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<社説>韓国人犠牲者に言及を…オバマ米大統領の広島訪問
 オバマ米大統領は27日、現職の米大統領として初めて被爆地の広島を訪れ、平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑に献花を行い、「核なき世界」を追求する姿勢を再宣明するという。

 オバマ氏は大統領就任から間がない09年4月、核兵器を使用した唯一の核保有国の道義的責任として、「核なき世界」を実現すべく先頭にたつ決意を表明した。この「プラハ演説」は国際社会から高く評価され、オバマ氏はこの年のノーベル平和賞を受賞した。

 しかし、昨年7月のイラン核合意を除けばこれといった成果はなく、むしろ、自国核兵器の精度向上計画を承認したことで、「プラハ演説」の精神に逆行したとも言われてきた。広島訪問も、自身の任期が終着点間近にあることに加え、主要7カ国首脳会議(G7)への参加という別件の来日理由があってのことと冷ややかに見られてもいる。

核問題の原点で

 それでも、オバマ氏が広島に足を踏み入れ、核問題の原点とも言うべき地で核廃絶への思いを披歴する意味はきわめて大きい。この地に原爆を投下した国の大統領、今なお世界最大の核軍備を保持する国の最高司令官として、犠牲者の霊や悲惨さを実証する資料にも向き合ったうえでの表明になるからだ。その重みはプラハの比ではあるまい。

 在日同胞もオバマ氏の言葉に耳をそばだてている。韓国政府によれば、同胞の被爆者は広島で5万人、長崎で2万人におよび、広島で3万人、長崎で1万人が死亡したとされる。決して素通りできる存在ではない。

 オバマ氏の側近はこの間、オバマ氏が「広島と長崎が経験した悲惨な、戦争によるとてつもない犠牲」を認め、それを「罪なき人々の犠牲と核兵器による犠牲の両方の象徴」とする認識を示すとともに、韓国人犠牲者にも言及する可能性に触れてきた。

アジアの和解も

 原爆投下の是非についての検証を歴史家に任せ、自らは評価することも、まして謝罪することもないと言明するオバマ氏は一方で、今回の広島訪問によってアジア諸国に歴史問題での対話と和解を促したいと表明している。

 オバマ氏はいずれ、原爆投下に対して「事実上の謝罪」をした最初の米大統領と評価されることになるのかもしれない。それにふさわしい彼の言動は自ずと、戦争終結を早め多くの人命を救ったという自国における正当化論をいっそう薄め、日本との和解に向けた新たな重い扉を開くものとなろう。日本に対してもアジア諸国との歴史を正面から直視するよう求めずにはおくまい。

 そうした期待を抱かせるオバマ氏に、「韓国(朝鮮)人犠牲者」の存在に言及するよう求めたい。それも、支配国・日本の都合によって「日本人」とも「非日本人」とも扱われた「朝鮮半島出身者」などというあいまいな呼称であってはならない。それはむしろ、韓日間の和解を阻害する。

 70年に建立された広島の韓国人原爆犠牲者慰霊碑が、念願かなって平和記念公園内に移設されたのは99年だった。建立時はもちろんその後も長く、公園から排除されてきた事実を忘れるわけにはいかない。長崎の韓国人慰霊碑の建立は、今なお根強い妨害にさらされ漂流を余儀なくされている。

 これらの背景に、当時の「朝鮮半島出身者」は「日本人」であって「韓国(朝鮮)人」はいなかったとする頑なな立場や、広島・長崎の平和公園は犠牲者を人種・国籍にかかわりなく慰霊し、核兵器の惨禍を繰り返すまいと祈念する人類共通の施設だとする建前がある。

核廃絶とともに

 しかしそれらは、「日本人」として軍人・軍属に動員しておきながら、サンフランシスコ講和条約の発効後は日本国籍を剥奪し、補償・援護の対象外とした仕打ちや、強制連行や強制労働をなかったことにする歴史修正主義が大手を振るうなかでとうに破綻した理屈と言わねばならない。

 米英中三首脳による43年の「カイロ宣言」には、「朝鮮ノ人民ノ奴隷状態ニ留意シモッテ朝鮮ヲ自由且独立ノモノタラシムル」とある。これらによるまでもなく、我われには今日の韓国に至る回復すべき国権と国土があったのであり、これの軽視・否定は旧支配国の法匪的態度と言うほかない。

 安倍首相も同行する広島訪問に際し、オバマ氏には「韓国(朝鮮)人犠牲者」についても明確に言及するようくれぐれも求める。「5・27」が核廃絶だけでなくアジアの歴史的和解の画期としても記憶されるよう望まずにはいられない。

(2016.5.25 民団新聞)
 
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