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「鄭香均訴訟」判決の意味 岡崎勝彦
岡崎勝彦(島根大学大学院法務研究科教授)
在日に反撃チャンス

 鄭香均訴訟で下された判決は、「公権力の行使等地方公務員」への任用を各地方公共団体の人事行政に委ねた。これはむしろ、地域からの反撃を可能にするもので、そのボールはいまや我われの掌中にある−−こう強調するのは、福井の地方参政権訴訟や東京都の管理職昇任試験訴訟で、原告側鑑定書を提出するなど、最高裁が今回の判決で依拠した「当然の法理」研究の第一人者である岡崎勝彦・島根大大学院法務研究科教授。

 岡崎氏は『最高裁大法廷の判決を読んで‐その「意義」と限界』と題して本紙に寄稿した。

 今回の最高裁判決は、明文規定がないにもかかわらず、半世紀にわたって「在日」の公務員就任・昇任問題に厚い壁となってきた「当然の法理」(公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わる公務員には日本国籍が必要)の「行政解釈」に、初めて憲法解釈を下すはずのものであった。

 しかし、最高裁はその判断を回避した。岡崎氏は寄稿で、「多数が多様な仕事をしている東京都がその人事裁量権に基づき、すべての管理職から一律に外国人の受験機会を排除することの適法化を、現下の右翼的な潮流」に押され、最高裁は「政治目的のために『禁じ手』を使った」と断じた。一つは、「当然の法理」にいう各制約基準をより限定するものではなく、「公権力の行使等地方公務員」との造語に見られるように、各キーワードをそのまま包括することによって実質的法治主義の要請に反し、「法理」を単なる排除のためのより広範な運用基準として再生を図ったこと。

 もう一つは、人事行政の裁量権を容認したことだ。判旨は、行政裁量によって外国人の公務員就任権を容認する一方で、管理職を含む「公権力の行使等地方公務員」への就任は「原則として」日本国民を「想定」しているとした。「管理職に就任させても違憲とはならず、都のように就任させなくても合憲とされ、各自治体の裁量に委ねたに過ぎない」。岡崎氏はこう指摘した上で「人事権は立法裁量から行政裁量へ」「例外を原則に、逆転しよう」と訴える。

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寄稿

「禁じ手」使った最高裁
「原則」と「例外」逆転しよう

東京地裁判決は国民主権前面に

 最高裁判決に期待されたのは、明文による一般的禁止規定がないにもかかわらず、半世紀にもわたり「当然の法理」という名において、この国での生活上の基本的利益に関わる職業選択の自由、幸福追求の権利を違法に侵害してきたその「行政解釈」にはじめて、大法廷による憲法解釈が下されるということであった。

 96年5月、川崎市は同「法理」を前提としつつも、独自にそれに抵触しないとする範囲内(‐男豹Δ鮟き全職種で募集、∈陵儻紊慮⇔賄処分や管理職での決裁権の有無)での就任資格を認め、採用後の任用資格において国籍要件を設け、例外であった採用を原則とした。この間の各自治体の動きはこの「川崎方式」を踏襲するものである。

 「川崎方式」発表の3日後、本件東京地裁はそれを封じ込むかの如く、外国人の人権保障の対抗軸として、最も伝統的で排他的理解と解釈による国民主権論を「制約原理」として持ち出し、任用を立法事項とした。また、地方は「国の統治機構の不可欠の要素」なのであって、永住者についても特段に考慮できないものとしている。

「川崎方式」追認後押しした高裁

 これに対し東京高裁は、正当にも、公務員への就職が職業選択の自由(憲法22条)、法の下の平等(14条)のほか、幸福追求権の権利(13条)を加えて人権保障の領域に直接位置づけることにより、かの国民主権論をして外国人の公務員就任権保障との「調整原理」として位置づけたのである。外国人住民にあっても、特別永住者等の「特段に密接な関係を有するものについて」はその意思を「反映させ、また、自らこれに参加していくことが望ましい」ものとした。

 高裁は「川崎方式」を追認しただけではなく、同方式への流れに一層の勢いを与えることになった。

意図的な政治目的のために

 今回の最高裁大法廷判決については、多数意見(13人)は概ね東京地裁の判旨に同調するものであった。他方、少数意見(2人)は東京高裁の判旨に概ね同調したものといえよう。

 在日をはじめとする外国人の集住地域であって、しかも多数の者が多様な仕事をしている東京都がその人事裁量権に基づき、すべての管理職から一律に外国人の受験の機会を排除する人事委員会規則の適法化を、現下の右翼的潮流に押されて、図るという政治目的のために、本判決が使った「禁じ手」をみておかねばならない。

「当然の法理」新たに再生図る

 第一に、「当然の法理」のことである。かねてよりその制約基準としての「広範性・抽象性」ゆえに、「限定的・具体的基準」への再検討が求められ、広義説や狭義説等の法理上の工夫がなされ、実務上もその積み重ねが蓄積されてきたところである。しかし、本判決は、「当然の法理」にいう各制約基準をより限定するものではなく、「公権力の行使等地方公務員」という、造語にみられるように、各キーワードをそのまま包括することにより、実質的法治主義の要請に反してまで、すなわち、立法措置がない場合にそれにかわり得る「法理」ではなく、単なる排除のためのより広範な運用基準として、新たに再生を図ったものといえよう。

 第二に、合憲性の推定が働く「合理性基準」を使ってまで、人事行政裁量権を容認したことである。東京地裁判決は、現行法上一律に外国人の任用を否定するものとの特有の解釈を施し、任用に際しては新たな特別立法を求めていた。それに対し、本判決は、地方公務員法が欠格条項に国籍要件を課していないことについては、無視しつつも、「任命することができるかどうかについて明文の規定を置いていないが、地方公共団体が、法による制限の下で、条例、人事委員規則等の定めるところにより職員に任命することを禁止するものではないもの」とした。

 この判旨は、制限立法がないところでは、行政裁量に委ねられており、外国人の就任権を容認するものである。

 他方で、管理職を含む「公権力の行使等地方公務員」への就任は、「原則として」日本国民を「想定」しているものとする。判旨によれば、外国人の就任を許容している法律が制定されているわけではないので、著しく社会通念に反しない限り、人事裁量権による措置は制限されず、例外として就任させても違憲とはならず、また、東京都のように就任させなくても合憲とされる。任用については各自治体の裁量に委ねるというものなのである。

 かくて、現実論として、「公権力の行使等地方公務員」への任用は、唯一の立法機関である国会の立法裁量に一方的に、委ねられるのではなく、定住外国人をはじめとする地域「住民の福祉の増進を図る」(地自法1条の2)砦としての数千にもおよぶ各地方公共団体の人事行政に委ねられているといってよい。原則と例外の逆転にむけた地域からの反撃のノウハウは住民投票条例をはじめとして、数々の実績のあるところである。これが、反撃のボールは今や我々の掌中にあるとされる所以である。

(2005.2.23 民団新聞)
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