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<解説>参政権問題 反対の論拠総崩れに
外資系も政治献金の時代

 永住外国人への地方参政権付与法案をめぐる論議は出尽くし、反対派の論理は時を追って根拠を失ってきた。ここでは憲法解釈の再整理と、それに関連して反対派が現在も強固な論拠と考えている問題に焦点を当てる。

未だに続く安保杞憂論

 国会の政治倫理・公職選挙法改正特別委員会(倫選特委)での直近の審議(04年11月)で、「日本と敵対する国の国籍を持つ永住外国人が、選挙権を行使して国と地方の協力を阻害すれば、日本の安全が脅かされる」といった、有事における想定論が展開された。牢固とした保守層に受けのいい杞憂論として無視できない。

 地方参政権について憲法学説には禁止、要請、許容の3説がある。禁止説は、公務員の選定・罷免権は国民主権の帰結であり、地方参政権といえども日本国籍者に限られるという立場だ。要請説は正反対にあり、民主主義における住民自治の理念から、日本人と同じ参政権が保障されていると解し、付与しないことを違憲とする。

 許容説は最高裁が95年2月の判決で採用したもので、「住民」については禁止説と同じく、「日本国籍を持つ住人」としながらも、永住者の意思を日常生活に密接に関連する地方公共団体に反映させるべく、選挙権を付与することは憲法上禁止されていないとする。要は立法上の問題に預けた格好だ。

 この許容説は、別件訴訟の「判決理由」に付随する「傍論」で示されたものとはいえ、実質的には法的な先例拘束性がある。参政権問題について直接論じる判決でも、最高裁の許容説は動かしようがないからだ。最高裁も付与推進の政党・議員たちも、地方参政権によって有事の際などに不都合が仮に生じても、その上位にあって国民を代表する国会、つまり国権の最高機関が定めた法律の範囲内で運用・管理できる、との法理上の判断がある。

政治資金法改定の意味

 地方参政権問題を扱う倫選特委で昨年、自民・公明・民主などの多数で政治資金規正法が改定され、外資企業による政治献金が解禁された。これは、外資50%超の企業でも「連続5年上場の国内法人」が対象となる。それまでは、国政が外国の勢力によって影響を受けることを未然に防止するために、外国人持ち株比率が50%超の法人は規制対象だった。

 改定については、「国家主権が侵害され、国民主権と国民の参政権保障が歪められる」といった反対論が展開された。推進派はこれに、「株主の利益、会社の利益に反して特定の外国の利益を図っての献金を行うというようなことは、想定していない」と反論した。要するに、国政への影響懸念から規制対象であったものが、わずかに「連続5年上場」というフィルターを通すだけで解除されたのである。

 この論議の是非はともかく、これを参政権問題、なかでも有事の杞憂論に関連付けると実に興味深い。論じられたのは、一方は「連続5年上場」の外資大企業の国政に対する直接的な影響であり、もう一方は、確固とした地域住民であるが弱者である永住外国人の国政への間接的な影響だ。軽重は自ずと明らかである。

 献金解禁の推進論を参政権問題に転用すれば、「地域住民個人としての利益、地域の利益に反して特定の外国の利益を図って参政権を行使することは、想定していない」となる道理である。

 政治資金規正法の改定には、例えばキヤノンなどは政治献金ができず、時代の流れと法律が矛盾する、といった日本経団連(会長はキヤノンの御手洗会長)の要望があった。地方参政権についても同様のことが言える。地域社会ですでに重要な活動主体となっている永住外国人を、参政権から排除することは地方自治の活性化、充実化が日本の国際化と発展に不可欠という現実に真っ向から背反するからだ。

 定住外国人に地方参政権を付与する国の多い欧州諸国では、グローバリゼーションのもとで国家を超えて自治を保障する枠組みづくりが進んでいる。その核心は、強固な地方民主主義が公的責任を育み、国家・社会を強くする、地方民主主義はすべての活動主体とパートナーシップを結ぶことで保証される、という理念にある。日本の地方分権改革もその流れから出てきた。大企業だけでなく、弱者であるが地域で重きをなす永住者の声にも耳を傾けるべきだ。

(2007.10.24 民団新聞)
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