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大人のための絵本『ぼく、いいもの いっぱい』…子どもたちの葛藤心の叫び赤裸々に
韓国と日本の双方につながる出自を誇るロンイー君の作文
善元幸夫さん 1950年埼玉県生まれ。東京・江戸川区葛西小学校を経て東京・新宿区立大久保小学校で日本語国際学級を担当し2010年退職。現在は琉球大学や東京学芸大学などで非常勤講師を務めている。

編著・善元幸夫さん「現代の万葉集」

 文化的背景が異なる日本で、思い、悩みながら生きる子どもたちの心の世界が、東京の子どもの未来社から絵本『ぼく、いいもの いっぱい』(善元幸夫編著、丸山誠司絵)として出版された。この本は差別、偏見に苦しむ子どもたちの日本社会への問題提起といえる。善元さんは、「多国籍の子どもたちを中心とした作文だが、大人たちにこそ読んでほしい絵本。未来の子どもたちに伝える現代の『万葉集』」と話している。

異文化社会の中で生きる

 韓国、日本、中国、タイ国籍の9人がつづった作文12編を自由かったつな挿絵とともに収録した。作品は全体を通して一編の物語を紡ぐ構成をとっている。

 「ぼくの未来」と題した作文は、いわば問題提起だ。スポット君(タイ国籍、9歳)は作文を「ぼくは おおきくなったら (生まれた)タイにかえるかわかりません」という一文で結んだ。日本語ができず、このままでは未来がない、先が見えないという嘆きが伝わってくる。

 日本人を父に、タイ人を母に持つオーヤ君(日本国籍、11歳)の「冷蔵庫」と題した問いかけは重い。家には冷蔵庫がふたつあるのだという。大きいのはお父さん専用、小さいのはタイの食物を収蔵するため。「お父さんが、タイの食べ物はくさくて、きたないって」いうため。

 ロンイー君(韓国、9歳)は「ぼくは かんにほんじん(韓日本人)」のなかで、「にほんのおとうさんと、かんこくのおかあさんとであってぼくがうまれました。キムチとおなじです。いいものがいっぱいあるとおもいます」と書いた。この作文には初めて日本に来たときに友だちから「かんこくじん ばかやろう」といじめられ、傷ついた面影は感じられない。逆に自尊感情がほとばしっている。

 編者の善元さんは作文を読んで、思わず「震えた」という。キムチが中南米産の唐辛子と出会い、世界に広がった歴史を授業で取り上げた効果が見られたからだ。本書が誕生するきっかけとなった記念すべき作文でもある。

 絵本を締めくくるシャアさん(中国国籍、12歳)の「私のこと」は読後感がさわやか。

 「私はとても変な子かな? 私は友達と一緒に遊ぶのは楽しいです。私は一人ぼっちはなりたくない。だから、今、いっぱい友達を作りました。(中略)私は中国人だから、中国はとても好き、中国の食べ物、けいしきはすっごく好きだよ! 私は 自分のこと好き、自分は 私のこと大好きだ!」。差別と偏見をなくすためには、できるだけ早くから友だちになって、一緒に学んだり、遊ぶことがいかに大切なのかがわかる。

 本書は善元さんの7年間におよぶ日本語授業実践の集大成といえる。

(2014.5.28 民団新聞)
 

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