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風雲急を告げる東アジアと韓国…国民力問われる外交・安保
西海で集団違法操業を繰り返す中国の漁船

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紛争処理システムの不在
経済力も締付け手段に

 大韓民国の第18代大統領選挙は、東アジアのかつてない緊張ムードのなかで、どう展開されていくのか。独島領有をめぐる韓国と日本、尖閣諸島(中国名=鈞魚島)を挟んでの中国と日本、ともに波濤は高いままだ。とくに、中日対立の余波は韓国にも深刻な打撃となりかねない。

 中日対立の発端は、前東京都知事の石原慎太郎氏が尖閣諸島を都の所有にしようとしたパフォーマンスにある。弱体化が著しい民主党政権は一部世論に圧される形で、騙しだまし対処してきた領有権問題の一線をついに超えた。中国は後に引けなくなっている。

 この経緯についてはさておこう。韓国にとって日本側以上に問題視されるべきは、政治や面子の問題と経済をためらうことなく直結させ、紛争相手国を陰に陽に締めつけることをいとわない中国の姿勢にあるからだ。

 記憶に鮮明なのは、ハイテク産業に欠かせないレアアース(希土類)の対日輸出を事実上ストップさせたことだろう。日本の海上保安庁が10年9月、尖閣諸島付近で巡視船と衝突した中国漁船の船長を逮捕・抑留すると、中国はこれに抗議して船長の釈放を求めただけでなく、日本がその供給をほぼ中国に依存しているレアアースをテコに圧力をかけたのだ。

 これは決して、歴史的因縁のある日本ゆえに敢行した措置ではない。中国は今年5月、フィリピン産のバナナやパイナップルから害虫が見つかったとして輸入を封鎖し、精密検査の対象品目をフィリピン農産物のほとんどすべてに拡大した。主要品目の輸出が滞った影響は深刻であり、フィリピン経済界は政府に中国との妥協を申し入れるに至っている。

 南中国海(南シナ海)のスカボロー礁(中国名=黄岩島)周辺海域における中国漁船の違法操業問題で、昨年春、フィリピン軍艦と中国の巡視船が対峙した。その後のフィリピンと米国の海上軍事訓練にも中国は猛然と抗議した。フィリピン農産物に対する輸入規制は明らかな報復である。

相手揺さぶり屈服をも迫る

 今一つ思い起こされるのは2年前、中国の反体制活動家がノーベル平和賞の受賞者になった際の悶着だ。ノルウェーのノーベル委員会は、中国の再考要求を当然ながら拒絶した。中国はノルウェー産サケの輸入を中止し、さらには進行中だったFTA(自由貿易協定)の交渉も打ち切った。

 米国でもかつて、対日経済制裁の嵐が吹き荒れたことがある。しかし、それはあくまで、輸出入の不均衡を是正しようとする経済ベースでのことだ。中国は政治面でも、紛争相手国に揺さぶりをかけて屈服させ、政策変更を強いるためなら経済力も例外とせず、あらゆる手段を動員してきた。この傾向は経済規模の拡大にともなって、ますます明瞭になっている。

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高い経済の海外依存度
火種抱える対中国…対日関係でも危うさ露呈

 中国の日本に対するような経済制裁がいつ、韓国に襲いかからないとも限らない。そうなれば打撃の大きさは、日本の比ではなくなる。韓国の対中貿易規模は対日・対米を合わせたよりも大きい。韓国経済の対中依存度は世界一高い水準にある。その中国との摩擦の種が少なくないのだ。

 西海(黄海)の韓国側EEZ(排他的経済水域)内における中国漁船による違法操業は、これを取り締まる韓国側との間で流血事態がたびたび発生するほど過激化してきた。大船団によって組織的に反復されており、不測の事態によって韓中間の対立感情を瞬時に沸騰させる不気味さを持つ。

 中国とはまた、済州島西南の馬羅島から西南149にある水中岩礁・離於島をめぐっても係争関係にある。離於島は、頂上が水面下にあって国連海洋法条約が定める島ではないため、領海やEEZを構成しない。だが、韓国にとっては中国、東南アジア、ヨーロッパへの主要航路に近く、地政学的に極めて重要だ。

 韓中両国がEEZの境界を中間線原則に基づいて最終確定すれば、離於島は韓国の管轄水域に入る位置にある。韓国は87年、同島初の構造物である灯浮標(無人灯台のようなもの)を設けた。

 中国はこれに対し、離於島は自国のEEZ内にあるとして、「韓国の一方的な行動は法律的な効力がない」と非難し、その立場を変えていない。つい最近、同島周辺海域を無人航空機による監視対象に含めるとも宣言した。

 火種はまだある。韓半島の古代3国を構成しわが国のルーツの一つとなっている高句麗を中国の地方政権と位置づけ、東北工程プロジェクトの一環として、着々と既成事実化を図っていることに起因する歴史認識摩擦がそうだ。

 また、中国による脱北者の冷酷とも言える摘発と非人道的な強制送還、脱北者の韓国入りを助け北韓民主化に取り組む韓国人活動家に対する厳しい弾圧、これらもいつ、双方が引くに引けないほど大きな国際問題になっても不思議はない。

通過スワップ再契約をせず

 韓国にとって中国は、最大の貿易国であるだけでなく、政治的にも最重視せざるを得ない相手だ。韓国から見る中国は、北韓独裁の擁護者であると同時に制御者でもある。韓半島の平和確保と、統一への足場を固めるために、韓国は中国に対し、擁護政策を牽制しつつ制御政策を督促し続ける立場にある。

 一方、韓国と日本は多くの面で価値観を共有し、経済関係は揺るぎないレベルまでに深化したと言われる。ともに米国と軍事同盟を結んでおり、対北韓政策でも協調関係にある。だが、再燃した独島問題であからさまになったように、危うさがつきまとう。

 盧武鉉大統領と小泉純一郎首相の時代、韓日関係は険悪だった。小泉首相の靖国神社参拝問題のほか、北韓による日本人拉致事件や核実験の強行に対し、制裁を強化した日本と融和政策にこだわる韓国とが背を向け合い、盧大統領と小泉首相の間には感情的なアツレキまであった。

 李明博大統領の登場によって、韓日関係は急速に修復され、新たな蜜月時代が築かれたものの、ここにきて再びの悪化である。

 韓日両政府はこのほど、570億ドルの通貨スワップ契約を延長しないことで合意し、その規模は08年以前の130億ドル水準に戻った。合意と言ってもその内実は、李大統領が独島に上陸したことに対する報復含みの措置によって誘導されたことは明らかだ。

 契約の満期が近づくと日本は、「韓国から延長要請がない」とする刺激的な発言をメディアに流した。韓国から延長要請があれば検討するとの態度を示すことで、延長要請が自動的に、日本に膝を屈することを意味するとの印象を与えるものだった。

 韓国の国債信用格付けは、日本側のそうした動きにもかかわらず、世界の3大格付け機関によって相次いで引き上げられた。また、外貨準備高も十分な水準にある。韓国は結局、国際的な信用度の上昇と金融市場の安定を理由に、延長申請をしなかった。それでも、プライドが先に立った決断であったことは否定できないだろう。

強硬右派台頭許す日本の今

 通貨スワップをめぐる日本側の態度は、韓国の堅実な財務状況を見越したうえでの象徴的な「制裁」だったと言えなくもない。しかしそれは、韓日関係が成熟した証なのか。日本には、韓国に対する経済制裁を主張する勢力が存在し、そうした強硬右派の台頭を許す空気が醸成されていることに注意を怠れない。

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中国と日本の狭間で
軍事的緊張も直視を…結束強化こそ韓国の武器

 韓半島は大陸勢力の中国・ロシア、海洋勢力の米国と日本が利害を交錯させる地政学的位置ゆえに「東北アジアの十字架」と呼ばれてきた。双方からたびたび侵略された歴史と、現在も分断されている現実がそれを物語る。南北分断は海洋勢力をバックにする韓国と、大陸勢力の後押しを受けた北韓が対峙した構造とも言い換えられよう。

 韓国は大陸と海洋の恩恵をともに受ける力強い「半島国家」になることを願いながらも、北韓独裁の存在ゆえに「半島先端国家」に押し込められたままだ。中国と日本の激しいつばぜり合いが続けばどうなるのか。

最高指導者の交代期重なり

 そう遠くない将来に米国を追い抜くと展望される世界第2位の経済大国で軍事力の増強に余念のない中国。同3位の経済大国でアジア最強の海空兵力を保持する日本。両国が軍備競争を本格化すれば、韓国は諺に言う「クジラの喧嘩でエビの背が裂ける」ことを恐れ続けなければならない。

 問われるのは経済力や軍事力だけではない。国民の結束力が重きをなす時代に入った。

 中国には、民主化や経済格差の解消に対する激しい要求があり、少数民族の分離独立要求にも根強いものがある。だが、対米・対日政策で国論を分裂させるまでの要素は見当たらない。日本でも、沖縄を中心に米軍基地をめぐる紛糾はあっても、中国の軍事的台頭を深刻な脅威とし、それゆえに対米軍事同盟の強化が必須とする意識が広く共有されている。

 中国は8日から開催される第18回党大会で新指導部を選出する。次期国家主席と目される習近平氏はこの間、尖閣諸島問題に対決と対話の姿勢で臨む姿勢を表明してきたとはいえ、求心力を高めるためにも当面は強硬策をとるとの見方が多い。

 日本も政権交代期に入った。衆議院解散・総選挙になれば、自民党総裁の安倍晋三氏が首相に選出される可能性がある。安倍氏は集団的自衛権を行使できるよう憲法を改定し、周辺国への侵略を謝罪した「村山談話」や従軍慰安婦の強制性を認めた「河野談話」の見直しを主張してきた。安倍氏ならずとも、次期有力者の多くが強硬右派に括られる人物たちだ。

 韓国は歴史認識や独島・離於島など領土・領海問題で中国と日本から圧力を受けるだけでなく、中国と日本の緊張がうねらす波しぶきを避けるのは難しい。これに便乗した北韓の揺さぶりにも要注意であろう。

 今回の大統領選挙は、風雲急を告げる東アジア情勢にどう対応するのか、外交・安保問題が最重要争点の一つになって当然だ。中国・日本に比べて明らかに弱小であり、なおかつ北韓リスクを抱える韓国こそ、より強い危機意識があってしかるべきだろう。しかし、国民の関心はその方面には向かっていない。有力な候補者たちからもまともな言及がない。

 もっぱら経済活性化と福祉の充実に力点が置かれている。それが方向違いと言うのではない。中産階級の割合は90年代の100世帯当たり75世帯から、最近では66〜67世帯に減少し、貧困層は10年に初めて300万世帯を超え、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均値の2倍になった。

 就職難や教育・住宅問題を抱える20代から40代は、現在に不満と将来への不安を強く抱いている。韓国の自殺率はOECD加盟国の平均(12・8人)の2・4倍、8年連続で最多を記録した。

 国民が自分の人生に自信と喜びを持ってこそ、国の将来をともに創造する気概が養われる。しかし、すでに指摘したように、世界的な景気後退と東アジア経済の萎縮は、対外依存度の極めて高い韓国を直撃し、経済活性化や福祉充実の課題を足下からすくいかねない。

 外交・安保問題で中国や日本以上に結束できなければ、両国の間で埋没するほかなくなる。その韓国は北韓リスクに対してさえ強靱であったとは言えず、北韓独裁と直結するいわゆる《従北勢力》と、それを下支えする〈親北・反米〉情緒を抱えている。

 北韓独裁の野欲を封じるのに不可欠な国家保安法の撤廃、駐韓米軍の撤退を政綱・政策に掲げる公党も存在しているのだ。北韓リスクの軽減を名分に宥和政策への回帰を求め、韓米軍事同盟の弱体化を図りつつ日本よりは中国重視へと軸足を移す動きさえ公然化する可能性がある。

経済・福祉も安保の次元で

 こうした懸念をぬぐえない韓国にあって焦眉の課題は、韓米軍事同盟をいっそう強化し、中国と日本に毅然と対処する意思を盤石にするとともに、経済活性化や福祉の充実も国家安保の重要な要素とする考えを共有することだ。

 韓国には国内的な葛藤が外交・安保政策にまで亀裂を生むことが多かった。だが、こうした非生産的な対立を抑止しようとする試みがなかったわけではない。

 04年4月の第17代国会議員選挙は、盧武鉉大統領を支えるヨルリンウリ党に299議席中152議席を与え、その与党を牽制すべくハンナラ党(現セヌリ党)を善戦させた。

 両党代表はその年の5月、「憲法に明示された自由・民主主義、市場経済原則に基づく韓半島の平和定着と共同発展」を確認するとともに、北韓問題を含む外交政策は与野党の合意に基づいて超党的に推進するとし、南北関係発展特別委を設置して経済協力を中心に対北関係の発展を指向するとした「与野党協約」を交わした。

 「協約」自体はなんら実効性をみせることなく雲散霧消した。しかし、北韓政策をめぐって熾烈な闘いを続けていた時期である。自由・民主主義と市場経済の原則をあえて前面に出し、あくまで韓国主導による南北関係の発展を超党派で目指す意義は小さくなかった。

 韓国を取り巻く外交・安保の環境は、協約を交わした04年に比して著しく悪化している。しかし、「協約」を導き出した発想によって現状を直視すれば、内政のねじれを転化することなく、外交・安保についての国民意思の統合は可能であると信じたい。97年末のIMF外貨危機に際して見せた国民の結束力を今一度発揮すべきときだ。

(20 民団新聞)
 

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