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教材として活用広がる
関西地区の各民族学校で
『歴史教科書/在日コリアンの歴史』(民団中央民族教育委員会企画、同作成委員会編)が、民族学校で高校生の「在日韓国人史」授業の時間に副読本として活用されている。出版から3年目に入り、授業の現場にしっかり定着したようだ。関西地区の民族学校3校の授業現場を訪ねた。
2世教員が語り継ぐ苦闘 金剛学園
金剛学園の「在日韓国人史」の授業は3年生を対象に週1回。この日は日本の植民地化初期から始まった「土地調査事業」がテーマだった。担当教員、金博之さんの話は1世の父母から直接聞いた実体験をもとにしているため、生徒たちには説得力があった。
金さんは生徒に語りかけた。「土地調査事業によっていくら働いても食べていけなくなった。私のアボジは白い米を食べたい一心で1939年、20歳で日本に来た。アボジのオモニは、行かないでと泣いた」。
生徒からは「日本に来なければよかったのに」と素朴な疑問の声。これに対して金さんは、「日本に来ても差別は強烈だったが、差別よりも腹が減ることに耐えられなかったのだ」と補足した。
渡航時、多くの1世に学歴らしきものはなかった。金さんは、生徒たちに分かりやすいように自らの幼少時の体験を語った。「アボジは新聞を読むふりをして、たまにさかさまに見ていた」。
在日韓国人を母親に持つ相川克理恵さんは「食べるものがない。いじめがあっても日本に来たということが衝撃でした。なにより金先生の話がすごい」と目を見開いて語った。
白頭学院建国高校では生徒たちが理解できるように、「総合コース」の3年生を対象にポイントをピックアップしたプリントを作っている。授業は週2回。担当の松崎隆行教諭(社会科)は「教師から見て参考になるところが多く、教材としては十分」と話し、コラムがついていることも高く評価している。
生徒たちからは「難しいけれど勉強になった」という声を多く聞いた。辛光浩君(17)は「8割ぐらいは理解できるが、表現の難しいところもある。随所に設けられたコラムは頭を休める意味でいい」と語っていた。
日本人生徒と学ぶ
京都国際
京都国際学園では中学1年と高校1年で「在日韓国人史」を履修する。高校生の教材は『在日コリアンの歴史』だ。授業では韓国籍の生徒も日本籍の生徒も一緒に席を並べて学ぶ。感想を聞くと対照的な答が返ってきた。
ある在日の生徒は「在日の歴史を学ぶことは楽しいことだけではありません。悲しいときもあれば、悔しいときもありました」と振り返った。一方、日本人の生徒には当初、戸惑いもあった。
「えっ? 在日韓国人史なんて勉強しなくてもいいのにと思ったけれど、やっていくうちに重要な教科だと思うようになりました。この前、3・1節の式典に参加して在日韓国人が地方参政権を取ろうという気持ちがすごく伝わってきました」。担当教員の金一恵さんによれば、京都韓国学園から京都国際学園になったばかりのころ、在日の学生が日本人学生に気を遣って、「ソンセンニムは日本のことを悪く言い過ぎ」と訴えてきたという。
それからは植民地時代にも日本の政策を批判した日本人を紹介したり、「繰り返さないためにはどうすればいいか」と生徒たちに投げかけて、考えさせるようにしているという。
「その点ではこの著書のコラムは非常に身近な例を挙げているので、参考にしやすい」と話している。
同書の作成委員の一人で、大阪市立大学教授の朴一さんは「プリントを作るなど各学校で工夫しながら使っていることを知り、ありがたい。できれば、自分のルーツをたどるためにも、生徒たちには家族からの聞きとりもやらせていただきたい」と語った
(2008.6.11 民団新聞)
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