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今も生きる「日立闘争」 貧困・差別・抑圧の国際比較社会学
約300人の学生を前に「日立闘争」と日立入社後に見えてきた日本社会の実情を語る朴鐘碩さん
横浜国大の総合科目で採用
共生とは 授業のテーマに

 【神奈川】横浜国立大学で10日からスタートした総合科目授業「貧困・差別・抑圧の国際比較社会学」の第1回テーマとして、70年代初頭の「日立就職差別闘争」が取り上げられた。300人を収容できる大教室はほぼ満杯。学生たちは当時の裁判闘争を記録したスライドと当事者の朴鐘碩さん(56)の肉声を通して民族差別の過酷な実態を知り、あらためて衝撃を受けていた。

朴鐘碩さんが講演

 横浜国大の講座はアジアの国々の問題を取り上げながら「共生」とはなにかを考えるシリーズ企画。第1回「現代日本」は教育人間科学部国際共生社会課程教授の加藤知香子さんが、「高度成長期の日本社会と『貧困・差別・抑圧』への抵抗‐マイノリティーの位置から」と題して準備した。

 日本の高度経済成長のまっただ中、学校教育を終えていざ社会人としてはばたこうというとき、「国籍」という大きな壁にぶつかった象徴的な例が在日2世の朴鐘碩さんだった。新自由主義の風潮がはびこる現在の日本社会はまさしくこの「貧困・差別・抑圧」の時代の再来ともいえると言う加藤教授は、「誰もが朴さんと同じような当事者になりうる」と提起し、足元にある問題として現在における「日立闘争」の意味を考えさせることに主眼を置いた。

 スライド上映に続いて教壇に立った朴さんは、「40年近くも前のことなのに当時のことはいまでも鮮明に記憶している。自分はなんのために生まれてきたのか、こんな不条理は許されない」と裁判闘争を決意した経緯を述べた。さらに日立入社後に見えてきた日本社会の実情、その中で「人間らしく生きる」とはどのようなことなのかについて、自らの経験に照らして語った。

衝撃と共感が交差

 学生たちには朴さんのメッセージがストレートに伝わっていたようだ。

 加藤教授は「いままでの授業を振り返ってみても、これほど問題に真剣に向き合ったことはそれほど多くはない」と、提出された感想文を手に確かな手応えをつかんでいた。

 戸塚区出身で、バスに乗ってよく日立製作所の前を通っていたという学生は「意外に身近なところで差別が起きている」と、戸惑いを露わにしていた。

 そうしたなか、多くの学生たちが、民族差別に敢然と立ち向かった朴さんの勇気をたたえていた。ある学生は「差別が当たり前だった時代に自分から行動を始めた。朴さんはすごく勇気のある方なんだと思った」と話す。

 なかでも、在日4世というある女性は、「現在の恵まれた境遇」と朴さんの育った当時との違いに思いを馳せながら、「きょうの授業は感情移入せずには聞けませんでした」と、次のように心境を明かしていた。

 「私は友人や先生に国籍の話をするにも、抵抗を感じませんでした。私が国籍を負の境遇ととらえず生きていけるのは、朴さんをはじめとする上の世代の方々が社会に対して理解を求め、働きかけてきてくださったおかげだと感謝しています。未だに残っている就職差別(意識)を少しでも薄めることに少なからず義務感を感じています」

 また、在日中国人のある学生は、幼いころから日本の学校に通い、朴さんほどではないにしてもたくさんの差別を受けてきた。そのためか、朴さんの話には素直に共感したという。「朴氏にお会いできたのは、私の宝物です。私も差別や偏見と闘いながら頑張っていきます」と前向きだった。

 一方、韓国人留学生の男女は「在日同胞の存在は知っていたが、これほど厳しい環境の中で生きてきたなんて」と衝撃を隠せない表情で語った。 授業を傍聴していた当時の支援者の一人、崔勝久さん(63)=元「朴君を囲む会」事務局員=は「日立闘争とは何であったのか。いまの時点においてどのように捉えるのか考えることの重要性を知った。それは同胞青年にも言えることだろう」と感想を語った。

 この連続講座は前・後期の1年間を通して続けられる。

■□
「日立闘争」とは

 朴鐘碩さんは70年に愛知県の高校を卒業。地元の中小企業にしばらく勤めた後、新聞広告で見た日立ソフトウエア戸塚工場の採用試験を受け、合格。履歴書には通称名、本籍欄は愛知県と記した。会社側は採用通知を発送し、戸籍謄本の提出を指示。朴さんが在日韓国人のため戸籍謄本を取ることができない旨を連絡したところ、会社側は「一般外国人は雇わない方針だ。迷惑したのはこちらのほう」と一方的に採用を取り消したため70年12月8日、横浜地裁に提訴した。

 裁判の争点は2点。採用取り消しが労働契約成立後の解雇にあたるのかどうか、朴さんが韓国籍を隠したことを解雇の理由としたことが在日韓国人の歴史的な背景と民族差別の実態を考慮したときに合理性を有するのかどうか。提訴から4年後、判決は大企業による就職差別を断罪し、朴さんは「完全勝利」を勝ち取る。

 裁判闘争を通して朴さんは民族の魂を取り戻そうと韓国語の勉強を始め、民族的に生きる決意を固めていった。日立闘争をきっかけに「民族差別と闘う連絡協議会」が結成され、80年代の指紋押捺撤廃闘争へと運動がつながっていった。

(2008.4.16 民団新聞)
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