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<社説>「地方参政権」は逆境に屈しない
日本の未来 共に語ろう

 永住外国人への地方参政権付与に賛同する候補者が一人でも多く当選するよう、民団が積極的に動いた昨年8月30日の衆議院総選挙からもうすぐ1年になる。

 外国人が日本人と同様の選挙運動を行うことは法的に何ら問題がなく、しかも目的・目標を限定したものであったとはいえ、国政選挙への組織的な関与は民団創立から63年の歴史でも初めてであり、ためらいがなかったわけではない。しかし、付与方案の早期成立にかける私たちの意思は、それを乗り越えて余りあった。

新たな地平見た

 この選挙で当選した付与推進派議員は、各党合わせて280人以上と推定され、衆院の過半数を上回った。内部に慎重派や反対派を抱えているものの、地方参政権付与を党の公約に掲げ、選挙に際しての「政策集」でも堅持を明記した民主党が衆院単独過半数の308議席を獲得した。

 付与推進政党が政権を掌握したのは初めてであり、国政レベルでこれだけの条件が整ったのはかつてないことだ。99年10月に自民党の小渕恵三総裁、自由党の小沢一郎党首、公明党=改革クラブの神崎武法代表が会同し、「永住外国人地方選挙権付与」について「成立させる」と明記した「3党連立政権合意書」に署名した当時を凌駕する。紆余曲折が避けられないのは当然としても、地方参政権問題は間違いなく新たな地平に立ったと思えた。

 ところが、付与推進の動きが現実味を持ち始めたことで、偏狭な国家主義者やウヨクによる反対攻勢が強まり、昨年の秋からは自民党主導によって、地方議会が付与反対意見書を相次いで採択する事態まで現れた。加えて、執権政党に対して厳しくなる世論の前に、民主党首脳の政治資金問題、党の寄せ集め体質や連立政党との不調和、国政遂行能力の未熟さが露呈し、混乱する政局のなかで付与法案上程の動きは委縮した。

生活者無視せず

 新たな逆境である。それでも民団は、決して屈することなく、このたびの参議院選挙に際しても、そして今現在も、各政党や有力国会議員への働きかけを継続している。

 私たちは失望していないし、失望するわけにもいかない。それは、私たちがよりよく生きることを放棄することにつながり、私たちが愛着をもって生活する日本という国の未来に対しても無責任になるからだ。

 この間、永住外国人に地方参政権を付与すべきだとする人々に加えられた非難は、一部では事実上の外国人排斥論の域にまで達した。永住外国人が特定の地域に集団移住して、日本の安保政策を歪める恐れがある、などと一部の全国紙までが無責任かつ扇情的に論じた。

 彼らは、何よりも国が「有益」な存在と認めたがゆえに永住資格を取得でき、実際にも地域社会に貢献する血の通った生活者である外国人の姿を見ようとはしない。日本の未来をこの地で生きる全ての人たちと築いていこうとする発想を封殺しようとしている。

 日本はいま、国際社会や近隣諸国との競争が激化しているにもかかわらず、国家としての戦略が描けていないことと、政局が長期の混迷を続けていることの二つがマイナスに作用し合って、閉塞感を強めている。日本の先行きが不透明であるとの不安と、普遍化していく世界に対して拠り所がないとの思いが重なってもいよう。ナショナリズムの先鋭化と、内なる国際化によって世界により積極的に打って出ようとする潮流がせめぎ合っている。

若者の支持こそ

 朝日新聞の世論調査(6月10日発表)によれば、付与賛成が49%、反対が43%で賛成派が上回ったものの、70%前後で推移した10年前の各紙調査に比べて大幅に下げた。だが、執拗なバッシングの後でも若い年代(20代=賛成65%、反対28%。30代=賛成61%、反対34%)では賛成派が高い比率を示していることに私たちは希望を見る。

 日本は憲法前文で「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」と宣言している。しかも、その理念を具現する能力をもった国である。日本に求められるのは、日本発の創意に満ちた価値観を普遍化させ、人類社会の協調と発展に寄与することだ。先進諸国とあれこれ比較しながら、二番手に甘んじてよしとすることではない。

 永住外国人に地方参政権を付与することは、日本が旧来の縛りから脱皮し、閉塞感を自ら打破するうえで小さくとも確実な突破口になるものと確信する。

(2010.7.28 民団新聞)
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