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消えゆく河川敷の街 川崎市戸手4丁目12番地
現地をフィールドワークする市民有志

 【神奈川】川崎市の多摩川河川敷で約半世紀にわたり営々と築いてきた同胞コミュニティー、戸手4丁目12番地が、スーパー堤防建設にともない、近い将来、地図上から消え去ろうとしている。現場は多摩川の屈曲点にあたり、ひとたび台風に襲われれば川が増水し、町全体が冠水してしまう危うさを秘めていた。だが、それだからこそ住民は助け合い、結束して住環境の改善に努めてきた。

住環境改善へ同胞結束…半世紀の歴史刻み退去
国土交通省のスーパー堤防建設のため

 戸手4丁目は川崎駅の西口、徒歩で20分ほど。東京都と神奈川県の間を流れる多摩川の河川敷にかつては約100世帯が密集して居住していた。

 このほとんどが在日同胞。日本の植民地施策のもと、故郷での生活の糧を失い、やむを得ず渡日を余儀なくされ、あらゆる辛苦と流浪の果てにたどりついた人たちがほとんどだった。中には日本鋼管に強制徴用されたという人もいた。

 いまは数戸を残し、昨年9月までにほとんどが立ち退いた。今後は河川の治水安全を図るためのスーパー堤防の建設が国土交通省の手で始まる。

 ここに集住地が形成されたのは59年の伊勢湾台風の後、3〜4年の間とされる。あっという間に100戸が形成されたという。民有地ならともかく、国有地や市有地で不法占拠が許されることはない。このため、役所の目が行き届かない土・日の2日間で家を建てるという離れ業もやった。

 もとより電気や水道は通わず、衛生車の巡回もなかった。明かりはカーバイド、水は共同の井戸水、ゴミや汚物は川に流していた。汚物は畑を作っている人たちがときどき処理していた。しかし、周囲に助け合える同胞がいることが幸いした。不便ながらも生活は充足していたという。

 東京オリンピックの開かれた60年代には電気、水道が引かれ、衛生車も回るようになった。住民たちが結束して建設省に赴き、河川敷に住まわざるを得なくなった事情を説明し、最低の文化的生活を営む権利を主張したからだ。やがて電話もこの町の隅ずみまで行きわたった。

 80年代に入ると、日本基督教団の関田寛雄牧師が河川敷に川崎戸手教会を構え、宣教活動の傍ら住民の生活支援にも取り組んできた。教会に併設された戸手地域活動センターがそれだ。在日同胞の孫裕久主事が中心となり、いまも残る住民の生活再建のため、国や市と話し合いを続けている。また、市民の有志も昨年から3回にわたって現地でフィールドワークを行うなど、残された住民の支援に取り組んでいる。

 戸手4丁目12番地は間もなく地図上から消える。しかし、在日が確かな生を記した町としてこれからも人々の記憶に刻まれていくことだろう。

(2006.1.25 民団新聞)
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