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余りに異様 狂牛病騒動
ソウルで連日繰り広げられている米国産牛肉の輸入再開反対のデモ
正論通らずデマ拡散
ネット社会の病巣またも

 韓国が米国産牛肉の輸入再開問題で大揺れだ。問題の本質であるBSE(牛海綿状脳症)に対する検証はおろか、まともな論議もないまま、輸入反対デモが連日数万人単位で繰り広げられ、政府の対応のまずさもあって、ついには「大統領退陣」を求めるスローガンまで登場した。BSE問題の「先進国」日本ではとても考えられない事態だ。その背景には何か強い政治的な「意図」が働いているように見える。「月刊焼肉文化」代表・朴健市

「反保守」に踊らされた?
科学的な判断材料で論議を

はっきりせぬBSE感染源

 そもそもこのBSEだが、肉骨粉をはじめとする動物由来の飼料と幼牛用の粉ミルクが感染源だとする説が大勢を占めているが、まだはっきりと確定しているわけではなく、牛のいるところにはBSEがつきものとする説が最近では大勢になりつつある。

 BSEの患畜は昔から発生しているといわれる。世界中に認識されるようになったのは1990年代末期に英国で大量に発生、牛がバタバタと膝を屈して立ち上がれない場面がテレビを通じて放送され、英国ではこのBSEに感染して死亡した人が百数十人も出た事実が発表されてからだ。

 日本や韓国で問題になったのは、01年に米国でBSEの患畜が発見され、両国とも米国産牛肉の輸入を禁止してからで、再開に当たっては両国とも月齢制限を設け、BSEの元となる異常プリオンが蓄積しやすい「危険部位」の除去が義務付けられた。

 日本では米国産などと違って肉をやわらかくするために丁寧に肥育する和牛からもBSEの患畜が相次いで確認されているが、韓国ではまだ1頭だけだ。しかし、先述したようにBSEは昔から発生しており、日本でも韓国でも患畜は散在していると見るべきだろう。

 その日本でもBSE感染者はいまだに一人も出ておらず、韓国でも出ていない。韓国の場合、異常プリオンのたまりやすい牛の脳、脊髄、腸を好んで食べてきた。韓国の国民食ともいえる「ソルロンタン」などは、牛1頭の頭をまるまる長時間煮込んでスープを作る。焼肉店では脊髄の刺身や腸を焼いて食べるのは昔ながらのことであり、定番化している。

 輸入が禁止される以前は米国産牛のこれらの部位が数多く使われたはずだが、問題になった事例は聞かない。日本でも韓国でもBSE検査を徹底し、また米国産牛肉に関しては危険部位を除いたことから、消費者が安心して食べているのが現実だ。昨年7月に韓国が米国産牛肉の輸入を再開した際、その肉を販売したデパートなどに消費者が殺到し、どこの売場も瞬く間に売り切れてしまったのはいったい何だったのか。

 韓国のデモ事態がここまで発展してきたのには「拙速輸入」と政府の対応のまずさにあるのは間違いないが、ネット社会の病巣と大統領選挙と総選挙で大敗を喫した勢力の思惑が相乗りしたといえるのではないか。

不安心理煽る愉快犯の手口

 最初のデモを呼びかけたネット主宰者は、昨年の大統領選挙以前から現大統領を批判しつづけてきた勢力である。前政権時代のデモの写真をあたかも今回かのように偽ってネットに流し、デモを増幅させた在米韓国人、そして「怪談」を流しつづけ不安心理を煽った人たちの行為は「愉快犯」そのものだ。

 韓国は世界有数のネット社会で、ネットによる攻撃で芸能人を自殺にまで追いやる輩もいる。今回の事態は、ネット社会では正しいことよりも不安と恐怖を煽るデマが人々を引きつけ、行動に駆り立てやすい、そんな姿を浮かび上がらせた。

はるかに有害成長ホルモン

 BSEの問題は、まずは徹底した危険部位の除去を通じて解決するのが先決だ。BSEを問題にするのであれば、これは日本にもいえることだが、米国産牛肉に使用されている「成長ホルモン」の方がはるかに有害なことを認識すべきだろう。

 米国でなぜ、土壌を4〜5年もかけて改良し、自然の牧草だけで肥育するオーガニックナチュラルビーフ、そして自然の牧草で抗生物質も成長ホルモンも使用せずに肥育するナチュラルビーフが人気を博すのかといえば、成長ホルモンには発ガン物質をはじめ人体に害を及ぼす様々な作用があるからだ。また、欧州各国が米国産牛肉に関してはホルモンフリーの肉しか輸入を許可していないのもそのためだ。

 狂牛病騒動に韓国の恥部を見る思いがする。より科学的で冷静な論議を通じて正しい判断ができる材料を提供し合い、異常な事態を1日も早く沈静化してほしいものだ。

テレビ番組の流布が発端に

 今回の事態は、4月末に放送された人気テレビ番組「PD手帳」が、牛を原料に含む化粧品や生理用品を使うとBSEに感染、韓国人の95%がBSEに対して弱い体質を持っているとの説を流布したことが発端だった。

 この説がネット上に流され、それに対して「キスをするだけでBSEに感染する」などといった様々な「狂牛病怪談」がネット上を駆け巡った。あるネット主宰者がローソクデモを呼びかけたのをきっかけに、デモが連日のように繰り広げられ、参加者は政治的な関心も希薄な中高生、主婦ら一般市民に加えて野党各党、労働組合の関係者までが合流、一大「国民運動」にまで発展した。

 最大の要因はやはり政府の拙速な対応だろう。4月中旬に李明博大統領は就任後初めて米国を訪問したが、韓米間の懸案であった米国産牛肉の輸入解禁を訪米前に発表、それも事実上の全面解禁という完全に米国側の要求を飲んだ形であった。

 大統領からすれば、前政権下でギクシャクとしてきた両国関係の修復、そして最大の懸案であるFTA(自由貿易協定)批准への「お土産」のつもりだったのだろう。が、これに元々米国産牛肉の輸入解禁、FTA締結に反対してきた勢力が「拙速輸入」と批判、それと先のテレビ番組が流した「狂牛病怪談」とあいまって国民感情に火をつけた格好になった。

 李大統領は3日の閣議で「多くの国民が心配しており、また望まない限り、生後30カ月以上の米国産牛肉を輸入しないのは当然のこと」と述べ、生後30カ月以上は輸入対象から外すとの意向を明らかにした。その後もデモは収まってはいないが、問題の焦点は30カ月以上の対応に移りつつある。

 韓国の米国産牛肉輸入業者は大統領の意向を受け、30カ月未満の牛肉だけを輸入する立場を表明、農林水産食品部長官も、「生後30カ月以上の牛肉については、すべての部位の輸出を中断してほしいと米国に要請した。米国側が生後30カ月以上の牛肉に対し、すべての部位の輸出を中断するまでは、輸入条件についての告示は行わない」と明らかにした。

 一方、タイソン・フーズなど米国の大手食肉輸出企業も3日、韓国で広まっている狂牛病への不安を払拭させるため、最大で120日間は韓国に輸出される牛肉に「30カ月未満」「30カ月以上」を明確に表示する考えを表明、両国間ではすでに米国の輸出企業が自主的な枠組みを設定し、生後30カ月以上の牛肉は輸出しないよう自主規制する案の検討に入った。

 これら一連の動きは、今回の事態に便乗して政府批判を強めてきた野党各党と各労働組合の要求である輸入解禁の告示取り消しと30カ月以上の輸入禁止にも合致するものだ。それはともかく、今回の事態がなぜここまで発展してきたのか、釈然としないものが残る。

 そもそもの発端であるテレビ番組の韓国人の95%がBSEに弱い体質だとの説は、実際の科学的な分析による結果なのか。韓国のBSE専門家は明確に否定しており、ある大手新聞の社説では「デマを信じても専門家の発言を信じない」とデモ扇動を批判している。

 さらには、なぜ生後30カ月以上の輸入は反対するのかという点だ。日本では米国産牛肉は生後20カ月未満に限定している。日本で生後21カ月と23カ月の牛からBSEの陽性反応が出たからだ。BSEへの感染を恐れるのであれば、生後20カ月未満であればBSEにかかりにくいという説にしたがって、日本と同様な月齢制限を求めるべきだろう。

(2008.6.11 民団新聞)
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