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<記者座談会>李明博時代と在日
大統領選に圧勝し笑顔の李明博氏
李明博候補の当選を祝う韓国市民
閉塞感の打破へ奮起呼ぶ

 12・19韓国大統領選挙でハンナラ党の李明博氏が圧勝し、2月25日には第17代大統領に就任する。式典に在日同胞が1000人参加する見込みだ。在日同胞は李明博新政府の性格をどう見るべきか。また、新政府は在日同胞社会にどのような影響をもたらすのか。本紙記者が語り合った。

異例な関心の背景
葛藤の止揚願う…対北・対日姿勢の転換注視

 −−在日同胞は今回の選挙に、過去に例がないほど高い関心を示した。

 A その理由ははっきりしている。北韓の日本人拉致など国家犯罪やミサイル発射・核実験など軍事威嚇行為によって、在日はかなり辛い目に合っている。次の大統領は北韓に、厳正に対処するのか、引き続き融和政策で臨むのか、切実な問題だった。加えて、近年まれに見る険悪な韓日関係がどうなるかも、関心を高めさせた要因だろう。

国力の衰退は同胞社会に影

 B 韓国国内では南北問題より、経済活性化が最大争点だったと言われる。在日同胞の多くが国内に不動産や金融資産を持っている関係で、韓国経済の影響をまともに受ける。また、国力の衰退は間接的にも同胞社会に暗い影を落とす。だから、経済問題に決して無関心ではない。

 しかしそれよりも、政治的な環境に敏感だったということだ。日本社会は、北韓の犯罪・威嚇行為を真っ向から糾弾し、北韓に対する韓国の融和政策にも反発を示してきた。にもかかわらず、南北政府は「わが民族同士」の理念などというフレーズで、民族主義的な一体感を全面に押し出してきた。韓国はどこに行こうとしているのか。日本社会のこんな懸念が在日同胞を陰に陽に締め付ける要因になっていた。

 C 民団の場合はとくに、5・17事態によって得た教訓も無視できない。06年の「民団・総連5・17共同声明」は、その「わが民族同士」の理念を掲げて、民団を北韓に忠実な総連と連携させ、場合によっては実質的に一体化させかねないものだった。

 この事態には、韓国や在日社会の親北勢力だけでなく、政府筋や当時の駐日公館の一部がかかわっていたことで、民団社会は大きな衝撃を受けた。民団の理念や生活者団体としての立場からは受け入れがたい転換を迫った現政府の対北政策に、疑問が膨らんでいたのは否定できない。

対話のできる韓日の構築を

 A 韓日関係について言えば、98年10月に金大中大統領と小渕首相が共同宣言「21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ」とこれを具体化した「行動計画」に署名した。両国関係は大きく前進したし、参政権問題でも画期的な進展を見た。これがウソのように様変わりしてしまった。

 B 韓日間の対立要因は、教科書を中心とする歴史認識や独島領有、靖国神社参拝問題など従来からのものばかりで、深刻な新材料があったわけではない。むしろ経済関係は深化し、韓流現象が拡大して人的往来も急増した。

 にもかかわらず、首脳間のまともな対話すら成立しなかった。小泉・安倍両内閣の国家主義的な理念と、日帝時代の歴史清算を掲げる盧武鉉政府の性格とが、まともにぶつかり合ってしまった格好だ。

 C 北韓に対する姿勢をめぐる不協和音も根強い伏線としてあったのは疑いない。韓国は融和政策に、日本は対北制裁などに、それぞれ理解を求めたが、実質的には背を向け合ったままだ。お互いに信をおけない時代だったと言える。

 −−李明博氏を圧勝させた主たる動因は、経済活性化への期待感だ。しかもその期待感には切迫したものがある。だが、BBK問題の特別検察報告があり、政界再編が必至とされるなかで4月9日の総選挙に対応しなければならない。成り行きによっては政局に追われる可能性もあり、自身の公約・ビジョンにどれだけ集中できるか予断を許さない。

 A 経済面では短時日内に結果を出すか、明るい予兆なりを示さないと、厳しい局面もあり得るだろう。この間に拡大した経済格差は、何と言っても社会不安の大きな要因になる。

 世界のなかの韓国経済ももう一段の飛躍ができず、先進国の入り口で足踏み状態だ。日本との距離を縮められないまま、中国はもちろんインド、ブラジル、ロシアに次々抜かれて、06年時点で韓国の国内総生産(GDP)は13位に落ちた。韓国は日本と中国にサンドイッチされているとの自嘲論があったが、それ以上の閉塞感が募っている。

 B しかし、今回の選挙に反映されたのは、経済状況に対する直接的な危機意識だけでない。韓国ではこの間、内実としては革命状態にあるとさえ言われ、北韓の統一論である高麗連邦制をもじって「連邦制事変」と称するむきもあった。

 太陽政策も当初は、交流・協力の深化と軍事的挑発への断固対処が二本柱だったが、いつしか断固対処の部分が曖昧になってしまった。韓米軍事同盟の弱体化、韓日関係の悪化の一方で、南北関係が北韓のペースで深まっていく。いわゆる親北勢力の跳梁も目立った。このままで国がどうなっていくのか、漠然とした不安が危機意識に発展していたと思う。

 C 確かに。得票率は李明博氏の48・7%と李会昌氏の15・1%を合わせて、ハンナラ党とその系統が63・8%に達する。ここ10年の流れを引き継ごうとした鄭東泳候補の26・1%を完全に圧倒した。この事実は重い。決して経済一本やりではなく、国そのものを立て直し、スタンスを明確にしたいという複合的な思いの現れと見ていい。

 A 李次期大統領は当選確定後直ちに、「危機に瀕した経済を必ず立て直す。分裂した社会の和合と国民統合も実現する」と強調した。国民統合がなければ、経済の躍進を期すことはできない。南南葛藤と言われた理念対立、労使・世代間の激しい摩擦など、どれほど国力を損耗させてきたことか。先行き不透明な韓国に、周辺・関連国の見る目も厳しいものがあった。

国民統合して躍進の絶好機

 B 李次期大統領は「建国、産業化、民主化を経て今や先進化へと進まねばならない」とも力説している。この言葉は韓国の60年を当たり前のように述べたものでありながら、極めて重要な意味を含んでいると思う。

 理念・世代間の対立は主として、建国・産業化世代対民主化世代の葛藤として現れた。しかし、建国・産業化世代の踏ん張りなくして民主化はなく、また民主化なくしていっそうの経済発展はなかった。ある時代がある時代を否定するのではなく、発展的な積み上げのなかにこそ今日の韓国があることを確認し、そのうえで先進化へ一丸となろうというアピールだ。

 C さっき「連邦制事変」という話も出たが、こともあろうに韓国内で、北韓は自主・統一志向の国であるのに対し、韓国は隷属・分断志向の国であり、生まれてくるべき国ではなかった、と言うような言説がまかり通ってきた。8月15日の建国60周年記念行事も、政府レベルでは計画がなかったと聞いている。

 建国60周年に向けて、韓国の足跡は多角的に検証されるべきだ。葛藤が再燃する可能性もないわけではないが、過度な理念性を排除して真摯に振り返れば、韓国こそ全民族の将来を担保する正当な国家であることが自ずと明らかになる。国民統合の絶好の機会だ。

■□
在日社会への影響
共生にも追い風…国際協調と実利主義路線で

 −−ここ数年の在日同胞社会は、南北それぞれの政府のあり方と無縁でないことを如実に示した。李明博新大統領の登場は、在日社会にどう影響するのか。とくに韓日関係と南北関係、それと両者の相関関係がポイントになる。

 A その点について李次期大統領の姿勢は明確で分かりやすい。韓米同盟の再構築と未来志向の韓日シャトル外交を言明し、韓・米・日の信頼を基礎に、共通の価値と平和を築くことを全面に押し出している。福田首相もかつての福田ドクトリンのように、韓・中など近隣外交を重視する姿勢だ。韓日関係は、この間の険悪な状況から脱しようとするバネの力学も働き、好転する条件が整うのは間違いない。

 B 主要関連国とは、紛糾事態があればあるほど話し合う必要がある。盧武鉉大統領と小泉首相は、感情的なアツレキまであった印象だ。外交は国と国、あるいは多国間の交渉ごとでありながら、歴史を見ると首脳間の個人的な信頼関係が実に大きな要素を占める。新大統領と福田首相は、その信頼関係を築ける素地を持っていると思う。

人権問題にも踏み込む構え

 C 北韓との関係でも次期大統領の立場は明瞭だ。6カ国協議など国際協調を通じて、核放棄の実現と改革・開放への誘導を最優先課題にしている。「核放棄こそ北韓が発展する道」であり、「北韓社会を健全化するために必要な指摘をする」とのメッセージを繰り返し発信してきた。北韓住民の人権問題や韓国人拉致被害者問題の解決にも踏み込む構えだ。

 A 次期大統領は「非核・開放・3000」構想を掲げてきた。北韓が核廃棄と開放路線への転換を決断すれば、日米中など国際社会と協力して大規模な支援を実施し、北の一人当たり国民所得を10年以内に現在の3倍以上の3000ドルに引き上げるというものだ。

 自由貿易地帯の設置、ソウルと朝中国境の新義州を結ぶ高速道路建設などインフラ整備、食糧難をはじめ絶対的な貧困の解消などもあげている。

 B やや気になるのは、同胞や日本社会の一部に、北韓に対する態度が「保守政権」としては柔軟に過ぎないかとの懸念が一部にあることだ。如何なる政権であれ北韓には関与政策をとらざるを得ない。その点、誤解してはならない。

 軍事挑発には断固対処する半面、可能な分野から交流・協力を推進し、警告・牽制と同時に希望を示す。これが歴代政権の統一政策と経験則であり、旧西側陣営の閉鎖社会国家に対する不動の勝利政策だ。このアメとムチのうち、ムチを用いなかった、つまり運用に問題があった。核放棄を対北政策の大前提とする次期大統領は、基本政策を厳正に運用することを再確認したことになる。

 C いずれも、国内外のコンセンサスに即しているし、日米欧を中心とした国際社会の理解を得やすい態度だ。民団の望むところとも合致しており、われわれの閉塞感を和らげるのは間違いない。それと、対北政策の骨格・原則がしっかりすれば逆に、今まで北韓に背を向けていた人々をも交流・協力に踏み出しやすくさせる。

 A 北韓核施設の無能力化が焦点になっているが、無能力化というのは核施設を使えなくし、核物質を追加生産できなくするだけであって、すでに生産した核物質の廃棄や核施設の解体・廃絶とは別問題だ。日本の東海1号基の解体は20年、1000億円以上がかかると推算されている。

 環境汚染対策まで考えると、核施設廃絶には膨大なコストがかかるわけで、韓国は統一後の国家的な問題としてとらえ、国際協調の枠組みをつくりながら積極的にコミットしていくほかない。

 B 南北分断は相互補完性のあった経済構造や生活体系まで断ち切った。北韓は無理な農業化で逆に飢餓と国土荒廃をもたらし、韓国は対外依存度の高い都市国家型経済になっている。韓国経済がもう一段の躍進を遂げるためにも、統一後の国家のためにも、相互主義を原則として水平・垂直の両面で分業体制を形成するなど、経済協力は推進せざるを得ない。

参政権へ契機願う首脳会談

 C 李明博氏当選後、5・17事態で北韓・総連アレルギーを強めた団員の間からも、北韓版セマウル運動を展開すべきだと言う声まで出ている。北韓の荒廃はすでに韓国の負担になっていて、時間を置けばおくほど増大する。民団はかつて韓国で、セマウム・シムキ(新しい心を植える)運動を展開したが、北韓でも山野に植樹する運動をやってみようという意見だ。

 民団も対総連問題を抱えているが、国のバックボーンがしっかりすることで、交流を積極化する可能性が広がる。

 −−新大統領は4月9日の総選挙前にも、韓米・韓日首脳会談を持つ可能性が高い。スタンスをより明瞭にする意味でも、最初が肝心だ。在日同胞をめぐる状況は少しずつ好転していくだろう。まずは、韓日首脳会談が永住外国人の地方参政権付与に決定的な契機になるよう期待したい。

(2008.1.1 民団新聞)
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