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<社説>建国60周年へ 民族主義の健全化を
政略的な歪みを取り除き

 今から60年前の春、韓半島南北はそれぞれの単独政権樹立が避け難く、民族と国のあり方をめぐって苛烈な抗争に翻弄されていた。なおも国論分裂の源泉となり続け、民団社会にも大きな痛みを残した苦渋の時代を、いま改めて思い返さずにはいられない。

似て非なるもの

 ソ連支配下で、民族的な欲求を圧殺して着々と社会主義体制を築き、先んじて単独政権樹立を既成事実化した北部とは異なり、南部ではあくまで統一・独立を追求する南北協商や単独選挙反対の動きは激しかった。在日同胞社会も例外ではない。解放直後に全同胞的な大同団結によって結成された朝連(在日朝鮮人連盟)が共産主義勢力に牛耳られ、民族的な利益より階級的利益を優先することに反発、民族共同体としての在日社会を守るべく奮闘し、血盟の関係にあった民団と建青(朝鮮建国促進青年同盟)に亀裂が入り、やがて建青自身も単独選挙支持と協商支持とに流血事態をともなって分裂した。

 韓国には60年前と本質的には変化のない左右対立や産業化世代と民主化世代の軋轢など、従来型の理念的対立を超克して、国民的統合を果たそうとする機運の高まりが求められている。そこに不可欠なのは、政略的な利用を排した節度ある健全な民族主義であろう。

熱情は失わずに

 本来の民族主義が統一・独立・発展を希求するものであり、わが民族が植民地支配と東西対立に起因する国土分断の負荷を抱えている以上、私たちは民族主義的な要素を失うわけにはいかない。多大な犠牲を払ってでも祖国統一を遂げるには、民族的な熱情が欠かせないからだ。しかし、そこにはいくつもの落とし穴が用意されている。

 それだけに、「民族は一つ」あるいは「民族同士」という響きのいい言葉のなかに潜り込んだ、似て非なる要素は摘出されなければならない。同じ民族であっても、民族史や民族主義に対する北韓の態度は極めて異質だ。しかも、韓国や在日社会の一部に、北韓の歪んだ論理に追随してはばからない勢力は根強い。

 韓国は愛国啓蒙運動や3・1独立運動を高く評価し、憲法ではその3・1精神を体現した「大韓民国臨時政府の法統」の継承を明文化している。北韓はこれらをブルジョア知識人による効果のない取り組みであったと切り捨てた。3・1運動については「ブルジョア事大主義者たちの無抵抗主義的で投降主義的な立場と、外勢に依存して《独立》を得ようと妄想した彼らの売国売族的本質を余すところなく暴露した」とまでおとしめている。

 その理由は明白であろう。対南優位を築くために、指導者を北韓ばかりか、わが民族史上の最高位に祭り上げなければならなかったからだ。わが民族を「金日成民族」と呼ばわるのもその脈絡にある。神格化のために、指導者を民族の過去から断絶させ、超然とした存在に昇格させることで、民族史そのものを否定したのである。

 「民族主義」についても北韓は、「民族が自己の自主権と利益のために闘わねばならないことを表面に掲げ、自民族内のブルジョアジーの支配と搾取を擁護するブルジョア思想を言う」と定義している。その北韓が対南戦略のうえで民族主義を活用し始めたのは、光州事態後の80年10月の第6次党大会からだ。狙いは、韓国に高まった反米・民主化の機運を活用するところにあった。

機運醸成の好機

 その典型が「わが民族同士の理念」である。これは自らが否定してきた「民族主義」の代替用語であり、援助は引き出すだけ引き出しながら、批判は一切受け付けない北の立場を合理化しつつ、南に追随勢力を植えつけるフレーズとして活用されてきたことは、すでに学習済みであろう。

 しかし今後、建国前夜に根源を持ち、韓国や在日社会の桎梏ともなっている理念的な葛藤が、今日的な姿で再燃する可能性は否定できない。私たちはその葛藤をまず、より高い次元の未来を志向する過程で極小化する必要がある。しかし、それで満足してはなるまい。建国60周年を、私たちの民族主義から政略的な歪みを取り除き、国際社会と協調し人類普遍の課題に寄り添う開かれた民族主義に発展させる、その機運醸成の貴重な機会としなければならない。

(2008.3.26 民団新聞)
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