地方本部 HP 記事検索
特集 | 社会・地域 | 同胞生活 | 本国関係 | スポーツ | 韓国エンタメ | 文化・芸能 | 生活相談Q&A | 本部・支部
Home > ニュース > 参政権
<対談>「共生時代へ…」鄭進団長−冬柴大臣
韓日・在日の関係改善で意気投合した冬柴大臣(右)と鄭進団長
韓日共生時代の創造に向けて
<対談>鄭進団長−冬柴鐵三国土交通大臣


 民団中央本部の鄭進団長は冬柴鐵三国土交通大臣と対談し、韓日関係の改善や共生社会の実現には、市民レベルの交流拡大が重要であるとの認識をともにした。また、日本の敗戦と祖国の解放という明暗を、小学3年時に迎えた「同級生」は、朝鮮通信使400周年の意義と教訓についても大いに語りあった。

■□
観光交流の拡大

重要なのは草の根往来 冬柴
航空自由化を起爆剤に  鄭

長野五輪を支援

 鄭 小学3年の時に日本の敗戦を迎えた。1937年の早生まれだから大臣とは学年が一緒だ。私は在日2世として育ち、韓日の友好親善・共生こそ民団が取り組む大きなテーマだと思って今日まで活動してきた。

 特に、98年の長野冬季五輪の時、わが国はIMFという外貨危機に陥っていた。厳しい時代だったからこそ、長野県本部の団長として在日韓国人実行委員長を引き受け、日本の皆さんとともに先頭に立って五輪を盛り上げた。その後、フランスで開かれたサッカーW杯の時も引率団長として、在日と日本人のサポーター50人ずつを連れてフランスに行き、共同応援を陣頭指揮した。そうした流れもあって、02年の韓日共催W杯も大成功し、韓日関係は大いに深まったが、当時に比べると最近の両国関係は少しギクシャクしている。残念だ。

 冬柴 確かにそうだが、去年は212万人もの人が韓国から来ている。日本からは234万人が行き来した。政治がどうこうと言うよりも、私は両国間の長い歴史と一衣帯水という地理的関係からみても、関係はよくなっていくと思う。庶民が草の根で行き来する観光が一番大事だ。

 鄭 その観光の件では、大臣は今年早々ソウルを訪問し、韓日観光交流の拡大や国土交通分野における協力関係について、文化観光部長官らと意見交換したと聞いている。具体的な成果を聞かせてほしい。

 冬柴 今年初の外国訪問を韓国に決め、1月11、12の両日に当時の金明坤文化観光部長官と会った。人的交流の拡大と地域行事に対して両国が大いに援助・支援していこうということで合意したことが成果だ。

 また、両大臣で「日韓観光交流の夕べ」というものも実施し、観光業に携わる人など関心のある方にたくさん集まっていただく企画、例えば私が韓国に出向き、「どうぞ日本に来てください」ということをPRし、韓国の文化観光部長官には日本に来ていただいて、韓国に来てくださいというトップセールスをしようということも合意した。今月には大阪で世界陸上競技大会も行われるが、韓国からも大いに参加していただけるだろうし、文化交流などを通じて、日韓双方向の交流を活発にしたい。

 鄭 韓日間の航空チャーター便についても新しい動きがあったと聞いているが。

 冬柴 ソウルと釜山、済州島の空港からは日本の25の都市に1日に約60便飛んでおり、羽田、金浦間では1日8便が飛んでいるが、日本から定期便が出ているのは3空港だけで、大邱、光州、襄陽などの地域に空港はあっても定期便がない。

 定期航空路線がないこれらの都市にチャーター便を飛ばし、これまで日本人が訪れていないような北部の観光資源を巡るツアーや地方のお祭りへの参加、姉妹都市交流の派遣などに取り組む。これが「日韓相互通信使」事業で、広く一般から募集し、日本から4000人規模の交流・ツアーが実現することになる。

 鄭 とても夢のある未来につながる話だ。今後チャーター便が飛べば、大々的な韓日交流が可能になるし、8月2日に開かれた韓日航空会談では、首都圏を除く両国の全空港への相互乗り入れが自由化されることになった。韓流やIT技術に代表される今どきの韓国だけでなく、かつて「初めてなのに懐かしい」というキャッチコピーがあったように、古きよき時代の韓国も是非味わってほしい。韓日航空輸送路の増強は、韓日交流を飛躍的に発展させる大きな起爆剤になりそうだ。

 冬柴 例えば、雪岳山は襄陽を経由すれば近いと聞くし、その襄陽で開かれる松茸フェスティバルへの参加や、大邱と広島間のチャーター便を利用した姉妹都市交流事業「カラフル大邱フェスティバル」への参加も募る。また、ローカル列車乗車体験、民宿・民家宿泊体験、精進料理・田舎料理体験など新たな趣向の体験型ツアーもしていく。

地方をドル箱に

 鄭 韓日路線は96年が26路線245便だったのが、01年に31路線339便、そして06年冬期には函館―仁川、新千歳―釜山の新路線、福岡―釜山の増便などで34路線415便とうなぎ上りだ。地方へのチャーター便がドル箱路線になるよう民団としても本国との絆を深めるために本国開催の各種事業を継続展開していきたい。

■□
活発な相互通信使

善隣友好の英知学ぼう  鄭
北東アの平和にも寄与 冬柴

 鄭 ところで、江戸時代に朝鮮通信使が始まって今年で400周年を迎えた。通信使は壬辰・丁酉倭乱(文禄・慶長の役)という、当時としては世界でも大きな東北アジアにおける戦乱の後、様々な困難を克服して善隣友好の誼(よしみ)を結んだ画期的なものだった。

ウオークで再現

 冬柴 400周年を記念して、未来志向の日韓相互通信使を派遣・交換する事業を実施することも韓国側と意見が一致したもののひとつだ。韓国側は長官が代わったが、6月末に日・中・韓の観光大臣会合が中国の青島と大連で開かれ、新任の金鍾民観光部長官とも会い、その時にも朝鮮通信使の話が出された。

 鄭 民団としても朝鮮通信使が韓日関係をさらに深化させる象徴としてとらえ、まず機関紙の民団新聞を通じて歴史的意義を紹介する年間キャンペーンを張ったほか、全国の地方本部に呼びかけ、朝鮮通信使にゆかりのある自治体の開催イベントに積極的に協力した。

 冬柴 通信使は1607年から1811年までの間に12回、当時徳川時代の日本は鎖国政策をとっていたにもかかわらず、唯一朝鮮半島だけには窓口を開いていた。通信使の使節は1回で約400人位がみえたが、ソウル、慶州、釜山、違うルートでは大邱を通って、日本の対馬に渡り、長崎へ渡り、下関、広島、大阪、彦根、名古屋、清水や三島、小田原を通り江戸へ行き、徳川家康のお墓がある日光東照宮まで行くというようなルートを通った。この400年の佳節を慶祝する様々な行事が、韓国、日本それぞれの土地で催されている。

 鄭 通信使の足取りを再現する韓日・日韓友情ウオークが、4月1日にソウルを出発し、5月16日に東京・江戸城に無事ゴールインした。民団中央本部が後援し、韓日のウオーキング協会のメンバーを主体に、民団の団員もソウルから大阪まで一緒に歩いた。沿道各地では当該地の民団の同胞が一行を歓迎し、ワンデイウオーカーとして参加するなど、46日間、延べ2000人以上の韓・日・在日が大いに韓日親善の実を結んだ。

 日韓議員連盟の原田令嗣先生が音頭を取り、都内のホテルで開かれた16日の歓迎会では、NHKの毛利和雄解説委員が通信使の道のりを文化遺産にしようじゃないかと提案する一幕もあった。

 冬柴 46日間のウオークとは、それはすごい。大したもんだ。私たち国土交通省もこの間400周年関連事業を支援してきた。5月3日に開かれた「ひろしまフラワーフェスティバル」に通信使の記念パレードが参加、日韓総勢220人が当時の衣装や民族衣装で行進した。ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)韓国観光親善大使で歌手のユンナさんや広島の韓国総領事らが花車に乗り、文字通りパレードに華を添えた。

 静岡では5月19日から20日にかけて、通信使フェアを開き、通信使と韓国料理を味わえる飲食ブースを市民に紹介した。20日には「次代につなぐ善隣友好の輪」をテーマに、日韓交流親善シンポジウムを開き、通信使を「平和への信を通わす使者」として高く評価するとともに、日韓両国を「北東アジアの平和を切り開くパートナー」と位置づける静岡メッセージを発信した。

 鄭 北の核・ミサイル問題が、アジアのみならず世界平和に脅威を与えている今日、静岡メッセージの意義は大きい。現在の韓日関係にしても、一時のような険悪な状況を脱したとはいえ、まだまだ望ましいレベルには達していない。今こそ、私たちは通信使で善隣友好を構築した先人の英知に学ぶことで、韓日市民の交流、国と国の関係を一段とレベルアップしたいと痛感する。

 冬柴 通信使にまつわるおもしろい話も聞いた。対馬から遠路日光・東照宮までの間、行く先々で通信使の一行を日本人が熱狂的に迎え、壊れた道を直し、橋を架け替えたりしたという。通信使の先頭がチャルメラを吹いていたという話もある。夜鳴きそばのあのチャルメラだ。

言葉に残る足跡

 鄭 神輿をかつぐ掛け声の「ワッショイ、コラショ」も韓国語で、ワッショイはワッソ(来た)。コラショはコリョ(高麗)がなまったもの、つまり「高麗から来た」という説もある。

 冬柴 ほかにも、チングという言葉を安倍総理から聞いた。総理は何語か知らなかったが、山口では古い友達の意味で使っているという。漢字を調べてもらったら、「親旧」と書き、金長官から韓国語であると教えられた。通信使時代の言葉や習慣が残っているのは興味深い。

 鄭 民団は毎年、8・15光復節記念日を全国で開催しているが、東京では民団の創立大会が開かれた日比谷公会堂に2500人もの同胞が集う。

 このゆかりのある会場で9月30日、「江戸天下祭2007」の主要テーマとして、朝鮮通信使400周年を取り上げ、通信使シンポジウムが開かれる。民団誕生の地で通信使の歴史的・文化的意義が広く一般に紹介され、未来に向けた韓日関係につなぐことができるのは感無量だ。また、埼玉・川越の豪商であった榎本弥左衛門が江戸で見た通信使の華やかな行列に感動し、それが今日の氷川祭礼での町人の出し物「唐人揃い」として再現されている。川越城築城550年の今年は、11月11日に多文化共生・国際交流パレードとして蘇るという。多文化共生は民団が掲げる方針でもある。大いに期待している。

■□
開かれた社会目指し

「地域住民の権利」配慮を 鄭
参政権問題に尽力したい  冬柴

 鄭 訪日観光客を2010年に1000万人を達成するために、ビザの発給要件の緩和が必要だと大臣はいろいろな場で仰っているが、省庁との交渉状況はいかがか。

 冬柴 法務だけではなく、警察関係もあるし、それぞれの関係省庁との協議を今強力に進めているところだ。韓国については朝鮮通信使400年、日中については今年が国交正常化35周年ということで、文化、スポーツ交流年ということにもしているので、できるだけ日本に来ていただきやすくするように、ビザの発給等を現在よりも緩やかにする方向だ。

 鄭 北京五輪を来年に控え、中国との関係改善も重要だ。民団としては、東アジアの平和と発展のためにも韓日共生時代をつくり出したいと願っている。その担保として欠かせないものに、日本社会の多文化共生時代の実現があると思う。

 韓国は昨年、定住外国人に地方参政権を付与し、改革開放を推進しようとしている。日本も定住外国人に地方参政権を付与するなど、国際社会によりいっそう開かれた存在になっていただければと願ってやまない。

 参政権獲得運動にご尽力を賜った大臣にこの場を借りて感謝を申し上げるとともに、地域住民としての権利が実現されるまで今後ともサポートをお願いしたい。

 本日はご多忙にもかかわらずご出席いただき、感謝を申し上げる。国政での大臣のご活躍を今後も大いに期待する。

 冬柴 過去5回、参政権法案を提出した者として、思いは皆さんと同じだ。創立60周年を機に、民団がますます発展し、在日の人たちの求心体として活躍されることを切に願う。

(2007.8.15 民団新聞)
最も多く読まれているニュース
差別禁止条例制定をめざす…在日...
 在日韓国人法曹フォーラム(李宇海会長)は7日、都内のホテルで第6回定時会員総会を開いた。会員21人の出席で成立。17年度の報告があ...
偏見と蔑視に抗って…高麗博物館...
 韓日交流史をテーマとする高麗博物館(東京・新宿区大久保)で企画展「在日韓国・朝鮮人の戦後」が始まった。厳しい偏見と蔑視に負けず、今...
韓商連統合2年、安定軌道に…新...
金光一氏は名誉会長に 一般社団法人在日韓国商工会議所(金光一会長)の第56期定期総会が13日、都内で開かれた。定数156人全員(委任...
その他の参政権ニュース
韓日友好どう進める…日本与...
 今年は「韓日共同宣言」から20周年の節目の年に当たる。昨年秋には、韓日の民間組織が共同申請していた朝鮮通信使がユネスコの世界記...
<寄稿>平和の象徴朝鮮通信...
韓日国交正常化50周年記念共同でユネスコ遺産登録を善隣をより確かに…多彩なイベントで盛り上げよう 明けましておめで...
申請を1人でも多く…大統領...
在日の意思反映へ…団員ら、決意集会で確認 12月19日の第18代大統領選挙に向けた在外選挙人登録申請および国外不在...

MINDAN All Rights Reserved.