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<寄稿>百婆仙 苦難の生涯を思う…久保田 均 ギャラリーペクパソン館長
ギャラリー ペクパソンの一室
有田焼400年の礎に
「平和への祈り」こそ真意


 昨年は有田焼創業400年の節目であった。李参平翁が1016年、有田の泉山で磁石を発見して以後、400年間の発展を祝賀する年で、17世紀半ばにヨーロッパを席巻した有田焼の栄光を再びとの願いを込め、これからの有田焼の発展を期する1年でもあった。

 そのような華やいだ取り組みの中で、忘れられそうな百婆仙(ぺクパソン)の存在をつないで行くために、昨年2月にギャラリーペクパソンを開設した。彼女の没後360年目に当たる命日の1カ月前だった。

 百婆仙は1656年に96歳でなくなったが、彼女の人生を想像すると胸が熱くなる。彼女の存在を示すものは、有田、報恩寺の墓碑に刻まれた百婆仙の文字。優和で一族のリーダーであったと記されているのみだ。

 1593年に文禄の役(壬辰倭乱)が休戦すると、33歳だった百婆仙は夫の深海宗伝や一族と共に撤退する鍋島、後藤家宣に連れられ日本にやって来た。領主後藤家宣の庇護のもと武雄廣福寺の近くに逗留、やがて小峠に窯場を与えられ、焼き物を焼く。

 夫はこの地で亡くなり、百婆仙は一子平太郎と一族を守りながら70歳ころまで窯を営む。やがて磁石の発見された有田に一族と移り、有田焼の草創期を作って行く。

 平太郎には9人の子どもが生まれ、以後名高き陶工も輩出、現在の深海家に続いている。老いた百婆仙は、多くの孫やひ孫たちに囲まれていたと思われるが、異国の地に生きた彼女の波乱の生涯に思いを馳せ、感謝を捧げたい。

 帰ることのできなかった故郷への絶ち難い望郷の念や、子々孫々の安寧を願う老いた彼女の心にあるのは、二度と戦のない平和への祈りではなかったろうか。

 百婆仙の出身が韓国慶尚南道金海市と知ったのはごく最近だ。知った瞬間、私は強い衝撃を受けたのを覚えている。私は有田で生まれ育った。米作りを生業にし、町会議員になって今年で7年目になる。実は、私は金海市にある仁済大学の学生と20数年前から交流している。毎年正月に一週間ほどホームステイして、日本の田舎の正月を楽しんでもらうのだ。

金海市との不思議な縁

 私にとって金海市は、いつの間にか子どもたちの住む町になっていた。その金海に日本に連れてこられるまでの百婆仙が住んでいたことを知らずに、子どもたちに伝えてこなかったことを後悔した。それから、有田焼の母といわれる百婆仙の存在をもっと広めようという思いが膨らんできた。 有田焼創業400年を迎えた昨年、釜山出身で佐賀・嬉野市在住の陶芸家、盧眞珠氏の協力を得てギャラリーを開いた。名前はもちろんペクパソン。世界初の女性セラミックアーティストとして讃える為に命名した。

 オープン記念展として韓国女性陶芸家2人展を開催、5月の陶器市期間中は日韓陶芸家10人の交流展を開催、10月2日には許成坤金海市長一行10人がギャラリー訪問、同じ10月に韓国金海市主催の金海粉青陶磁器祭りに参加した。

 今年の陶器市期間中は金海陶芸協会会員展を開催し28人の会員が来館、多くの来場者も迎えることができた。残酷で空しい戦争の中を生き延びた百婆仙の存在を世界初の女性セラミックアーティストとして讃え、シンボルとして蘇らせたい。

 今年の金海粉青陶磁器祭りには、有田の郷土踊り『皿踊り』を披露する予定だ。帰郷できなかった百婆仙や多くの朝鮮人陶工たちの魂と金海に渡り、一緒に踊ることが叶ったらと思っている。協力してもらえる踊り子さんを募集中である。

(2017.6.28 民団新聞)
 
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