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フラッシュ同胞企業人(17) 「オンリーワン」目指す |
| 1962年神戸生まれ。米ノートルダム大学院MBA修了、延世大学語学堂で韓国語習得。04年に東洋ケミテック(本社・神戸)の社長就任。1男1女。 | 多種・多様な工業用特殊粘着品を加工 東洋ケミテックの徐世一社長
エレクトロニクスから建材、自動車、ベルトホース、日用雑貨にいたるまで、実に多種・多様な工業用特殊粘着加工品を生産している。
「当社のポジションは、糊加工を応用し、ウェブと呼ばれる紙やフィルム、金属箔などの表面に何かを塗ることで新たな機能を付与することである」
具体的には、携帯電話などIC機器の基板に穴を開けるときに使う材料、金属箔とフィルム、プラズマテレビの電磁波シールド材、液晶画面の光の拡散フィルム、車のエンジンに使われるタイミングベルトの表面処理、防音床材の防音層、アパレル生地同士の貼り合わせなど。
長田で糊引き業
同胞多住地域の神戸・長田で、父親の福龍さん(故人)が履物縫製業の糊引きを始めたのが1949年。生ゴムに薬品を混ぜた物をガソリンで溶かして糊を作った。「私が小さいころ、家中、臭いが充満していた。試行錯誤を繰り返す中で、独自の糊を作りだした」
70年代のオイルショック後、長田の地場産業はゴム履物からケミカルシューズに替わった。糊引き業を継続したが、履物業だけで生き残るのは困難、ほかの業種も開拓すべきではと考えた。その結果、テープやステッカーといった粘着加工業に進出、機能性を付与するコーティング分野に取り組み始めた。
履物関係から徐々に産業資材へと範囲を広げていく。「生活と関連したさまざまな商品に当社の技術が活かされるようになった」。現在の中心は最先端のエレクトロニクス。
工場は、兵庫と静岡、群馬の3県に6カ所。06年度売上額は約76億円、社員300人。売上額より利益率を重視する。
留学後、工場の現場から仕事を始め、営業など職場のすべてを体験した。「父から、卵の半熟は食えても、仕事の半熟は食えない、やるなら徹底的にやれ、とよく尻を叩かれた。また、現場と経営者の目線は違うぞ、と戒められた。厳しかったが、チャレンジ精神旺盛な父から学ぶことは多かった」と振り返る。
04年から社長職に就任。「ポルフ活動」と呼ばれる組織革新の実践的かつ総合的プログラムを全工場に導入した。エレクトロニクスやIT関係の受注増加にともない、内容が高度化する。ひとつの工場だけでは、リスクが大きいからだ。
「リスクを分散するためには製品の均一化が欠かせない。顧客に迷惑をかけないためにも、95年の震災の教訓を生かし、工場の連携を考えた。工場、生産拠点が複数なので、震災があっても商品の供給が途絶えることはない。どの商品もできるだけバックアップ体制をとるようにしている」
世界に誇る技術
このような姿勢が顧客の信頼をさらにあつくした。04年には、神戸市産業振興財団から「神戸発・優れた技術認定証」を受賞した。
「当社はメーカーでなく、加工技術でメーカーのお手伝いをする会社。世界に誇れる技術が不可欠で、小さくてもピカッと光る存在、ナンバーワンよりオンリーワンをめざしたい」
父親は民団のさまざまな役職を歴任した。「人生の分岐点ごとに良き出会いに恵まれたのも、父の仁徳のおかげ」と感謝する。「ルーツを明らかにしながら、日本社会で認められることが大事」と強調する。
(2008.1.16 民団新聞) |
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