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手詰まり明らか…北韓の恫喝
操業が暫定中断した4月8日、開城工団から自家用車に目一杯の品物を積んで京義線南北出入事務所(CIQ)を通過する韓国側労働者

関連国の結束固く
「勝利」装い心理戦幕引きか

 「任意の時期に任意の対象に、制限なく精密な核攻撃を加えて祖国統一事業を前倒しする」核戦争危機を自ら煽りながら、韓国や米日両国に対する軍事的恫喝をエスカレートさせてきた北韓は、軍事挑発の構えを維持しながらも、極限事態の収束を探る気配を見せ始めた。これまである程度の「成功」を約束してきたはずの心理戦が明らかに、手詰まりに陥っている。

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見え見えの腹のうち
体制引き締めの反動も

 北韓の最高権力機関である国防委員会は18日、政策局名義の声明を発表し、韓米が本当に対話や交渉を望むのであれば▽国連安全保障理事会による制裁決議の撤回▽挑発行為の即時中止と全面的な謝罪▽韓米合同軍事演習の中止などの実践的な措置を求めた。

 この同じ日、祖国平和統一委員会は報道官談話で、「我々は米国と事実上の核戦争をしたのも同然だ。米国は最新の核戦略武器で脅したが、我々は核打撃手段で軍事的対応措置をとった」と述べている。

対話再開へ可能性示唆

 韓米が挑発↓これに軍事的対応↓韓米が軟化−−盗っ人猛々しく事実経過をすり替えている。だが、前者は韓米が応じがたい条件を付けながらも、対話そのものを否定せず、受け入れる可能性を示した。後者は、大上段に振り上げた拳をしまう名分の下ごしらえとなるものだ。「米国と事実上の核戦争」云々の表現は、韓米からの対話提議を事実上の戦果として喧伝する前触れと見ていいだろう。

 平壌政権が核戦争危機を煽る心理戦を本格化させたのは3月5日からだ。国連安全保障理事会の厳しい制裁決議(3月7日)への反発がまずあった。そこに、韓米合同軍事演習(3月1日から2カ月間の「トクスリ」、3月11日から21日までの「キー・リゾルブ」)と米軍が投入した戦略爆撃機B52など最新鋭兵器への恐怖が加わった。いま一つ、平壌政権の深刻な内部事情が働いていたことにも注意を喚起すべきだろう。

 これらことごとくを平壌政権が自ら招いたのは言うまでもない。中国までが賛成した制裁決議は、国連決議や国際社会の度重なる警告を無視して強行した長距離弾道ミサイルの発射(昨年12月12日)とそれに続く3回目の核実験(2月12日)に対するものだ。

 恒例の韓米軍事演習で異例だったのは、米軍がB52などの投入を公表したことであろう。しかしこれとて、恫喝の度を強め新型弾道ミサイルを発射する動きを公然化させた平壌政権を牽制するものだった。

 内部事情とは今さら言うまでもなく、体制引き締めが待ったなしの状況にあることだ。平壌地区の幹部層への配給や軍への食糧供給さえ制限される状況で、肝心の幹部層、軍ですら紀綱の乱れが著しい。しかも、就任1年を過ぎた金正恩第1書記には何ら実績がない。それだけに、強大な米国と真っ向対峙する強力な指導者として印象付け、危機意識を煽って軍の綱紀立て直しを急ぐ必要があった。

心理作戦は3ステップ

 それにしても、平壌政権の腹は見透かされていたと言うべきだろう。心理戦は3段階に組まれ、各段階のシナリオはこうだったはずだ。

 第1段階=各種言論や担当機関の声明・談話などで韓国や米国を恫喝する一方、板門店の南北直通電話を遮断するなどして、「このままでは本当に戦争になる」との恐怖心を主として韓国社会に醸成する。韓国の左右葛藤を煽り韓米間の足並みを乱す効果が期待できる。

 第2段階=平壌に駐在する外交官らに「安全を保障できない」として国外退去を勧告し、「いよいよ戦争になる」との緊迫感を国際社会に広げることで、韓国社会をパニックに追いこむ。

 第3段階=4回目の核実験やミサイル発射強行のほか局地的な軍事挑発、さらには韓国の自衛権発動が困難な、攻撃主体の特定が直ちにはできない手法で大衆利用施設などへのテロを敢行し、韓国の屈服を強いる。

 複数の外信によれば平壌政権は5日、中国、ロシア、英国の大使館職員や平壌に滞在中の外国団体関係者に、「4月10日以降は安全を保証できない」と通告。9日には朝鮮アジア太平洋平和委員会が報道官談話で「ソウルをはじめとする南朝鮮の外国機関と企業、観光客ら全外国人は事前に退避に向けた対策を立てよ」と「警告」し、「朝鮮半島で戦争の導火線に火が付けば、それは全面戦争となり、我々の無慈悲な報復聖戦となるだろう」と脅した。

 それにしても、「直ちに退避せよ」ではなく、「対策を立てよ」とは、実に丁寧で親切な物言いである。しかし、諸外国に格別な動きはなく、これはむしろ、平壌政権が腰砕けになる兆し以外の何物でもなかった。

 第1・第2段階でシナリオ通りの「口撃」を繰り出し、自らの威嚇言動を韓米日や主要国のメディアに大きく扱わせる「ヘッドライン作戦」では成功しても、想定した戦果は得られていない。かといって、第3段階に入るにはためらいがあった。つまり現在は、半端な第2段階にとどまったままと言えるだろう。

 第3段階のシナリオが最も効果を発揮するには、少なくとも韓米両国において、平壌政権に対する姿勢が毅然派と融和派に二分され、その対立が深刻化しているにもかかわらず、毅然とした路線を固執する両政府に非難が集まる状況が必要だ。

 しかし、韓国にいわゆる左右葛藤が生じたわけでも、特記すべき動揺が走ったわけでもない。「挑発に見返りは与えない」「非核化が前提だ」「対話のための対話はしない」との立場で一貫する韓米の結束は固く、中国を含む国際社会の足並みも乱れてはいない。

 平壌政権は、また一つの選択肢を失い、新たな苦境を引き寄せた。「ヘッドライン作戦」の一定の成功が国際社会の注目を集め過ぎ、心理戦の手筋を自ら丸裸にするかっこうになったからだ。加えて、若く経験がないだけに無鉄砲で予測不能とも言われた最高指導者が、心理戦の前面に立ったにもかかわらず、不本意な状況に埋没してしまったからでもある。

 最悪の大量殺戮兵器である核弾頭を搭載したミサイルによって、韓米日に精密攻撃を加えるなどとこれ以上は考えられない最大級の脅しを再三加えたにもかかわらず、何ら譲歩を得られなかった反動は大きくなろう。

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次の手は韓米の不和狙い?
韓国への攻撃に集中…開城工団の操業再開テコに

 平壌政権が得意としてきた瀬戸際戦術の効果が著しく低減したとはいえ、第3段階のシナリオに相応する軍事挑発の可能性はまだ消えてはいない。

 だが、第2段階までの戦術が不首尾に終わったこと、逡巡している間にタイミングを失ったことなどから、その効果も極めて限定的だろう。仮に大きな衝撃を与えることになれば、平壌政権が味わう恐怖はこの間の比ではない。脅威を演出しても内実は空砲の類に止まろう。

 現時点で最も懸念されるのは、平壌政権が一つのカードに集中する可能性だ。米国には「和解」への秋波を送りつつ、その半面で、韓国だけを集中的に叩き、揺さぶりをかけては社会的な葛藤を煽り、韓米間に不協和音をつくり出す手法のことである。

南南葛藤を執拗に追求

 開城工業団地の操業を中断する前触れとして、祖国統一平和委員会は4日、「南朝鮮の傀儡一味や保守言論がくだらないことをしゃべり続け」ていることを槍玉にあげた。これは韓国の各メディアが「工団を閉鎖すれば平壌政権は貴重なドル箱を失う」などと論評したことに対する反発だ。

 また、人民軍最高司令部は16日の「最後通牒」で、「我々の最高尊厳を傷つける蛮行が傀儡当局の保護の下にソウルの真ん中で公然と行われる限り、(中略)軍事的示威行動が即時開始されるだろう」とすごんで見せた。これは保守系市民団体などの平壌政権糾弾デモに怒りをぶつけたものであろう。

 こうした事案をとらえて平壌が韓国に突きつける要求は、「真に対話と交渉を望むならば、今まで敢行したすべての反共和国敵対行為に対し謝罪して全面中止するという実践的意思」を示せ(人民軍最高司令部の「最後通牒」から)ということになるはずだ。

 開城工団は南北交流協力の象徴的事業として維持すべきであるとか、いたずらに平壌を刺激するのは得策ではないとの考えも韓国内には根強く残っている。加えて、朴槿恵政府の基盤がまだ盤石ではないだけに、この線での揺さぶりは一定の効果をもたらすかも知れない。

 開城工団の操業再開は、南北の数少ない共同利益と直結するだけに、何らかの対話が始まるはずだ。それは、持久戦となるだろう。しかし、朴大統領の掲げる「韓半島信頼プロセス」始動への端緒ともなり得る。平壌にしても、中止になって5年になる金剛山観光の二の舞は避けたいはずだ。

(2013.4.24 民団新聞)
 

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