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人を生かそうとする生命力感じる…野菜の画家・呉貞子さん |
有機農法の大切さも 6月13日から銀座で個展
在日韓国人2世の画家、呉貞子さん(東京・町田市)の個展「野菜の画家・呉貞子〜自然の生命力を味わう絵画展」が、6月13日から18日まで、東京・銀座の藤屋画廊で開かれる。4年ぶりとなる同展は、有機野菜、果実、花の作品80点を出品するほか、野菜の安全性を知ってもらいたいと、自ら作成した絵入りの小冊子『有機野菜からの手紙』を同画廊に置くと話す。
「野菜から私たちを生かそう、生かそうとする生命力を感じるんです。その生命力を表したくて描いている」。農薬や除草剤、化学肥料などを使用しない自然栽培や有機栽培で育った野菜への思いをそう語る。
1943年、東京生まれ。1歳で疎開した茨城の農村で、小学生のときから家族と共に畑を耕しながら自給自足していた体験が原点にある。「大変さも楽しさも知っている。だから土いじりが好きなんです」
30年前、自然農法に関する書物と出会う。茨城から越してきた町田市で、ススキと小石だらけの荒地を1カ月かけて開墾した。「見事なカボチャが実って感動した。あまりに美しくて描いて残した」。環境に左右されず、野菜そのものが持つ活力に驚き、呉さんはそれ以降、野菜を題材に創作を始める。
子どもの頃から絵を描くのが好きだった。小学校4年生のとき、教師が呉さんの絵を褒めてくれた。「そのとき、大きくなったら絶対、いい絵を描けるようになろうと決めた」
14歳で東京・世田谷区の下宿屋に住み込みで働きながら、画家、溝江堪二さんの絵画研究所に2年通う。川崎で旋盤工をしていた父の仕事の手伝い始めたのは16歳から。17歳のとき、在日1世の呉炳学画伯と出会う。
「仕事の合間に描いた作品をためて、批評してもらっていた」。呉画伯は、後輩の一人として呉さんを導いてくれたという。その関係は現在も変わらない。
27歳で結婚、子育ての最中も、介護助士、パート、介護福祉士などの仕事を続けながら、絵の創作を続けた。90年から水彩画教室を始める。
画業人生で「呉炳学先生との出会いは宝物です。もし出会っていなかったら絵は趣味で、個展も自己満足で終わっていたと思う」。
40歳から菜園を始めた。今、野菜を描くのは別の思い入れがあるという。「野菜は素晴らしいもの。でも汚染された野菜が出回っているのも事実です。私が描く野菜や果物の絵を通して、生態系のバランスの重要性を伝えたい」。小冊子『有機野菜からの手紙』は、その思いから生まれた。
呉さんにとって絵を描くことは、生きることと同じ。絵を描くためには、体力と気力が充実していないとだめだという思いがある。もちろん家族の健康も守りたい。「そのためには食べ物に気をつけなければと、無農薬野菜を作り始めたのがきっかけです」
「いい絵を描いて人の役に立ちたい」。新たなチャレンジが始まった。
「野菜の画家・呉貞子〜自然の生命力を味わう絵画展」 6月13日〜18日。12〜19時開廊(日曜日のみ12〜17時)。藤屋画廊(中央区銀座2‐6‐5 藤屋ビル2階)。電話/FAX(03・3564・1361)。
(2017.5.24 民団新聞) |
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