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横浜市教委副読本「わかるヨコハマ」…中学生用13年度改訂版 「不当改訂」市民団体が抗議 【神奈川】横浜市教育委員会(今田忠彦教育委員長)は、市立中学生用の副読本「わかるヨコハマ」12年度版に「間違いではないが、誤解を招きかねない表現があった」として回収し、改訂済みの13年度版との交換を続けている。 対象となったのは昨年から12年度版を使用してきた2年生の約2万7000人分。学校長に宛てた「通知」で回収を指示したが、紛失や転居、または、回収の理由が納得いかないなどとして、一部の家庭・学校では混乱が続いている。 問題となったのは「関東大震災時の朝鮮人虐殺」に関する記述。12年度版では「デマを信じた軍隊や警察、在郷軍人会や青年会を母体として組織されていた自警団などは朝鮮人に対する迫害と殺害を行い、また中国人をも殺傷した。横浜でも各地で自警団が組織され、異常な緊張状態のもとで、朝鮮人や中国人が虐殺される列事件が起きた」となっていた。 13年度版では「デマを信じた軍隊や警察」の関与を削除、すべては不安な状態の「自警団」が仕方なくやったかのような記述にした。「虐殺」は「殺害」にと、加害責任を薄めるものに変えた。名もなき日本人市民が追悼と反省を込めて久保山に建立した「殉難朝鮮人慰霊之碑」の写真も別なものに差し替えられた。 きっかけは昨年7月、市議会でのある保守会派市議の質問だった。同市議は「あたかも軍や警察が自警団とともに朝鮮人を虐殺した、という強い表現」になっていると抗議。「虐殺」についても「ナチ」や「ポルポト」との関連でこそ使うべき表現と持論を述べた。 これに対し、山田巧教育長(当時)はその場で改訂を約束。「虐殺」は主観的な表現であるとして、「殺害」に戻すことも約束。政治介入に屈した結果となった。 「かながわ歴史教育を考える市民の会」(共同代表=高嶋伸欣ほか)は17日、岡田優子教育長に「学校現場と生徒及びその家庭にまで混乱を招いている」と述べ、回収作業の中止を申し入れた。これに対して、岡田教育長は、「回収は続ける」「12年度版の記述に戻すことはいまのところ考えていない」と否定的な考えを明らかにした。 これに先だって「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」(北宏一朗代表)も7日、市教委を訪れ、修正を求める要望書を提出した。このなかで、「すべて自警団の責任にしてしまったのは不当改訂」と指摘。「軍隊・警察も当初はデマを信じて行動し、朝鮮人・中国人の虐殺に関わったという歴史的事実を無視した記述となった」と問題点を追及した。 「わかるヨコハマ」の前身、「横浜の歴史(中学生用)」は社会科学習などにおける郷土理解を深めるための副読本として71年度から市内の各学校に配布されている。 当初は震災時の事実や背景に一切触れていなかったため、横浜市立中学の現職教員らから「デマがあたかも真実のような印象を与え、在日韓国・朝鮮人に対する偏見や差別意識を再生産することにつながる」との指摘がされていた。このため、90年度版から震災時の軍隊や警察、自警団による朝鮮人虐殺事件の事実や背景が書き加えられた。 だが、「軍と警察」を虐殺の主体とした記述が生きていたのは01年までだった。「積極的な関与を示す資料がない」ことから02年度版からまず「軍隊」が外れ、09年度版になると「警察」も削除された。その後、研究者の地道な働きかけで12年度から両方とも復活していた。 (2013.6.26 民団新聞) |