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選挙人登録ラストスパート
選挙人登録開始日の昨年11月13日、駐日大使館領事部には申請者が相次いだ
長野県地方本部で開かれた研修会

 韓国の第19代国会議員選挙(4月11日)のための在外選挙人登録の締め切り日が迫っている。投・開票日のちょうど2カ月前の来月11日がその日で、残すところ2週間余り。各地民団では団員に対する呼びかけを強めるとともに、地域ごとに声をかけ合い、連れだって登録するよう指導している。バスなどを確保して、高齢者を中心に集団で行うケースも増えている。もちろんその費用は、団費からの捻出もしくは個々人の負担だ。

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各地民団 呼びかけも多彩に
誘い合い支え合い…高齢者に配慮バス手配も

 「京都から、ソンゴパラム(選挙の風)です。風を吹かせるためにバスでやってきました」。民団京都の王清一団長は21日、37人の登録申請者とともに駐大阪総領事館に入った。そのときの言葉だ。29日には第2陣が駆けつけるという。

 同乗者の金宝熙さん(82)が、「私も韓国の選挙に投票できる。候補者たちの政見をよく勉強して、自分の気持ちをしっかり持って投票したい」と言えば、徐琴子さん(80)も「投票が楽しみ。今からわくわくしている」と話す。

 民団右京支部職員の金敬南さんは「日本にきて30年と少し。韓国でも選挙に参加していない。在日韓国人の立場から国政に参加できるとは。本当にうれしい」と語った。

 この日、大阪総領事館には金剛学園の教師7人の姿もあった。登録を終えた金博之先生(数学)は、「初の国政選挙に緊張している。でも、参加する資格ができて光栄だ」と述べ、「学校の授業で生徒たちに、今回の選挙について話している」とも。

 鄭徳浩先生(日語)は、「初めて本当の韓国人になった、国に認められた、そういう感じ。在日韓国人は今まで、中途半端だった。この権利は国民の権利としてもらえた。大切にしたい」と感慨深げな面持ちだった。

学校で案内も

 「学校では保護者にも、選挙人登録の案内をしてきた」と言う張英子さん(小学校教頭)は、「私自身、記念すべき登録となった。これまで生きてきて、初めての選挙。これから、ホームページなどで、各政党の考えを調べたい」と意欲的だ。

 全国各地の民団本部・支部でも、マイクロバスや乗用車に分乗しての集団登録が進んでいる。民団福岡では、隣接する八幡支部と門司支部が合同でバスを確保した。民団宮崎は、新年会としてバスハイキングを企画し、その際にまとまって登録する。

 民団埼玉では「各支部の新年会を回りながら登録を呼びかけてきた。個々人ではなかなか行かないので、各支部で日にちを決めて5人とか10人の単位で一緒に行くよう勧めている」(景民杓団長)。県北支部では熱海旅行があり、帰りがけに参加者がこぞって登録する。

 山梨には貴金属業に携わる新規定住者が多い。「彼らは国外不在者申告なので郵送で登録できるのに、関心が盛り上がっているとは言えない。国会議員選挙ではなく、大統領選挙なら投票したいという考えだ」(金義紘民団事務局長)。「それでも、40人ほど登録した」

独自のPRで

 民団広島の場合、独自のPR作戦を展開してきた。登録申請のための広報物を入れたポケットティッシュを2万個用意し、団員に直接手渡すのをはじめ韓国料理店などに配布した。また、地元のブロック紙「中国新聞」に働きかけ、在外選挙制度に関する記事を掲載してもらった。

 東北6県の選挙人対象者は約9000人。18日現在で約350人(約4%)が登録済みだ。だが、その8割ほどが駐仙台総領事館を擁する宮城県内という。他の民団本部は頭が痛い。

悩みは降雪量

 「県域が広いので、盛岡に集まるだけでも大変だ。旅券をもつ選挙人対象者は200人弱。10%以上は行く」(岩手)。「今年は降雪量が多く、仙台に行くのはもちろん、秋田市内に集まるだけでもひと苦労だ」(秋田)。「団員は少ないが、日本人に嫁いだ韓国女性だけでも1000人を超える。だが、政治にさほど関心がないうえに、山形市内に来るだけでも数時間はかかるので、動きが鈍い」(山形)。

 民団大阪のある実務幹部は、「高齢者は選挙への関心も期待も、かなり高い。だが、韓国や海外に行くこともないだろうし、費用もかかるということで、パスポートを所持していないか、更新していない同胞が相当いる」ことを問題視し、「基礎の部分から底上げする必要があるのでは」と提言する。

「本国発展を支えた自負心をいまこそ」

 在外選挙人登録申請はいずれの海外地区でも、順調とは言えない。だが、日本地域がその例外でないことに、忸怩たる思いの民団幹部は多い。

 なかには、「在外選挙権は民団が汗水たらして獲得したものではない、という事情もあるにせよ、韓国の政治状況にうとい団員が目立つ」と嘆き、「在日は在日だ、という意識が強く、本国志向を否定的に見る傾向もある」と指摘する幹部も。

 また、別の幹部は「韓国の政治について、日常的に関心を持っていないと、在外選挙制度に意識がついて行けない」とし、「2大国政選挙が今年は20年に1回の同年実施だが、次は4年後の国会議員選挙、その1年後の大統領選挙まで間隔がある。そのつど意識化するのは大変だ」と語る。

負けてなるか

 しかし、組織歴の長い幹部たちの間では、「別に競争しているわけではないが、在米や在中の同胞らに負けていられないという気持ちがないと言えばウソになる」という思いもある。そんな1人がこう強調していた。

 「日本は国土面積がさほど広くないうえに、交通網が張り巡らされている。北から南まで10カ所に公館があり、公館の所在地に同胞が集住する度合いが高い。そして何よりも、在日韓国国民を主たる構成員とし、歴史的に本国と格別な紐帯を育んできた全国組織の民団があるではないか」

 そんな幹部たちは口をそろえて、「本国の発展は民団を中心とする在日同胞の貢献があってこそだ。その自負心からも、せっかくの権利に対する関心を高めていきたい」と語り、今後への強い意欲を示している。

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在外国民選挙‐似かよう韓日
「国民の権利」も煩雑さがネック

12年の運動で

 京都市在住の読者から本紙に届いた転居先を知らせる葉書に、在外国民選挙に対する思いが綴られていた。

 「61歳の生涯で初めて、投票権を行使することになりましたね。運動を熱心に推進してきた建国高校2年後輩の李健雨君は、あの世に旅立ちましたが、彼の思いは光をもたらしました。若い世代を含め、(投票権を)実際に行使することが大切です」

 在外国民選挙制度は、天から気まぐれに降ってきたものではない。「参政権は国民主権の原則を実現するための最も基本的で必須的な権利」であり、それを与えないのは「平等権の侵害」に当たるとの憲法裁判所の判決(2007年6月)に基づくものだ。これを引き出すまでには、故・李健雨氏を中心とする「在日韓国人本国参政権連絡会」などの12年にわたる粘り強い運動があった。

 憲法裁判所は1999年1月、在外国民選挙を否定する判断を下している。選挙権は国に対する納税、兵役、その他の義務と結びついており、こうした義務を履行しない在外国民に選挙権を認めることはできない、というのが主たる論拠の一つだった。

大原則が通り

 これが一転したのは、国民の基本権である参政権は、国民が国民であるがための権利であり、納税や兵役など何らかの義務にともなう反対給付的な権利ではない、という大原則に立ったからだ。在外国民を名実ともに「正規の国民」として認めたことになる。

 憲法裁の判決を受けた国会では、2007年12月の大統領選挙から在外選挙を導入しようとの主張が強かった。だが、「まず短期滞在者から」、「いや、永住者も一律に」との意見が対立、憲法裁が声明で、「運営上の問題を引き起こさず、選挙の公正性をいささかも損ねない形」を求めたことで、今年まで先送りされた経緯がある。

 「在外選挙人」は、居住国で永住もしくはこれに準じる在留資格を得た者で、韓国国内に住民登録または居所申告がなされていない19歳以上の国民が該当し、ほとんどの民団団員がこれに属している。国内に住民登録もしくは居所申告のある短期滞在者が中心の「国外不在者」を含めて、在外国民の(潜在的)有権者は223万人とも推算(中央選挙管理委員会)されている。

 2002年の大統領選挙では、当選者と次点者の票差がわずか57万であった。在外有権者の投票率が伸びれば、国政の在り方に無視できないインパクトとなるとの認識から、政界の駆け引きの対象になってきた。

先行した日本

 日本では1984年、増加する在外国民に選挙権行使の機会保証を目的に、内閣が公職選挙法改正案を国会に提出しながら、実質審議のないまま廃案になった。1998年に公職選挙法が改正され、比例代表制に限って在外選挙が可能になったのが2000年5月以降から。2007年6月からは選挙区在外選挙もできるようになり、同年7月の第21回参議院議員通常選挙から実施されている。

 最高裁判所は2005年9月、国が国民の選挙権の行使を可能にするための措置を執らない不作為は違憲であることを確認し、初めての在外選挙だけに問題の比較的少ない比例代表に限ったことはやむを得ないとしながらも、在外選挙が繰り返し実施され、通信手段が地球規模で目覚ましく発展していることなどから、比例代表限定を違憲とした。

 韓国、日本ともに、在外国民選挙の実施までには憲法裁、最高裁まで争われた訴訟があった。日本の例からすれば、比例代表に限定されている韓国の現行法も、いずれ改正されていこう。

 日本でも在外選挙に参加するには、在住地の公館まで出向いて選挙人名簿に登録することが前提条件だ。ただ、登録申請は申請者本人だけでなく同居家族が代理ででき、遠隔地の場合は領事出張サービスによる申請も可能なことが韓国とは異なる。

 ところで最近、日本に帰化した人は「引き続き3カ月以上、住民基本台帳に登録されていなければ、選挙人名簿に登録されない」とする公職選挙法の規定によって、3カ月間は衆院選挙に投票できないことをめぐる訴訟の判決があった。2009年の衆院選では、同じ理由で投票できなかった帰化者が3449人いたという。

 提訴したのは韓国籍から帰化した弁護士で「帰化者の場合は、外国人登録原票で継続して居住している証明ができる」と主張した。だが、判決は制度改善の必要性を指摘しながらも「規定は合憲」とし、台帳と同じ程度の正確性は期待できず、不正投票を防ぐため居住実態を調べる一定期間が必要とした。

 ことほどさように、選挙人確定には隘路が多く困難がつきまとう。それにしても、在外選挙に関する韓国の現行法は、先行する日本に比べて、手数がかかる。

 在外国民の複数国籍や国籍放棄の問題、さらには総連のような北韓追従団体の構成員への対処など、在外選挙人名簿の登録・管理体制を整備することで、隘路をクリアしていけるだろう。

(2012.1.25 民団新聞)
 

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