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<地方参政権>世論を喚起し 好機生かそう
地方参政権獲得へ各政党代表団(左)とエールを交換する民団代表団(01年6月)
日本の衆院本会議。9月25日の首班指名の模様
本紙記者座談会
11・7全国決起大会へ 民団力の総結集を

 民団は来る11月7日、永住外国人への地方参政権付与法案の早期成立を求めて、東京・日比谷野外音楽堂で全国決起大会を開き、街頭デモや国会陳情も行う。01年6月以来となる大規模行動は、運動を再構築するスタートとなる。11・7を前に、地方参政権問題をめぐる状況と焦点的な課題について、本紙記者が語り合った。

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緊迫の政局 どう影響

政治決断を誘引も
韓日関係成熟化もにらみ

 −−参院で民主党が第一党に躍進し、野党が過半数を占めた。衆参のネジレ現象、自民、民主の勢力伯仲など、政局はいつになく緊迫している。

民主党など野党各党は、地方参政権付与に基本的には前向きか好意的だ。与党でも公明党は推進姿勢を堅持している。参政権問題は、政局にとらわれ過ぎてもいけないが、かといって無視もできない。現政局は参政権問題にどう影響するのか。

運動進展した99年時と酷似

  与野党伯仲の緊迫した政局は、参政権問題を争点の圏外に引き出す可能性もないではないが、プラスに作用するのは間違いない。実際、国会で参政権問題が進展したのは、参院選挙で自民党が後退し、政局が大きく動いたときだった。

  確かに。参議院で自民が単独過半数割れになって、99年10月に自民・自由・公明3党からなる「自自公」連立政権ができた。翌年の1月には公明・自由の与党2党が、また7月には同じく与党の公明・保守が法案を提出した。現在の政治情勢はその当時と似ている。

  福田首相の考えはまだ明らかではない。だが、少なくとも小泉、安倍両政権時よりは柔軟だろう。首相自身も強調しているように、政権を運営するうえで公明党との結束、民主党との協調は欠かせない。

  自公連立から8年だが、公明党には譲歩してきた印象は否定できないとの反省もある。公明が弱者や庶民の目線から、本来の自己主張路線に転換して取り組めば、局面の転換はあり得る。また、衆院の動きが鈍い場合、民主党が主導してまず参院が採択し、衆院を追い込むことも可能になった。いずれにせよ、政治決断を促す環境は整ったと言っていい。

  自民、民主の「事実上の大連立」も取りざたされている。ものによっては、民主の法案を丸呑みすることだってあり得るという。ただ、2年前の総選挙と今回の参議院選挙で大幅に入れ替わったこともあって、参政権問題をよく知らない議員が増えた。要は参政権問題にどれだけインパクトを付与できるかにかかっている。

  政党別に見れば、自民党を除く各政党は党論として、積極的もしくは好意的な姿勢を示してきた。公明党は06年までほぼ一貫して法案を提出している。だが、民主党は基本政策で実現を謳っていても、若手を中心に反対もしくは消極的な議員も少なくない。その半面、自民党は党内に反対議連もあって、党全体としては後ろ向きだが、理解者も目立つ。

第3の開国へカジを切るか

 −−各政党の地方参政権問題に対する今後の姿勢は、再度洗い直す必要がある。しかし何よりも、支持議員を増やすだけでなく、反対しずらい状況をつくることだ。結局は、一にも二にも世論喚起ということになる。

  ここ数年、世論調査は行われていないが、7、8年前の全国紙の世論調査では、参政権付与に賛成が65・6%で反対が24・5%(読売99年3月)、賛成64%で反対28%(朝日00年11月)といった数字だった。

 内閣府の世論調査によれば、日本人の外国人の人権に対する意識は、93年を最善のピークに03年には最悪を記録したものの、今年の調査では改善されている。これから類推すれば、参政権付与の賛成・反対の比率に大きな変動はないだろう。

  賛成が2人で反対が1人という割合は変わるまい。しかし、問題なのは、賛成する人はおとなしいのに反し、反対する人は確信的であるうえに声が大きいということだ。

 参政権問題は例えば年金問題のように、生活に直接影響を及ぼすものではなく、一般の日本人にとって差し迫った問題とは認識されていない。そうした中で、反対者は「国民固有の権利」だとか、あるいは外国人排斥の立場から、「国体護持」の尖兵くらいの意気込みで脅しをかけてくる。議員個々人になると、参政権を声高に推進すると票に影響するだけでなく、場合によっては脅威を受けかねないとの懸念を持ちやすい。

  だからこそ世論を高め、それを確信的な支持層に固めていかなければならない。反対議連があるなら、推進議連があってもいい理屈だ。その際、国家戦略上の大きな問題と関連させることが肝心だろう。差し迫った問題としてより、日本の将来にかかわる重要問題の一環として世論喚起を図り、政治的な決断を促す環境を準備すべきだ。

  その点、アジア諸国の反発には耳を貸さずに靖国神社参拝を強行した小泉首相や、国家主義的な性向を「美しい日本」というフレーズで包んだ安倍首相に比べて、福田新政権は「自立と共生」を掲げ、「温もりのある政治」を唱えている分、期待がもてるのではないか。「第三の開国」論がいつの間にか下火になり、閉鎖的な国家主義が独り歩きすることへの懸念も強まっていただけに、軌道修正への力学が働く見込みもある。

韓国としても譲れない課題

  忘れてならないのは、99年に参政権問題が進展した背景に、その前年の10月、金大中大統領と小渕恵三首相とが「21世紀に向けた韓日パートナーシップ宣言」を発表し、韓日関係が大きく前進したことがある。

 金大統領はこのとき日本国会での演説で、在日韓国人が今後、日本社会により多く貢献できる立派な構成員となるためにも、地方参政権を早期に付与すべきだと強調した。これらのインパクトは大きく、小渕首相をはじめとして、多くの政治家が前向きに転じた経緯がある。

  韓国は12月に大統領選挙があり、来年2月には政権が交代するが、だからこそその新政権に向けても、我々の確固とした意思を示しておく必要がある。金大統領に続いて盧武鉉大統領も03年11月、日本の国会で同趣旨の演説を行った。それだけでなく、05年6月には公職選挙法を改正し、アジアで初めて19歳以上の永住外国人に地方参政権を付与した。

 地方参政権問題は日本の懸案であるだけでなく、韓国の政府・議会にとっても譲れない懸案だ。大統領が日本の国会で2度にわたって強調し、日本に要求するならばまず自らその資格を有すべきだとの判断から、国内の法整備を実行したくらいだ。当然、「今度は日本の番だ」という認識はある。新政権どうしによる最初のトップ会談で、一気に前進させたいものだ。

■□
「共生」は内外で潮流に

未来を真摯に問え
日本はアジアで範示す時

 −−福田首相は「自立と共生」を掲げているわけだが、これは民主党の小沢代表も15年ほど前から唱えていて、民主党の党是にもなっている。

  この言葉は80年代の指紋押捺制度撤廃運動の過程で、多文化共生社会を実現しようという理念から生まれたものだ。日本人識者の間では、その趣旨には賛同するが別な言い方はないものかといった論議もあった。が、結局はそのまま定着した。在日同胞の運動内部で育まれた社会的な言葉が2大政党の代表、首相の標語にまでなった。

 共生とは辞書によれば、「共に同じところで生活すること。異種の生物が相互に作用し合う状態で生活すること」とある。辞書が言う意味ではなく、社会的に付加された意味、それが持つ本来のメッセージをちゃんと把握し、率先して具体化する努力を抜きに使える言葉ではない。

  福田首相の所信表明では、「共生」の概念がはっきり見えてこなかった。「老いも若きも大企業も中小企業も、都市も地方も」と述べているだけで、国内向けの印象だが、小泉・安倍両政権よりアジア重視の姿勢ははっきりしている。

 福田氏は昨年のアジア歴訪で、アジアとの共存を打ち出した福田ドクトリン(77年8月)の継承、東アジア共同体構想の実現を加速するために、政治的な決断の重要性を打ち出している。中国との協調はもちろんだが、東アジア共同体の取っかかりとして、韓国とのFT締結は欠かせない。韓国重視論は再燃し、パートナーシップの再確立は焦眉の課題になる。

迷走の反対論現実的視点を

  小沢代表は「共生」について、国と国との共生にまで言及している。それ以上に注目されるのは、多くの反対論があるのを踏まえたうえで、地方参政権を憲法上・制度上、許容されるべきものと明確に宣言していることだ。

 韓日の歴史的な関係やFTを柱とする共同体構想が現実化することを見越して、両国が主権国家として存在する以上、地方参政権は政治論の側面からだけではなく、法的・制度的にも許容されるべきと主張している。

 −−ところで、中曽根元首相がインタビュー(朝日新聞07年4月29日付)で、「地方参政権は、在留条件や言葉など生活実態を見て認めることは、事柄により立法措置として可能」と言及した。

  それは中曽根氏が主催する研究所の憲法改正試案との関連で示されたものだ。現憲法は、自由権や自然権の主体を「何人も」とし、社会権や参政権については「国民」と使い分けているが、試案では「何人も」保障される範囲を社会権にまで拡充するなど、時代に合わせて憲法そのものの国際性を高める狙いがある。参政権付与は憲法改定が前提にはならない。中曽根氏の発言は、付与が時代の逆らえない流れであることを改めて確認したものと言える。

  参政権の憲法解釈について95年2月、最高裁判決が許容判断を下し、憲法論議には終止符が打たれている。関連法の文理解釈についても、論議は出尽くし勝負はついたと言っていい。

 この問題は、許容・不許容で見解が分かれる法理論の迷路に入るのではなく、憲法上も法理論的にも充分に許容される余地がある以上、国家戦略や地方自治の将来など、現実的な必要性から論じるべき性質のものに転換している。

  反対論者は反対のための反対に終始していて、法律の文理解釈にとらわれ、悪しき法実証主義、概念法学に陥っている。様々な杞憂の材料を並べ、重箱の隅を突っついているに過ぎない。

 地方分権の拡充という流れもそうだが、地方自治の充実は避けて通れない。自治体内に居住する外国人に、実質的に平等な人権保障を確立する内なる自治体外交はもちろん、自治体間の国際交流の必要性も高まっている。日本の国際化とアジアとの共生時代をにらんだ大局的な政治判断の必要性は高まる。

自治活性化へ貢献は明らか

  地域づくりに対する関心が低いわけではなかろうが、地方選挙の投票率は長期低落の傾向にある。地方自治の活性化や充実に向けて、様々な立場の住民が参与していくという意味でも、参政権の持つ意味は大きい。

  日本はかつて欧米列強に対抗するアジア主義を掲げ、それの悪しき換骨奪胎によってアジア諸国を侵略した。最近でも99年に東アジア共同体構想を打ち出しながら、その実、アジアには耳を貸さず国家主義的な傾向を強めてきた。日本はアジアに対して、誠心の交わりを体現すべき差し迫ったタイミングにある。参政権実現は格好のメッセージになるはずだ。

  反対派の人たちはおしなべて、日本は類例のない優れた国で、アジアで最初に近代化に成功したと自負する。なかには、アジアを欧米列強から開放する上で大きな役割を果たしたなどとうぬぼれる。うぬぼれはともかく、日本に自負を持つのであれば、今度こそ本当に、アジアの中心リーダーとして範を示す気概をもってほしい。

  地方参政権問題になるとそういう人たちは、与えている国は北欧やEU諸国、スイス、オーストラリアなどであり、英国の場合は英連邦加盟国(旧英領植民地)の出身に限られているとか、数の少なさや特殊性を強調する。アジアの先駆者を自認する人たちなのになぜ、一番茶を飲もうとしないのか。この問題では二番茶も三番茶も飲まないつもりなのだろうか。日本人のプライドからしても、世界の、アジアの範となるよう願いたいものだ。

「自立と共生」軸に向き合え

  民団国際局による自治体大合併後の最新統計によれば、参政権付与に賛同する意見書採択は51・6%。県議会採択率は76・6%、市議会採択率は78・0%だ。地域社会や国際社会の流れは有利な状況にある。

 加えて、福田首相も2大政党の一方の小沢民主党代表も、「自立と共生」というキャッチフレーズとともに、実際としてのアジア重視を掲げている。参政権付与問題を軸に、民主党と自民党が真摯に向き合う時期が必ず来る。

  盧武鉉政権と小泉・安倍政権下の韓日関係は、終始ギクシャクしていた。韓国の新政権との間で、韓日関係の大幅な改善が見込まれる。その韓国の新政権も懸案事項として継承することは間違いなく、日本は真面目に耳を傾けるほかない。大きな前進を図るチャンスが到来するだろう。

 −−11・7決起集会の成功が持つ意味は大きい。しかし、その一発だけで終えるのではなく、各政党や国会議員、オピニオンリーダーたちへはもちろん、地域社会での地道な働きかけに注力したい。参政権問題でご苦労いただいた政党や議員、あるいは市民団体のより積極的な意思を引き出し確定するとともに、韓国サイドからの効果的なプッシュを呼び込むことがポイントになるだろう。このような状況を可能にするには、繰り返し言って、要望する側の切実な声を集約し、支持世論の大きなうねりをつくり出すことだ。

(2007.10.10 民団新聞)
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