件が過去のいつよりも整っているのに、肝腎な韓日中の政治的結束がともなわないのは残念でならない。

世界経済牽引期待忘れずに

 米国で韓日関係が「ムービング・ザ・ゴールポスツ」などと冷笑されている。歴史的な宿敵であり、互いにその国民性を罵倒し合ってきたドイツとフランスが蜜月関係を築き、今ではEU(欧州連合)をリードして世界平和に貢献している。そんな独仏も苦り切っているはずだ。韓日中3国には世界経済牽引の期待が強いだけに、首を傾げる国は多いだろう。

 C 韓日中3国が共同で対処すべき優先課題は、平壌政権の核武装を阻止し、北韓を改革・開放へと導き、韓半島に真の平和を確立することであり、平和的で民主的な自主統一の道を開くことだ。

 本紙の社説や論説で何回も強調してきたことだが、一時的な混乱や苦痛は避けられないとしても、太平洋と大西洋をユーラシア大陸が障害なく結んで物流事情を一変させ、極東ロシアや中央アジアの開発を促すなど、その波及効果は計り知れない。

 B 平壌政権について核廃絶とか、改革・開放についてだけ考えるのではなく、いわゆる急変事態についても対処方式を3国で講究すべきだ。陸続きの韓中だけでなく、日本も深刻な影響は避けられないのだから。個別利害でもめたとしても、この問題は別次元という発想が是非欲しい。

 A 韓国は韓半島問題、なかんずく北韓問題の第一当事者は自分たちであるとの、当たり前の事実を強く意識すべきだ。歴史的な失敗を繰り返さないためにも、自らの責任の大きさを自覚し直さねばならない。

 韓日の間に持病のようにある懸案の多くは、わが民族がかつて日本に植民地支配を許したことから発している。偏狭な自尊心にとらわれて、閉鎖的な封建社会から脱却し、近代国家を建設するという、当時の最も重要な戦略的民族課題を遂行できなかった。私たちが、もしまた、当面の戦略的民族課題の遂行に足踏みするならば、後日再び大きな禍根を残すことになりかねない。

(2013.8.15 民団新聞)
 

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