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<民論団論>日本の「第3の開国」はいつ!?
「地方参政権の立法化を」と訴える民団の集会=2001年、東京・日比谷公園で
フリーライター
朴景久

見えぬ国家戦略 定住外国人の不安は募る

 安倍自民党政権は、先の参議院議員選挙で歴史的な大敗を喫し、民主党への政権交代が現実味を帯びるほどに、緊迫した政局をつくり出した。

 日本社会が久しぶりに政局への関心を高めているとは言え、すっぽり抜け落ちている重要テーマがある。国際社会で重きを占める日本の国政選挙でありながら、なぜ国家ビジョンが正面から取り上げられず、争点にならないのか不思議でならない。

 安倍政権の掲げる「美しい日本」路線は、傷ついたとはいえ歩みを止めてはいない。この「美しい日本」には、増え続けるだけでなく、日本社会でも重要な位置を占めつつある定住外国人の存在が視野に入っていない。東アジアを中心とする国際社会との関係性もよく見えない。

 安定した将来を願う定住外国人としては、不安感が募る一方だ。まして、多文化共生の実をあげるべく、肯定的であることが明らかな世論を背に、地方参政権の獲得を目指す立場からは、もどかしさこの上ない。

 突然の解散による衆議院選挙ではなく、任期満了にともなう参議院選挙である。分かり易い当面の現実問題に焦点が絞られがちだとしても、マスコミ側からの問題提起も弱いのはどうしてか。政権交代までが云々される状況であれば、今からでも俎上にのせてしかるべきであろう。日本には国家戦略レベルの争点は何もないかのようである。 日本を東アジアに開かれた国家とすべく、改革と開放を断行することを前提に、日本政府が「東アジア共同体」構想を提唱したのは、99年のASEAN+3(韓・日・中)の首脳会談においてであった。

一国主義的な色あい強めて

 その4年後の03年、日本経団連は外国人受け入れ促進策の中間報告をまとめ、各省庁の外国人施策を一元化する「多文化共生庁」の設置のほか、外国人にきめ細かい公共サービスを提供するために、「地方自治への参加」に道を開くよう提言した。

 この流れのキーワードは、幕末のペリーによる第一の開国、敗戦によってもたらされた第二の開国、それに続く国際化への自主的な「第三の開国」であった。「日本を開く」ことなしに「日本の再生」はない、という危機意識がにじんでいた。これは一方で、国家主義的な傾向やネオ・ナショナリズムの高揚に警鐘を鳴らすものでもあった。

 しかし残念ながら、このような国のあり方をめぐる論議は、一時期ほどの盛り上がりがない。韓米FTA締結の衝撃波で、日本は対韓FTAの締結を急ぎ「東アジア共同体」構築の先頭に立つべきだ、との論調が一斉に高まりはしたものの、一過性に終わった。

 日本はどこに向かうのか、ますます分かりにくくなっている。実際には、国旗・国歌に対する態度の規制強化、「愛国心」を盛り込んでの教育基本法改定、当局がこれまで以上に教育現場を統制しようとする教育関連3法の成立があるかと思えば、「慰安婦」や沖縄地上戦時に日本軍が住民に強いた集団自決など、「美しい日本」にそぐわない歴史事実を検定によって教科書から削除するといった、国家主義的な傾向をはっきりと見せている。

 思い返される言葉がある。「わが党には『古きよき日本』への回帰を求める議員が少なくない。昨今目立つのが、国の基礎を明治期の家制度に求め、国家の再生を図ろうとする動きだ。憲法13条の『すべての国民は、個人として尊重される』との規定ゆえに利己主義が蔓延し、家族や学校は崩壊し、日本の美徳が失われたと断ずる」(自民党・野田聖子衆議院議員。朝日新聞03年7月21日付)。

 現実はこの方向で推移してきた。それにもかかわらずなぜ、「分かりにくい」のか。経済分野では国際・多国間主義を前面に出しながら、政治面では国家主義どころか、一国主義的な色合いを強めているという二重性にある。より根本的には、「美しい日本」路線でアジアの指導的な国家としてやっていけるはずがない、との時代認識があるからだ。

 社会学者の大澤真幸京大教授は、「『資本主義がグローバル化』することにより、逆に普遍的価値に意味がないように見えてきて、ナショナリズムという特殊性の確認が、意味のあることのように思え始める」(民団新聞8月15日付)と語った。日本文化論の第一人者である故・山本七平氏もかつて、「生活の欧米化が意識の日本化を招来する」と指摘していた。

 であれば、経済の国際・多国間主義と政治の国家主義とは表裏の間柄として折り合うのかも知れない。しかしそれは、個々人の心情的な側面でのみのことで、一国主義を強化する国家戦略に転化させる理由にはならない。

東アジアとの相互依存こそ

 国のありようの曖昧さは、日常や未来への不安をかきたて、「ナショナリズムという特殊性」の確認に向かわせる。為政者たるもの、ナショナリズムの危険性を発展的に吸収する意味でも国際主義、なかでも東アジアとの共生の旗印を色あせたものにしてはなるまい。 大陸・半島と海を隔てた日本は歴史上、〈強いアジア〉と対等に付き合うか、緊張を強いられた経験がほとんどなく、一定の距離を置いて孤高を保つことが可能であった。深く関与したのは〈弱いアジア〉であり、しかも植民地支配・侵略戦争という最悪の形態をとった。日本は現在、各分野で台頭する東アジアと対決・対峙するのか、相互依存を推し進めることで指導性を発揮するのか、葛藤を内在させている。

 しかし、結論は後者になるほかない。韓・日・中3国には若者を中心にナショナリズムの高まりがあるのは事実にせよ、その半面にある3国を横断する経済・文化の友好・共存、相互浸透も進んでいる。

 日本社会との共生を前提に安定した生活を追求する定住外国人として、内在する葛藤を表面化させ、「第三の開国」を早めるよう、粘り強い働きかけが欠かせない。

(2007.9.5 民団新聞)
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