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日本の「東アジア共同体」構想と定住外国人問題
03年10月、インドネシアでの韓日中首脳会談で握手する(右から)小泉純一郎首相(当時)、盧武鉉大統領、温家宝中国首相。日中いずれが中心でも角が立つ? 三国の微妙な関係を感じさせる写真だ。東北アジアの中心国家を目指す韓国の存在あってこそ……
「開国」へ地方参政権は不可欠

 4月2日に締結された韓米FTA(自由貿易協定)は、ヒト、モノ、カネ、情報の流れを加速させ、国境の壁を低めてきたアジア地域にも、改めて大きな衝撃を与えた。とくに日本は、韓日FTA交渉を急ぎ、「東アジア共同体」構想を主導的に推進する意欲を再び全面に出し始めた。国家主義的な傾向を強め、定住外国人に閉塞感を募らせている日本だが、東アジアをリードするには「第3の開国」が前提になるとの世論は根強い。多文化共生社会の実現を唱え、定住外国人の地方参政権を求める民団はこれを機に、「第3の開国」の潮流をぜひ押し広げたいものだ。

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韓米FTAの波及効果
韓国との連携急げ…政治決断への期待強まる

 韓日両国のFTAを中心とした経済連携協定(EPA)交渉は、韓米より2年以上も早い2003年12月に開始された。EPAとは、モノの関税をなくすことが中心のFTAよりハイレベルで、投資や就労条件の緩和などサービス分野を含むより包括的な連携のことだ。

 韓日の交渉は、農水産物をめぐる対立のほか、独島領有や歴史認識など非経済的な問題で、04年11月以降、中断されたままだ。それだけに、後発であった韓米FTA交渉の妥結は、日本に大きなショックを与えた。全国紙の社説を見よう。

 「貿易自由化への世界的な流れに取り残されないよう、日本も通商戦略の練り直しが急務だ。(中略)韓国との交渉は2004年に中断したままだ。再開へ動くべきだろう」(読売)。

 「FTAを核とする日韓経済連携協定交渉を早く再開し、歩を進めるべきである。(中略)日本にとって貿易額が中国、米国に次いで多い韓国と経済連携協定を持たないことのマイナスは大きい」(日本経済)。

 「日本は、お隣の韓国や中国との経済連携に消極的な代わりに、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心に交渉を急いできた。(中略)しかし、北東アジアの足元を固めてこそ、アジア全体の戦略が生きてくる」(朝日)。

 「米韓FTA合意と言う状況の大変化が起きたいま、双方政府とも日韓EPA交渉を早急に再開し、早期合意を目指すべきである。それが、最終的には日韓双方の経済利益となり、安全保障環境の改善ともなる」(産経)。

 「問題は米韓FTAと言う状況の変化に、日本がどのように対応し行くかだ。(中略)日本として行うべきは、東南アジア諸国連合や豪州などとのEPA交渉を加速し、着実に成果をあげていくことだろう」(毎日)。

乗り遅れ懸念

 論調は若干の差異はあっても、〈日本は出遅れを挽回し、東北アジアの足場を固めるためにも、韓日交渉を急ごう〉という点では共通する。各紙ともその先に、「東アジア共同体」構想の実現に、日本が先頭に立つ姿を描いている。今年1月15日の第2回東アジア首脳会議は、同地域における包括的なEPAの締結に向け努力することで一致していた。

 地域貿易協定の締結を加速させる世界的な潮流から、日本がこれ以上遅れることなく、東アジア全域の経済的な共同繁栄を担保する機会逃さないために、政治の強いリーダーシップを求める声は強まるだろう。韓米FTAはそれだけのインパクトを持った。

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日本経済界の基本方向
「自治参与」を促す…アジアの国際化モデルに

 日本が「東アジア共同体」構想を発表したのは、1999年11月のASEAN+3(韓・日・中)の首脳会談においてである。これは奥田碩日経連(現・日本経団連)会長をヘッドにした官民合同ミッションが東アジア諸国を歴訪し、政府・民間の指導者200人以上と意見交換をしてつくり上げ、「第3の開国」を提言したいわゆる「奥田レポート」が原型だ。

 レポートは具体的に、FTAの推進はもちろん、労働市場や農業市場の開放、金融・通貨協力、英語教育の強化、留学生をはじめとする人材交流の抜本的強化などを掲げている。そこを貫くのは、東アジア諸国とともに繁栄を目指すには、経済ばかりか政治・社会面をもアジア、さらには世界に開くことによって、日本の立ち遅れた経済システムや社会通念を変革しようとする思想だ。

再生をかけて

 「日本を開く」ことなしに「日本の再生」はない、という強い思いが込められた「奥田レポート」の構想から取りまとめまで、当時、外務省の担当課長として関わった小原雅博氏は自著「東アジア共同体‐強大化する中国と日本の戦略」(日本経済新聞社)で、日本の国家戦略として不可欠な「第3の開国」の概念をこう説明する。

 「日本を東アジアに開かれた国家とすべく、日本版の改革と開放を断行することである。中国のような経済だけの開放ではなく、政治、文化、社会あらゆる面に置いて、日本が東アジアにとってのモデルとなるような開放された真の国際国家にならなくてはならない。その結果、東アジアの相互依存関係も一層の広がりと深まりをもって進展することになろう」

 こう指摘したうえで、「実態は日本のスタンダードによる東アジアの相互依存の進展であり、実態が制度化を促すとすれば、日本がイニシアティブを握ることが可能となる」と強調し、政治・社会面で日本こそ大胆な開放の範を率先して示すべきだとした。

 政治・社会面での開放には、歴史的な当為性を持って定住する外国人への地方参政権付与がまず前提になる。日本国憲法は「国民」と「住民」を区分し、「国民固有の権利」である国政選挙と「住民が直接選挙する」地方選挙を明確に区別している。地方自治法も「住民」に国籍要件を設けていない。最高裁も地方参政権の正当性を認めている。

 日本経団連は「奥田レポート」から4年後の03年11月、少子高齢化にともなう労働力不足に対応する外国人受け入れ促進策の中間報告をまとめた。同報告書は、各省庁の外国人関連施策を一元化する「多文化共生庁」もしくは「外国人庁」の設置を検討すべきだと提言し、整合性ある施策の確立にとどまらず、外国人にきめ細かな公共サービスを提供するために、「地方自治への参加」に道を開くよう、次のように提唱している。

 「外国人の地方自治への参加も重要な問題だ。国会には、永住外国人地方参政権法案が2000年から提出されているが、継続審議となっている。地方自治体では、1990年代に入り、外国人による有識者会議を発足させている。なかでも川崎市の『外国人市民代表者会議』は、条例で定められた唯一の例であるが、事実上の市政調査権も有し、代表者会議の提言が市政、条例制定に活かされている。各地の地方自治体は、こうした先進事例を参考として、外国人の声を地方行政に反映するよう取り組む必要がある」

多様性に魅力

 中間報告はまた、「現在、企業経営においては多様な人材を活かす戦略であるダイバ‐シティ・マネジメントが必須のものになりつつある。性別・年齢・国籍など多様な属性や価値・発想を取り入れることで、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長と従業員の自己実現につなげる異文化シナジーを生み出すべきだ」と強調している。

 これを企業の経営理念にとどめず、地域行政から国政へ、さらには東アジアに拡大すべきだ。この報告は、定住外国人の地方参政権の必要性について、積極的には言及していない。だが、在日同胞が民団を中心に粘り強く展開してきた多文化共生の実現と、その核をなす地方参政権獲得運動を強く意識したものであることは疑いない。

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シナジー呼ぶ民団理念
日本の将来と合致…「共生」前面に紛争極小化を

 日本経団連のこの中間報告は、外国人労働者の本格的な開放を唱える声が高まる一方、外国人の大量流入による社会的な摩擦や犯罪増を懸念する空気が強まるなか発表された。

 「企業の海外進出が続いているので、労働人口が減っても国内で人手不足になるとは限らない」などと、労働経済学専門の学者から否定的な見解が度々提起された。しかも、入管・治安当局や一部地方自治体の首長、あるいは特定のマスコミによって、不法入国や不法滞在とそれを温床とする外国人犯罪の増加がクローズアップされ、治安維持の視点から外国人を排斥もしくは警戒する空気が広がっていた。

半面で逆風も

 経済界の主流に対する逆風が強まるなかで提示された中間報告は、日本経済にはそれだけの強い意思があることを証明するものだ。民団の共生理念に基づいた運動と日本経済界の潮流とが、シナジー(相乗作用を活用して利益を生み出すこと)を見せたことになる。このシナジーを一段と拡大するチャンスを、韓米FTAはもたらした。

 韓日中3国は、韓半島統一問題なかんずく北韓の戦争挑発、あるいは体制崩壊の危機や台湾海峡問題などのほか、お互いに敏感な領土問題や歴史認識問題を抱え、ナショナリズムを高揚させてきた。日中両国は海空軍力を中心に軍拡に走ってもいる。日本は平和憲法を改定する動きを活発化させ、教育の憲法ともいうべき教育基本法に愛国心培養を強化する内容を盛り込むなど、国家主義的な傾向を一貫して押し出してきた。

 東アジアは国際社会で唯一、大規模紛争が発生する危険性のある地域とされている。このまま、その危険性に現実味を帯びさせるのか、それとも共同繁栄を目指すのか。結論は自ずと、経済の力によって政治的衝突を緩和させ、地域安保の下地をつくることで紛争事案を極小化する方向に限られる。

第3の開放へ

 国家の枠を飛び越えてダイナミックに営まれる経済は、国家主義によっても一国の枠内に閉じ込めておくことはできない。下部構造をなす本音としての経済は、建前とも言うべき上部構造としての政治(主権)をかいくぐる。経済の欲求は着実に、閉鎖的なナショナリズムや国家主義体制を突き崩していくものだ。

 外国人への締め付けが強まる日本にあって、北韓による日本人拉致や麻薬密輸などの国家犯罪、大量破壊兵器の開発など平和破壊行為は、朝鮮総連系ばかりか民団系同胞の人権も脅かし、経済活動にさえ深刻な支障をもたらしている。民団の地方参政権運動も、昨年の5・17事態によって大きな打撃を受けた。

 しかし日本経済は、韓米FTAの妥結によって大きな刺激を受け、「第3の開放」をこれまで以上に強く求めはじめている。民団の掲げる共生理念と、その核をなす地方参政権運動は、韓日FTAとそれを機軸にした東アジア共同体構想の流れに合致するものだ。

 東アジアの負の側面を圧縮し、正の側面を拡大するためにも、民団の果たす役割はより重要性を増したと見るべきだ。

(2007.6.13 民団新聞)
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