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在日の未来は民団の双肩に 鄭進団長新年辞
牽引者の使命不変 伝統を力に新生期そう

 団員をはじめとする在日同胞の皆さまに、謹んで新春のごあいさつを申し上げます。

 私は皆さんのご多幸を心より祈念しながら、民団中央本部団長として初めてのこの新年辞を通して、本年の民団運営に臨む所信の一端を述べたいと思います。

可能性大きい民団

 1世紀を超える歴史を刻んだ在日同胞社会は、幾多の海外同胞社会やマイノリティー社会のなかでも、最も成功した存在と見なされています。自らのルーツに自尊心を持ち、本国との紐帯と日本社会との共生を大切にする民団は、その在日社会の中心にあって、東北アジアの国際化・共存共栄にも貢献できる立場を築き、いっそう光り輝く可能性を秘めています。

 私たちがこのような位置を占めたのは、いかなる政治的・経済的な激動にもぶれず、生活者団体の信条を貫き通す民団があったからです。同胞社会の未来開拓には、今後とも民団の牽引力が欠かせません。その意味でも、民団創立60周年の昨年は、私たち一人ひとりが団員であることの誇りと喜びを分かち合い、困難を恐れずにまっすぐ前を向き、力強く歩み出すべく隊列を整える絶好の機会でした。

共生理念より高く

 しかし遺憾にも、昨年の民団は1歩も前進できないどころか、5・17事態によって手痛い打撃を受けました。組織再生への軌道を着実に歩んでいる現在もなお、悔やんでも悔やみ切れないものが残ります。であればこそ、これからの民団に責任を負う私たちは、その悔いを糧に心機一転しなければなりません。

 日本は昨年末の教育基本法改定で、「我が国」を愛する態度を養う条項を盛り込んだことに見られるように、国家主義的な基調を強めています。北韓による拉致事件や核実験などによって窮屈な思いを強いられてきた在日同胞は、ますます息苦しくなろうとしています。6者協議の進展はまったく不透明で、北核は危険因子のまま推移しかねません。韓国は年末の大統領選挙に向け、政治葛藤が激化すると見られています。韓半島情勢は日本に敏感に跳ね返り、在日社会の環境に大きな影響を与えます。

 私たちは政治的な厳しさを覚悟し、鋭意注視すべきでしょう。ですが、その半面で私たちの拠って立つ空間が広がりを見せていることにも着目すべきです。

 韓日の相互理解を助ける大衆文化の交流は活発に推移し、健全度も高まっています。韓・日・中の経済的連携は強化されており、今年早々にもFTA(自由貿易協定)締結を視野に入れた3国の投資協定交渉が始まります。政治対立が文化交流や経済協力に決定的な影響をもたらす時代は過ぎ去りました。経済・文化交流はむしろ、険しい対立症状にある政治を隔離し、治癒する作用をもつまでになったと言っていいでしょう。ここに、私たちの活路があります。

 平和・人道・人権の尊重を第一義とする民団の共生理念は、カネ、モノ、ヒトの移動とともに、文化交流が加速するFTA時代を先取りしたものと自負しても、恥ずかしくありません。地方自治体や地域住民、さらには増え続ける定住外国人の共感を呼んで多文化共生社会を実現する原動力となり、日本のFTA体制構築や東北アジアの新時代創出にも共鳴し合うからです。

困難に背向けない

 それは各種差別の撤廃、韓日友好を軸にした国際親善、地方参政権獲得など、民団が推進してきた主要事業が初期の目的・目標を達成した場合でも、そうでない場合でも、多くの好ましい副産物を生み出してきた証です。各自治体が住民投票条例を制定し、行政に外国籍住民の意思を反映させる外国人会議を設置し始めたのも、民団の運動を抜きには語れません。私たちは民団が押し広げてきた空間をより有効に活用し、共生理念をいっそう高く掲げるべきです。

 親愛なる団員の皆さん。

 高く掲げた理念を具現するには、充実した組織力量が第1の前提条件です。その組織面において民団は、人的物的資源の漸減傾向を余儀なくされており、60年の星霜がもたらした制度疲労さえ目につきます。民団に愛着をもつ団員の多くが、先行きに不透明感を抱くのも当然のことです。

 組織強化はきわめて困難な課題であり、ある妙手妙案だけをもって成し遂げられるものではありません。民団が私たちの拠り所であると同時に、他をもって代えがたい使命を有する限り、いかに困難であってもひるむことなく、真正面から取り組むべきです。

精鋭化と財政改革

 私はこの1年、在日同胞の生活に密着した主要継続事業の効率的な推進を心がけるとともに、次の3点に全力を注ぎます。

 第1点は意思疎通の充実化です。民団が各現場で抱える懸案は何で、どう解決すべきなのか、全国の幹部・団員との対話・討論を深めることで問題意識と課題を共有し、速やかで分かりやすい意思決定に努めます。

 第2点は幹部育成政策です。営利会社、地方自治体、軍隊などいかなる組織においても、その存続の危機を精鋭化で乗り切り、飛躍につなげた例は少なくありません。組織を引っ張る幹部一人ひとりが専門能力を1つから2つへ、2つから3つへと高めるべきです。中央本部がまず、これを率先します。

 第3点は財政改革です。財政資源を開拓して基本財政の自立化速度を早める一方で、中央本部の財政運営を全面的に見直し、合理化を図ります。地方への配慮を優先し、現場の活力回復を後押しします。

 親愛なる団員の皆さん。

 昨年の民団は5・17事態を許した脆さと、それを克服する強さを見せました。いずれも民団の姿です。であれば、強さをさらに鍛え、脆さをなくすことが急がれます。

 民団は自らの進路を自ら決める同胞たち皆でつくりあげた団体であり、同胞一人ひとりの一途な思いの結集体です。民団の将来を決するのは私たち自身であり、その私たちは自らに与えられた条件と、民団の経験の蓄積のなかから、今後への確信を導き出すほかありません。

危機後の躍進こそ

 私は今、改めて民団60年の歴史に感銘を受けています。今からちょうど30年前の1977年は、青年会中央本部が結成され、現在197期を数える中央組織学院が開院するなど、次世代育成と幹部政策の両面で画期を記しました。同時に、指紋押捺制度撤廃、協定永住91年問題解決、地方参政権獲得運動へと続く、今日の民団を在らしめた共生理念実践運動の本格的な出発点でもありました。

 まず3月に、「われわれ在日韓国人は、人間の尊厳性と生存の権利のための『人間解放』を宣言する」で始まる「在日韓国人の生活擁護のための人権宣言」を採択、5月に『差別白書第1集』を発行し、8月から「差別撤廃100日間運動」を開始したのです。民団と在日同胞はこれまで、屈辱に苛まれながらも「韓国人だから、外国籍だから仕方がない」と受け入れがちだった「日本の常識」に挑み、確固不動と思われた差別社会の壁を突き崩し始めたのです。その手始めが自らの「人間解放宣言」でした。

 この強い意志力は、民団に余裕があったから生まれたのではありません。70年代初頭の民団は、現・韓統連グループによる組織破壊策動に苦しみ、これを民団内部から排除した後も、7・4南北共同声明の支持運動に名を借りた総連・韓統連の民団潰しキャンペーンに曝されました。73年には金大中拉致事件、74年には朴正煕大統領狙撃事件と続き、民団は韓国とともに、日本社会からも長期にわたって強烈なバッシングを受けました。

 77年に表明された民団の強い意志力は、まさに、満身創痍のなかから育まれたのです。ここに、危機をバネに奮起した民団の典型を見ることができます。もちろん、30年前と今日とでは民団に与えられた条件は異なります。ですが、当時の民団にとっても、その後の隆盛は予定されていたわけではありません。

 私は、困難の先にある民団新時代を手繰り寄せるのは、強い意志力をおいてほかにない、と固く信じています。昨1年間に身にしみこんだ危機意識を持続的に共有し、伝統の底力を1年を通して発揮しようではありませんか。在日社会の未来は民団の双肩にあります。

 最後に今一度、団員と在日同胞の皆さんにとって、今年が幸多き1年となるよう祈念いたします。

(2007.1.1 民団新聞)
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