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<寄稿>ヒツジの「和」「優」見習いたい…広島大学名誉教授・東亜大学アジア文化研究所所長 崔吉城
写真 作・韓国民画作家 池貴巳子

韓日友好も この心で
勇大な歴史に思いはせ

 新年の干支は「乙未」年、つまり遊牧民の代表的な家畜の羊(未)の年である。干支は動物をもって時間を擬人化したもので、それは中国が起源であり、陰暦で使われたものだ。

 干支では時間や方向に動物の名前をつけている。新年の干支が羊であり、6月が未の月、一日の中では午後を未時といい、南南西を未の方向という。干支の動物が必ずしも意味合いがあるわけではないが、干支の動物の性質に注目している。 未(羊)は群れを成して生活をしながらも優位争いをしたり、雌を一人占めしようとしたりしない、いわばやさしく正直な動物だとも言われる。 人に比していうならば、内向的な性格であるが頑固で、自身の主張を曲げず外柔内剛的にみられる。しかし名誉と権力欲も強くて努力するが、他人の言葉に耳を傾けない。さらに決断力が弱く優柔不断なのだ。対人関係は円満であっても人徳が少ないので良いリーダーにはなりにくいなどといわれている。

 動物の性質や文化を以て象徴的に考えて羊(未)の年に産まれた人は、羊のようにやさしいと解釈されたりする。新年には羊から和と温厚な習性を見習い、難しくなった韓日関係が一日も早く、友好になることを願い、予言したい。

無関係でない遊牧民の文化

 私は羊を以て遊牧民を想起する。韓国文化の起源を探るというテーマで、朝鮮日報からの派遣で1990年に調査団の3人の研究者の一人として参加したのもその脈絡からであった。それが私の遊牧文化との初の出会いだった。韓国文化とは異質のものだと思った。

 馬に乗って羊の群れを連れて歩く場面、私が住所を訪ねた時の戸惑った表情は忘れられない。移動する遊牧民に住所はないからだ。定住農耕民と移動遊牧民族との違いは、本当に新鮮なカルチャーショックだった。

 私は牛乳が飲めない。戦後アメリカの援助物資として粉乳を飲んだことがあるが、生の牛乳でお腹を痛くして以来、遠ざけてきた。それは私だけではなく、さらに韓国人だけでもなく、熱帯地方の民族にも起きる現象である。

 北ヨーロッパの人々のように、ビタミンを牛乳から取るラクターゼという酵素を多く持っている民族において好まれることは、中学時代からの常識だった。

 牛乳文化と縁のない韓国人にとっては、遊牧文化とも縁が薄い。その点は韓日においても同様だ。牛乳が輸入されて食用化されたのは明治以降、日本植民地時代に韓国にも影響したが、一般化されることはなく戦後、幼児用だけに普及した。

 ところで、韓国文化は遊牧民族とは全く関係がないかというと実はそうではない。歴史的に韓国文化はいわば「満蒙」の旧満州やモンゴルなど、歴史的に北方文化から影響を受けてきたというのが常識になっている。したがって、韓国文化の起源をモンゴルなどに求めるのが普通である。

牛乳を飲んで増々近づいた

 日本では騎馬民族起源説が有名だ。考古歴史的な研究はさておいて、韓国は日本に比して肉食文化を持っている。代表的な家畜は牛で、焼肉やコリアンバーベキューが有名であり、私は在日韓国人の焼肉文化を理解するために調査して「焼肉の文化人類学」を書いたことがある(『韓国民俗への招待』風響社)。

 韓国では代表的な家畜として、牛を農耕と肉食に利用している。モンゴルの5大家畜は馬、ヤク、羊、山羊、ラクダだ。牛科のヤクは遊牧民の家畜として、荷役用、乗用、毛皮用、乳用、食肉用に使われている。特に遊牧民族であれば、あらゆる家畜の乳を絞る。馬の乳を絞って作る馬乳酒は有名だ。

 韓国では家畜の乳を搾る文化とは対照的に、動物の乳を搾って飲むような文化はまったくない。牛は農耕や食肉など広く利用され、血や舌まで使う料理があるが、牛乳を搾ることはしない。しかし、輸入された牛乳をよく飲むようになって、韓国が遊牧民族になったような錯覚をするほどだ。

気質に影響の神になる信仰

 韓国文化でもっともモンゴルや満洲から強く影響されたのは、シャーマニズムである。私はシャーマニズムの調査のためにシベリアや満蒙地域を回った。それは長い間、迷信打破の対象であってソ連時代にシャーマンたちは強く迫害された。

 シャーマニズムは人が神になる信仰である。それは激しい踊りなどで興奮の絶頂に達し、トランス状態で神になるということで、韓国人の気質や性格に大きく影響した。いま韓流ドラマなどで、登場人物が失神する場面が多いのはそれであろう。

 新年は終戦70周年、韓日国交正常化50周年を迎える記念すべき年である。歴史認識が問われる。それはどんなに問うても問い過ぎることはない。日本はいわば壬辰倭乱という朝鮮「征伐」出兵により隣国を侵略し、韓国を大きく傷つけてしまった。植民地化、太平洋戦争を起こして大変な痛みを残している。まだ韓半島では同族間の戦争6・25により厳しい休戦線を挟んで敵対視している。

父親のように大統領に期待

 私にとって1965年は記憶に新しい。朴正熙大統領の韓日国交正常化と京釜高速道路建設には、学生を中心に国民的に反対した。いわば開発独裁への反対、独裁政治への反対に、朴大統領は世論の反対を押し切って実行した。そして経済発展の基礎を作ったのだ。

 しかし、私は独裁政権は嫌であった。血を流して折角、民主化運動に成功したのに、独裁へ戻すことに不満があった。朴氏は当時の民衆や私のような学生のレベルをはるかに超えた独裁者であり、1970年代に「セマウル運動」を行い、経済開発と近代化を成し遂げた。

 それまで疲弊していた農村を振興し、コメの自給も実現した。長い歴史上、彼をどう評価すべきか。王朝のような人権意識の欠如時代であっても、立派な王様が存在したように彼は英雄であろうか。

 先日、産経新聞の黒田勝弘氏にソウルで会って放談をした。その際、彼に悪い韓日関係の改善の展望を求めた。異色な見解を述べた。

 新年は韓日国交正常化50周年になる記念すべき年。父・朴正熙氏がセマウル運動を断行したように、娘も両国関係の改善に向けて力を発揮してくれるだろう。

 私もそう願う。

(2015.1.1 民団新聞)
 

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