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<寄稿>韓国木簡が古代東アジア史読み解く鍵に…李成市(早稲田大学理事文学学術院教授)
慶南・咸安郡の城山山城から出土した200点の木簡群の一部
古代日本の出挙木簡の源流とされる百済左官貸食紀木簡
日本木簡の源流は新羅・百済

 木簡とは、木の札に墨で文字が書かれたもので、その内容あるいは用途によって、1,文書木簡2,付札木簡3,その他に大きく分類できる。1,は書き手(官庁や個人など)が何らかの意思を伝えるために木の札に文字を記したものである。

 2,は物品に括りつけた札で、物品の整理、保管のために名前や量を書いた付札と、どこかに送る物品に付けて送り手の名や送り先、内容などを書いた荷札とがある。

 その他には1,2,に含まれない多様な用途があり、落書き、習書、呪符、紙文書のインデックス、歌を記したものなど、文字どおり多様である。近年の開発によって地中から各種の木簡の発見が相次いでいる。

 木簡の内容は、その時代その場所における細かな日常的な事柄が多く、従来の文献史料では分からなかった当時の日常的な営みが鮮明になることがあって、そのような有用な貢献が強調される面がある一方、歴史の枠組みを大きく変えることはないともいわれてきた。 10世紀以前の韓国古代の文書は数点あるのみで、石碑や金属に記された金石文や木簡を含めた出土文字資料があるものの、木簡についても現時点で約800点に過ぎない。中国や日本が20万から30万という単位であるのに比すれば、その母数の違いは隔絶している。

 しかしながら、この間の韓国木簡の発見と研究によって従来、日本列島で独自に発展したとされた日本木簡は、現在では韓半島の圧倒的な影響の下で使用されたと考えられるようになってきた。

 というのも、中国で木簡が使用されるのは戦国時代・秦漢時代から4世紀頃まであり、一方、日本で使用され始めるのは7世紀の前半頃である。それゆえ、日本木簡は日本列島で孤立して独自に形成され発展したものと固く信じられてきた。

 90年代以降、韓国において新たな木簡の出土が続くなかで、2003年より早稲田大学は、韓国の国立文化財研究所・国立昌原文化財研究所との学術交流協定に基づく共同研究に着手し調査に恵まれることになった。これによって10数年のうちに、具体的に日韓における出土木簡の類似性を明確に指摘できる事例が一挙に検出されるようになった。

 たとえば、慶南・咸安郡の城山山城から現在までに約200点の木簡が出土し、それらは、6世紀中ごろの新羅領域内からもたらされた穀物などの物資につけられていた荷札であった。その書式や木簡の形態は、古代日本の木簡の原初形態ともいうべき姿をしている。 その後、7世紀初頭の羅州伏岩里百済木簡の発見によって、日本木簡の源流が新羅や百済にあったことが広く認められることになった。

 木簡研究は、前述のように、資料の性格上、歴史の枠組みを変えることはないといわれてきたが、韓半島出土の新たな木簡を得ることによって、韓国史はもちろんのこと、東アジア規模の歴史研究の重要な鍵を握る注目すべき研究分野になってきている。

 たとえば、従来、古代日本の文明化は、600年の遣隋使にはじまり、続く630年からの遣唐使と併せて、約100年にわたる中国との交流によって、701年の大宝律令、つまりは中国的な法律体系に基づく国家制度を完成させたというように考えられてきた。

 ところが韓国で新羅や百済の木簡が出土することによって、700年以前の古代日本の諸制度は隋や唐の制度ではなく、新羅・百済が受容した中国の諸制度を間接的に受容してきたことが木簡の文書形式などによって裏づけられるようになってきた。

 さらに、木簡にみられる文字文化の比較研究を通して中国文明(漢字文化)の伝播と受容の問題が検討される中で、韓半島諸国の果たした文明史的な役割についての歴史学や言語学上の実証研究が現れている。韓国木簡は東アジアの政治、社会、文化研究の貴重な資料として注目されているのである。

韓国木簡学会に在日の会長誕生

 韓国木簡学会は2007年にソウルで結成され、今年で10年を迎える。毎年、中国や日本を始めとする外国研究者を招聘し、東アジア規模の木簡学をめざして学術交流を展開してきた。創立10周年を迎え、韓国木簡学会を名実共に東アジア木簡学会として飛躍させたいという期待をこめて朱甫暾前会長は、在日の私を次期会長に推挙した。

 日本で蓄積されてきた中国やベトナムを含めた東アジア諸地域との学術交流のネットワークを強化し、木簡を始めとする出土文字資料研究を通じて、次の段階の東アジア史研究の構築が私に課せられた役割である。

(2017.2.22 民団新聞)
 
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